Special Feature
通信不感地帯はITビジネスの「フロンティア」になるか 「Starlink」が切り開く新たな商機
2024/07/11 09:00
週刊BCN 2024年07月08日vol.2021掲載
(取材・文/堀 茜、藤岡 堯)
Starlink Businessとは?
Starlinkは数千機の低軌道周回衛星群によって構築されるインターネットアクセスサービスで、回線が整備されていないエリアや電波が届かない場所などでのブロードバンド接続を実現する。従来の衛星通信サービスに比べて大幅に高速・低遅延のデータ通信が可能となる点が強み。Starlink Businessは法人・自治体向けに提供するサービスで、専用アンテナの導入、帯域の優先によって、個人向けプラン以上の高速かつ安定した通信環境が利用できる。KDDI
海洋DXのインフラに
KDDIは2022年12月、国内で最初にSrarlink Businessの取り扱いをスタートした。当初は地上向けのみだったが、23年7月には海上向けの「マリタイム」を発表。領海外での利用が可能になった24年2月以降、商船、漁船、旅客船などで活用が広がっている。海上でのインターネット利用については、海況情報や気象情報を把握し、運航に役立てることに加え、乗組員に対する福利厚生の充実という側面がある。長期の船内滞在を余儀なくされる乗組員の間では、余暇時間における動画視聴やSNS利用、家族や友人らとの連絡などを目的としたインターネットへのニーズが強くある。KDDIのビジネスデザイン本部エネルギー・運輸営業部営業5グループの山下和・リーダーは「船で働く人の中には、Starlinkが搭載されている船を名指しして乗る人も多い」と実情を明かし、人材確保の観点から通信環境を整えたいという思いにもフィットしていると指摘する。
遠洋・近海漁船を複数所有する漁業会社の長久丸(三重県尾鷲市)は、近海一本釣りカツオ漁船にStarlinkを導入した。これまで使っていた衛星通信サービスは速度や通信量、コスト面などの課題があったが、Starlinkはこれらを解消。現在は通信量を気にすることなく、潮流や海水温、海中プランクトンの濃度、他船の位置といった情報をリアルタイムに収集できるようになり、漁業の効率化につなげている。また、乗組員の高速通信利用を可能としたことで、船内の労働環境改善にも大きく貢献しているという。
KDDIはマリタイムの間接販売を強化している。既存の取次代理店数社に加えて、24年4月には船舶用の電子機器・サービスなどを提供する古野電気(兵庫県西宮市)と業務提携した。ハード・ソフト両面で海事ソリューションを展開する企業との協業となり、山下リーダーは「顧客の課題解決のために、パートナーの業界に特化した価値あるアセットを組み合わせることは、ビジネス拡大に向けて大きな意味がある」と期待を寄せる。さらに7月2日には、Starlink Businessの販売パートナーにダイワボウ情報システム(DIS)が加わった。DISが持つ全国各地での営業網を通じて、より多くの顧客にサービスを届けビジネスを拡大したい考えだ。
KDDIはStarlinkが海上DXのインフラとななり、市場はさらに拡大するとみている。船舶以外にも、海洋調査や洋上風力発電に関連する事業、洋上採掘現場などでの利用に関する問い合わせが寄せられており、山下リーダーは「洋上での活用シーンは増えていくのではないか」と展望する。
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