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電機大手3社の2023年度決算 改革の成果が利益率に表れる

2024/05/13 09:00

週刊BCN 2024年05月13日vol.2013掲載

 4月末、IT系大手電機3社の2023年度通期決算が出そろった。国内企業のIT投資意欲は旺盛な状況が続いており、各社のSI事業は堅調に推移した。売上高の伸び以上に特徴的だったのが、利益率の向上だ。“御用聞き”型のシステム開発からオファリング型サービスへの転換や、戦略的なM&Aなど、ここ数年取り組んできた事業変革の成果が数字に表れており、24年度もさらなる収益性の改善を見込む。
(取材・文/日高 彰、大畑直悠、堀 茜)
 

富士通
欧州事業再編で営業減益 Uvanceは計画を大きく上回る

 富士通の連結決算は、売上高にあたる売上収益が前年度比1.1%増の3兆7560億円、営業利益が52.2%減の1602億円、事業再編やM&Aなどに伴う一過性の損益を抜いた調整後営業利益が11.6%減の2836億円となり、増収・営業減益だった。欧州での事業再編に伴う税効果の変化により、純利益は18.3%増の2544億円と計画を上回った。

 営業利益が大幅な減益となった主な理由は、欧州の赤字事業の再編と、通信キャリア向けネットワーク製品および電子デバイスの需要減だ。23年度は、ドイツで展開していたプライベートクラウドなど一部のサービス事業を投資ファンドの独AEQUITA(エクイタ)に売却したことに加え、欧州でPC事業および低採算地域の事業を終息させたことで、撤退に伴う構造改革費用が1000億円以上に上った。また、22年度までは5G網の構築に向けた通信キャリアの設備投資や、世界的な半導体サプライチェーンの混乱を背景とする電子デバイスの需要増があったが、23年度はこれらの特需の反動減も大きかった。

 一方で同社はここ数年、主力のシステム構築ビジネスである「サービスソリューション」事業を今後の成長領域として位置付け、経営資源の集中を進めてきた。サービスソリューション事業は主に国内企業による活発なIT投資に支えられ、売上収益は9.9%増の2兆1375億円と、富士通全体の売り上げの伸び率を大きく上回るスピードで成長している。同事業では採算性の改善も進んでおり、調整後営業利益は45.5%増の2372億円で、調整後の営業利益率は11.1%と2ケタに乗せた。

 個別の受託開発ではなくオファリング型のサービス提供による課題解決を目指す新事業ブランド「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」の売り上げは、23年度に3000億円としていた目標を上回り、前年度比84%増の3679億円に成長した。その中身も、22年度まではITインフラのモダナイズや基盤的な業務アプリケーションの導入といった「Horizontal(ホリゾンタル、水平)」領域が大部分を占めていたのに対し、23年度は業種ごとの具体的な課題解決にフォーカスした「Vertical(バーティカル、垂直)」領域の売り上げがUvance全体の3割を超えた。
 
時田隆仁 社長CEO

 決算説明会で時田隆仁社長CEOは「従来のプロダクト(の販売)および請負型のSIを中心とする事業形態から、テクノロジーをベースに新たなアイデアを生み出し、次の成長につながる価値をお客様に提供する事業モデルへの変革を目指し、さまざまな改革を進めてきた」と述べ、同社全体の売り上げの中でサービスソリューション事業の比率を高めるだけでなく、その中身も、従来のSIビジネスに比べ付加価値の高いモデルへ変わりつつあると説明。Uvanceを軸に今後も収益率の向上を目指す方針を強調し、24年度の業績見通しは売上収益が横ばいの3兆7600億円、調整後営業利益は16.3%増の3300億円とした。

 24年度からは、x86サーバーやストレージなどの開発・製造・販売・保守に関する事業を、富士通エフサスを母体として発足したエフサステクノロジーズに移管した。これについて時田社長は「(移管によって)自由度の上がった経営ができるようになった。他社のIP(知的財産)とのアライアンスも含めた価値を、さまざまな顧客に提供できるポテンシャルを感じている。富士通の事業との密な連携ではなしえなかった新しい機会創出につながってくれればと期待している」と述べ、ハードウェア事業は独立性を高めることで採算性を改善していく考えを示した。
この記事の続き >>
  • NEC ITサービスが成長をけん引 全指標で目標値を達成
  • 日立製作所 IT関連セグメントは増収増益 Lumada事業の利益率が向上

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