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ノーコードから始まる自治体DX パートナーに生まれる商機とは

2024/04/11 09:00

週刊BCN 2024年04月08日vol.2009掲載

 自治体でノーコードツールの存在感が高まっている。IT知識が少ない行政職員でも、それぞれが抱える課題に応じて、低コストで素早くアプリケーションを開発できることから、現場起点のデジタル化技術として徐々に広まりつつあるようだ。果たして、ノーコードツールは自治体DX実現への足掛かりとなるか。そして、自治体を支えるSIerなどのパートナーはいかに商機を見出すことができるだろうか。「ノーコード宣言シティー」プログラムなどを通じて、自治体のノーコード習得を後押しするノーコード推進協会(NCPA)、プログラムに参画する静岡県伊豆市とそのパートナー企業の取り組みから、未来を考える。
(取材・文/藤岡 堯)
 

デジタルを起点とした課題解決能力が身につく

 NCPAは2022年9月設立で、ツールを提供するベンダーやSIer、ユーザーなどで構成されている。一般社団法人として、国内での利用拡大に向け、情報発信や普及啓発に取り組んでいる。ノーコード宣言シティープログラムは23年5月に始まり、NCPAが主催する「日本ノーコード大賞」で第1回の大賞を受賞した鹿児島県奄美市など、12の自治体が現在は参加している。
 
NCPA 中山五輪男 代表理事

 NCPAの中山五輪男・代表理事(アステリアCXO=最高変革責任者・ノーコード変革推進室室長・首席エバンジェリスト)は自治体がノーコードツールを活用する意義について「デジタルを起点に課題を解決できる能力が身につく」と強調する。

 近年、行政に求められる役割は高度化・複雑化の一途をたどる。一方で、人材や資金といったリソースは不足しており、多様な住民ニーズに対応するために、デジタルによる生産性の改善は急務となっている。ノーコードツールは現場が直面する小さな悩みに対して、自分たちの手でつくったアプリケーションによって、それを解消できる効果的な手段となりうる。中山代表理事は「自分たちで(アプリの)改善点を見つけ、すぐに直せる」点が強みだと語る。

 デジタルへの理解が深まることは、単純にアプリ開発のスキルを得られるだけでなく、外部にシステム開発を依頼する場合でも役立つ。自分たちができる分と、外部に任せたい部分の切り出しが可能となり「すべてを外にお願いして作ってもらう必要がなくなり、無駄な費用を抑えることができる」(中山代表理事)。

 もちろん、ノーコードとはいえ、自治体が最初からスムーズに開発ができるわけではない。ノーコード宣言シティープログラムに加わった自治体は、職員向けの勉強会や、NCPAに属する「支援パートナー企業」による伴走サービスの提供といった支援が受けられる。スムーズな立ち上げにはパートナーの存在は不可欠であり、NCPAではパートナーになりうる企業の協会参加を積極的に呼びかけている。中山代表理事は「プロコードを理解し、一気通貫で面倒を見ることができる企業が必要になる」と強調する。

 ノーコード宣言シティープログラムは「売る機会」を提供する場としての役割もあるとの考えで、地域の自治体の実情に通じたローカルIT企業の参画にも期待を寄せる。パートナーとして動く中で、自治体との関わりが深まり、より高度な開発案件を受けられる機会もあると指摘する。

 宣言した自治体同士のコミュニティーも活性化しており、互いの体験やノウハウの共有、悩みの相談などに役立てているという。中山代表理事はノーコード宣言シティープログラムの活動がさらに盛り上がることで「小さな自治体の開発事例を通じて『自分たちでもできるんじゃないか』と思う自治体が広がってほしい」と話す。

 NCPAの会員になった自治体に向けては、24年3月に開始した「NCPA認定ノーコードパスポート」の初級レベルに当たる「サファイア」の受験費用を減免するなどの施策を展開する方針だ。認定には、NCPA所属団体が提供する「ノーコードパスポート認定講座」の受講が要件の一つとなっている。同講座にはハンズオンも盛り込まれており、中山代表理事は「簡単にアプリがつくれたという体験が人を成長させる。『食わず嫌い』で嫌厭する人もいるため、実際につくる機会を増やしたい」と意気込む。
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