Special Feature
SRE実践の課題は何か 部門の壁をなくし、「信頼性」と「ビジネス」をつなぐ
2024/04/22 09:00
週刊BCN 2024年04月22日vol.2011掲載
(取材・文/大向琴音、安藤章司)
部門間の合意形成がかぎを握る
SREの考え方が広まったのは、グーグル社内におけるシステム管理とサービス運用の方法論を記した書籍「SRE サイトリライアビリティエンジニアリング-Googleの信頼性を支えるエンジニアリングチーム」が16年に出版されたことがきっかけだった(国内では17年、オライリー・ジャパン刊)。SREとは、システム開発・運用におけるチャレンジとシステムの安定稼働のバランスをとることを目的とした方法論であり、「SREの手法を採用することで、新規システム開発などに挑戦しやすくなるメリットがある」と、グーグル・クラウド・ジャパンの安原稔貴・技術部長(インフラ、アプリケーション開発、データベース)は話す。開発と運用のバランスをとる上で重要になるのが、システムの不具合の発生がどの程度まで許されるかを定めた指標となる「エラーバジェット」である。例えば、1年間にエラーバジェットが30日間ある場合、30日まではシステムが落ちても問題がないとする。その分、開発に充てる余裕ができるといった具合だ。
残っているエラーバジェットを基に開発部門、運用部門、ビジネス部門のそれぞれでコミュニケーションをとり、積極的に開発できる状況なのか、逆に安定稼働のために開発を止めるべきなのかを把握する。
運用側ではしばしば、システムの安定的な稼働を追求し、システムが継続して稼働できる信頼性の目標を100%に設定してしまうことがあるが、安原技術部長は「SREにおいては、間違った考え方」と指摘。新規機能の追加などの変更作業によってシステムに不具合が起きるリスクを考慮すると、目標値を“信頼性100%”に設定すること自体が端から実現不可能な目標となりかねない。SREを実践するには、本当に必要かつ実現可能な信頼性のレベルを設定し、「運用、開発、事業部、そして経営者の合意を形成していくことが重要」と説明する。
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