Special Feature
APIマネジメントはDXの切り札になるか Kong CTOに聞くメリットと可能性
2024/04/01 09:00
週刊BCN 2024年04月01日vol.2008掲載
今や世界のインターネットトラフィックの多くは、人が読むHTMLではなく、APIへのアクセスが占めているとされる。一方で、企業が利用するAPIが増えるにつれ、すべてのAPIを管理することが困難になってきているのもまた事実だ。セキュリティーを担保しながら、システムやサービスのデジタル化/自動化を加速するには、必然的に、APIを管理する「APIマネジメント」のあり方を模索する必要がある。日本でのシェア拡大に向けて来日した米国のAPIプラットフォームベンダー・Kong(コング)の共同創業者であるマルコ・パラディーノCTOへのインタビューを通じて、APIマネジメントがもたらすメリットと、日本でのビジネスの可能性を探る。
(取材・文/五味明子、編集/日高 彰)
通称「The Bezos Mandate(ベゾスの通達)」とも呼ばれるこの文書に上がっている“サービスインターフェース”とは、現在でいうところのAPI(Application Programming Interface)を意味している。今から22年も前にAPIの重要性を見抜いていたベゾス氏の慧眼には驚くほかないが、その後の同社の事業拡大を見れば、APIを介したデータアクセスの徹底が成功を後押ししたことに疑いはない。
一方で、企業が利用するAPIが増えるにつれ、すべてのAPIを管理することが困難になってきているのもまた事実だ。25年までに企業で利用されるAPIの50%以上が、管理できない“野良API(Unmanaged API)”化すると予測する調査レポートもある。管理できていないAPIはセキュリティーホールになりやすく、またAPIがクリティカルな存在になればなるほどダウンしたときの影響は大きくなり、それが野良APIであれば原因究明や復旧により多くの時間とコストがかかることになる。API、そしてAPIをベースにしたサービスをコアビジネスとして展開する企業であれば、必然的にAPIを管理する「APIマネジメント」のあり方を模索する必要があるだろう。
もっとも、日本では多くの企業がDXを掲げ、システムやサービスのデジタル化/自動化を加速しようとしているにもかかわらず、APIを自社ビジネスの重要なコンポーネントとして認識して投資を戦略的に行い、APIマネジメントを通して業務プロセスの自動化や顧客体験の向上といった具体的な成果を上げている企業はごく一部に限られる。
日本企業は、APIマネジメントにこれからどう向き合うべきなのか。APIマネジメントプラットフォーム大手、米コングの共同創業者であるマルコ・パラディーノ最高技術責任者(CTO)が24年3月に来日したのに合わせ、APIマネジメントがもたらすメリットおよび日本市場の可能性について話を聞いた。同社は23年11月、世界のSaaS企業の日本市場進出を支援するJapan Cloudと提携して日本法人を設立し、日本市場でのシェア拡大を目指している。
パラディーノCTO(以下同) もちろんある。日本企業の中にもAPIマネジメントの導入を検討しているところは増えてきており、土壌ができつつあると感じている。
米Kong マルコ・パラディーノ 共同創業者兼CTO
まず重要なことは、開発者も経営層もAPIを“デジタルプロダクト”として認識することだ。われわれはAPIプラットフォーマーではあるが、むしろプラットフォームとなるべきは企業自身であり、APIはそのプラットフォームが作成し、他社とやり取りする資産だ。24年現在、APIなしでビジネスができるとは考えにくいし、APIなしでは世界とつながることもできない。日本企業がAPIの活用に後ろ向きのままでいるというのなら、日本だけが世界から取り残されることになるが、そうはならないだろう。すべての企業活動がAPIを通して行われている現実に、多くの経営層が気づいている。日本の経営層に対し、API活用はテクノロジーの課題ではなく、ビジネスの課題であるということを伝えていくのもわれわれの重要な仕事だ。
――APIマネジメントはコングも含めて多くのベンダーがサービスを提供している。優位点は何か。
最大のポイントはコアテクノロジーをオープンソースで公開しており、開発者から高い支持を得ている点だ。日本も含めた世界中の開発者が当社製品の高速性、安定性、セキュリティーなどを高く評価しており、3億を超えるダウンロード数がそれを証明している。世界で最も開発者に使われているAPIゲートウェイという事実は、経営層も動かしやすい。マルチクラウド/マルチテナント対応で、プラグインによる拡張がしやすい点も開発者に人気がある。日本企業の導入事例に「Yahoo!Japan」を運営するLINEヤフーがあるが、同社からはコングが用意する豊富なプラグインを高く評価された。
もう一つは軽量性だ。APIマネジメントのあり方も、モノリシックなアーキテクチャーが主流だったころからはずいぶん変わっていて、現在はKubernetes前提のマイクロサービスAPIが主流となっている。当社のアーキテクチャーは競合他社と比較すると圧倒的に軽量で管理もシンプルだ。APIマネジメントをライトにシンプルに行うことができれば、コストも運用負荷も抑えることができ、パフォーマンスも高められる。かつてのSOA(Service Oriented Architecture)と、現在のAPIベースのマイクロサービスの最大の違いは、この軽さにあると思っている。
――日本市場の本格展開にあたり、パートナーとの関係構築も重要になるが、日本のパートナーに期待することは何か。
顧客企業の成功にパートナーの存在は欠かせない。日本はとくに顧客とパートナーの関係が密だと聞いているが、顧客のビジネスをよく理解し、専門分野に強いパートナーと連携を強化していきたいと思っている。LINEヤフーの事例でも、パートナーのブリスコラの支援は非常に心強いものだった。現在、多くの日本企業は自分たちが変わらなければいけないことに気づいており、モダナイズの必要性を感じている。顧客のこのマインドシフトを理解し、「技術と実装」の両面から顧客を支援してほしい。最先端の技術を顧客に適したかたちで実装する、これは顧客をよく知るパートナーだからこそできることだ。
デロイトトーマツグループ 宮越弘樹 シニアマネジャー
数多くの日本企業のDXに関わってきたデロイト トーマツ グループの宮越弘樹・シニアマネジャーは、日本企業のAPIに対する認識の変化について「(コロナ禍前の)5年ほど前までは一部の企業で取り組みが開始された程度だったが、現在では多くの企業でAPI活用に向けた何かしらのアクションがすでに始まっているとみている」と語る。「先進的な企業ではAPIマネジメント基盤が導入され、APIマネジメントのプロセスや組織も構築されている。コロナ禍の影響で日本でもDX推進の機運が高まり活用事例が多数出てきたこと、またシステムのEOSL(End of Service Life)にともなうクラウドファーストへの移行など、要因はいくつか考えられる」
一方で、日本におけるAPIマネジメントの導入を進めるにはやはり多くの課題が存在する。その最大の要因として宮越シニアマネジャーは「APIを自社のプロダクトとして捉え、戦略的に投資することができていない」と指摘する。これは、「APIは企業にとってのデジタルプロダクト」と語っていたコングのパラディーノCTOに共通する見解だ。
宮越シニアマネジャーは続けて「日本企業の場合、単なるバッチ連携の置き換えやITコストの削減を目指してAPI化を進めているケースが多い。これだと投資対効果の説明が苦しくなり、APIマネジメントの導入に必要な予算が付けられず、結果として導入が進まない状況となっている。一方、API化が進んでいる企業では、自社顧客への価値提供内容や提供方法を見直し、自社のデータやサービスを顧客に迅速に届けるイネイブラーとしてAPIを位置付けており、そこに必要な投資を行っている」と語る。守りのITではなく攻めのITとしてAPI活用を捉え、API投資を戦略的に行う。これができている日本企業は残念ながらまだ多くはないのが現実だ。
また、ユーザー企業のITを担うパートナーにとっても、APIマネジメント導入の課題は多い。宮越シニアマネジャーは「APIマネジメントはビジネスモデルの変革と合わせて行う必要があるが、要件定義から始まる従来のSIerのアプローチでは、システム連携手段をAPI化する発想から抜け切るのが難しい」と、従来のウォーターフォール型プロジェクトを前提としたアプローチからの転換が必要であることを指摘する。「いまだにAPIの仕様書を『Excel』などで書いているプロジェクトを見ることがあるが、仕様の標準化こそがAPI活用のメリットの一つであるにもかかわらず、独自の書式で書かれていればAPI利用者は必要な情報が容易に得られず、結果的にAPIの利活用にブレーキをかける要素になる」(同)
このように厳しい現実はあるものの、API活用の促進に向けてAPIマネジメントの導入を図る日本企業は確実に増えている。そうした企業やパートナーに対し、宮越シニアマネジャーは「APIマネジメントの導入を目的とせずに、ビジネス変革の手段として捉え、中期的な予算確保、組織体制の確立を含めて取り組むことを推奨する」とアドバイスする。「CIO/CDOなど技術のトップマネジメントがこうした考えをもつ企業は増えてきている。次のステップとしては、現場をリードするプロジェクトマネージャーやアーキテクトが、自社のビジネス変革とAPIマネジメントの目指す姿を、現状のシステムの状況や課題に合わせながら戦略を具体論まで落とし込むことで実現性が上がるはず。また、パートナーはビジネスモデル変革の立案時に、欧米の事例などを用いて、システム知見の高い人材も議論に加わり、あるべき姿を模索していくアプローチが求められる。技術的な観点では、APIの技術や標準化に関する世の中の動向をキャッチアップすることも重要だ」(同)
米投資家、マーク・アンドリーセン氏の有名なフレーズ「Software is eating the world, in all sectors.(あらゆる分野で、ソフトウェアが世界を食べている)」をもじって、コングのオーギュスト・マリエッティCEOは「APIs are eating the software.(APIがソフトウェアを食べている)」と同社のカンファレンスで明言した。世界を食い尽くす勢いで増え続けるAPIを自社のビジネスコンポーネントとしてどう戦略的に位置づけていくのか。日本企業のAPIへの向き合い方があらためて問われることになる。
(取材・文/五味明子、編集/日高 彰)

DX推進で不可欠となる「APIの管理」
「すべてのチームは今後、サービスインターフェースを通じてデータや機能を公開せよ。そのインターフェースは外部の開発者に公開できるように設計されていなければならない。例外は一切認めない」――これは2002年、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)創業者のジェフ・ベゾス氏が全従業員に向けて送信したメールからの引用だ。通称「The Bezos Mandate(ベゾスの通達)」とも呼ばれるこの文書に上がっている“サービスインターフェース”とは、現在でいうところのAPI(Application Programming Interface)を意味している。今から22年も前にAPIの重要性を見抜いていたベゾス氏の慧眼には驚くほかないが、その後の同社の事業拡大を見れば、APIを介したデータアクセスの徹底が成功を後押ししたことに疑いはない。
一方で、企業が利用するAPIが増えるにつれ、すべてのAPIを管理することが困難になってきているのもまた事実だ。25年までに企業で利用されるAPIの50%以上が、管理できない“野良API(Unmanaged API)”化すると予測する調査レポートもある。管理できていないAPIはセキュリティーホールになりやすく、またAPIがクリティカルな存在になればなるほどダウンしたときの影響は大きくなり、それが野良APIであれば原因究明や復旧により多くの時間とコストがかかることになる。API、そしてAPIをベースにしたサービスをコアビジネスとして展開する企業であれば、必然的にAPIを管理する「APIマネジメント」のあり方を模索する必要があるだろう。
もっとも、日本では多くの企業がDXを掲げ、システムやサービスのデジタル化/自動化を加速しようとしているにもかかわらず、APIを自社ビジネスの重要なコンポーネントとして認識して投資を戦略的に行い、APIマネジメントを通して業務プロセスの自動化や顧客体験の向上といった具体的な成果を上げている企業はごく一部に限られる。
日本企業は、APIマネジメントにこれからどう向き合うべきなのか。APIマネジメントプラットフォーム大手、米コングの共同創業者であるマルコ・パラディーノ最高技術責任者(CTO)が24年3月に来日したのに合わせ、APIマネジメントがもたらすメリットおよび日本市場の可能性について話を聞いた。同社は23年11月、世界のSaaS企業の日本市場進出を支援するJapan Cloudと提携して日本法人を設立し、日本市場でのシェア拡大を目指している。

「API活用は経営課題」の認識を広げる
――APIマネジメントに意識が向いている日本企業は少ないが、市場の確立に自信はあるのか。パラディーノCTO(以下同) もちろんある。日本企業の中にもAPIマネジメントの導入を検討しているところは増えてきており、土壌ができつつあると感じている。
まず重要なことは、開発者も経営層もAPIを“デジタルプロダクト”として認識することだ。われわれはAPIプラットフォーマーではあるが、むしろプラットフォームとなるべきは企業自身であり、APIはそのプラットフォームが作成し、他社とやり取りする資産だ。24年現在、APIなしでビジネスができるとは考えにくいし、APIなしでは世界とつながることもできない。日本企業がAPIの活用に後ろ向きのままでいるというのなら、日本だけが世界から取り残されることになるが、そうはならないだろう。すべての企業活動がAPIを通して行われている現実に、多くの経営層が気づいている。日本の経営層に対し、API活用はテクノロジーの課題ではなく、ビジネスの課題であるということを伝えていくのもわれわれの重要な仕事だ。
――APIマネジメントはコングも含めて多くのベンダーがサービスを提供している。優位点は何か。
最大のポイントはコアテクノロジーをオープンソースで公開しており、開発者から高い支持を得ている点だ。日本も含めた世界中の開発者が当社製品の高速性、安定性、セキュリティーなどを高く評価しており、3億を超えるダウンロード数がそれを証明している。世界で最も開発者に使われているAPIゲートウェイという事実は、経営層も動かしやすい。マルチクラウド/マルチテナント対応で、プラグインによる拡張がしやすい点も開発者に人気がある。日本企業の導入事例に「Yahoo!Japan」を運営するLINEヤフーがあるが、同社からはコングが用意する豊富なプラグインを高く評価された。
もう一つは軽量性だ。APIマネジメントのあり方も、モノリシックなアーキテクチャーが主流だったころからはずいぶん変わっていて、現在はKubernetes前提のマイクロサービスAPIが主流となっている。当社のアーキテクチャーは競合他社と比較すると圧倒的に軽量で管理もシンプルだ。APIマネジメントをライトにシンプルに行うことができれば、コストも運用負荷も抑えることができ、パフォーマンスも高められる。かつてのSOA(Service Oriented Architecture)と、現在のAPIベースのマイクロサービスの最大の違いは、この軽さにあると思っている。
――日本市場の本格展開にあたり、パートナーとの関係構築も重要になるが、日本のパートナーに期待することは何か。
顧客企業の成功にパートナーの存在は欠かせない。日本はとくに顧客とパートナーの関係が密だと聞いているが、顧客のビジネスをよく理解し、専門分野に強いパートナーと連携を強化していきたいと思っている。LINEヤフーの事例でも、パートナーのブリスコラの支援は非常に心強いものだった。現在、多くの日本企業は自分たちが変わらなければいけないことに気づいており、モダナイズの必要性を感じている。顧客のこのマインドシフトを理解し、「技術と実装」の両面から顧客を支援してほしい。最先端の技術を顧客に適したかたちで実装する、これは顧客をよく知るパートナーだからこそできることだ。
SIerは仕様書の属人化から脱却せよ
日本でのAPIマネジメント市場の活性化に強い自信を見せたパラディーノCTOだが、果たして日本企業は、API活用に向けた準備が本当にできているのだろうか。
数多くの日本企業のDXに関わってきたデロイト トーマツ グループの宮越弘樹・シニアマネジャーは、日本企業のAPIに対する認識の変化について「(コロナ禍前の)5年ほど前までは一部の企業で取り組みが開始された程度だったが、現在では多くの企業でAPI活用に向けた何かしらのアクションがすでに始まっているとみている」と語る。「先進的な企業ではAPIマネジメント基盤が導入され、APIマネジメントのプロセスや組織も構築されている。コロナ禍の影響で日本でもDX推進の機運が高まり活用事例が多数出てきたこと、またシステムのEOSL(End of Service Life)にともなうクラウドファーストへの移行など、要因はいくつか考えられる」
一方で、日本におけるAPIマネジメントの導入を進めるにはやはり多くの課題が存在する。その最大の要因として宮越シニアマネジャーは「APIを自社のプロダクトとして捉え、戦略的に投資することができていない」と指摘する。これは、「APIは企業にとってのデジタルプロダクト」と語っていたコングのパラディーノCTOに共通する見解だ。
宮越シニアマネジャーは続けて「日本企業の場合、単なるバッチ連携の置き換えやITコストの削減を目指してAPI化を進めているケースが多い。これだと投資対効果の説明が苦しくなり、APIマネジメントの導入に必要な予算が付けられず、結果として導入が進まない状況となっている。一方、API化が進んでいる企業では、自社顧客への価値提供内容や提供方法を見直し、自社のデータやサービスを顧客に迅速に届けるイネイブラーとしてAPIを位置付けており、そこに必要な投資を行っている」と語る。守りのITではなく攻めのITとしてAPI活用を捉え、API投資を戦略的に行う。これができている日本企業は残念ながらまだ多くはないのが現実だ。
また、ユーザー企業のITを担うパートナーにとっても、APIマネジメント導入の課題は多い。宮越シニアマネジャーは「APIマネジメントはビジネスモデルの変革と合わせて行う必要があるが、要件定義から始まる従来のSIerのアプローチでは、システム連携手段をAPI化する発想から抜け切るのが難しい」と、従来のウォーターフォール型プロジェクトを前提としたアプローチからの転換が必要であることを指摘する。「いまだにAPIの仕様書を『Excel』などで書いているプロジェクトを見ることがあるが、仕様の標準化こそがAPI活用のメリットの一つであるにもかかわらず、独自の書式で書かれていればAPI利用者は必要な情報が容易に得られず、結果的にAPIの利活用にブレーキをかける要素になる」(同)
このように厳しい現実はあるものの、API活用の促進に向けてAPIマネジメントの導入を図る日本企業は確実に増えている。そうした企業やパートナーに対し、宮越シニアマネジャーは「APIマネジメントの導入を目的とせずに、ビジネス変革の手段として捉え、中期的な予算確保、組織体制の確立を含めて取り組むことを推奨する」とアドバイスする。「CIO/CDOなど技術のトップマネジメントがこうした考えをもつ企業は増えてきている。次のステップとしては、現場をリードするプロジェクトマネージャーやアーキテクトが、自社のビジネス変革とAPIマネジメントの目指す姿を、現状のシステムの状況や課題に合わせながら戦略を具体論まで落とし込むことで実現性が上がるはず。また、パートナーはビジネスモデル変革の立案時に、欧米の事例などを用いて、システム知見の高い人材も議論に加わり、あるべき姿を模索していくアプローチが求められる。技術的な観点では、APIの技術や標準化に関する世の中の動向をキャッチアップすることも重要だ」(同)
米投資家、マーク・アンドリーセン氏の有名なフレーズ「Software is eating the world, in all sectors.(あらゆる分野で、ソフトウェアが世界を食べている)」をもじって、コングのオーギュスト・マリエッティCEOは「APIs are eating the software.(APIがソフトウェアを食べている)」と同社のカンファレンスで明言した。世界を食い尽くす勢いで増え続けるAPIを自社のビジネスコンポーネントとしてどう戦略的に位置づけていくのか。日本企業のAPIへの向き合い方があらためて問われることになる。
今や世界のインターネットトラフィックの多くは、人が読むHTMLではなく、APIへのアクセスが占めているとされる。一方で、企業が利用するAPIが増えるにつれ、すべてのAPIを管理することが困難になってきているのもまた事実だ。セキュリティーを担保しながら、システムやサービスのデジタル化/自動化を加速するには、必然的に、APIを管理する「APIマネジメント」のあり方を模索する必要がある。日本でのシェア拡大に向けて来日した米国のAPIプラットフォームベンダー・Kong(コング)の共同創業者であるマルコ・パラディーノCTOへのインタビューを通じて、APIマネジメントがもたらすメリットと、日本でのビジネスの可能性を探る。
(取材・文/五味明子、編集/日高 彰)
通称「The Bezos Mandate(ベゾスの通達)」とも呼ばれるこの文書に上がっている“サービスインターフェース”とは、現在でいうところのAPI(Application Programming Interface)を意味している。今から22年も前にAPIの重要性を見抜いていたベゾス氏の慧眼には驚くほかないが、その後の同社の事業拡大を見れば、APIを介したデータアクセスの徹底が成功を後押ししたことに疑いはない。
一方で、企業が利用するAPIが増えるにつれ、すべてのAPIを管理することが困難になってきているのもまた事実だ。25年までに企業で利用されるAPIの50%以上が、管理できない“野良API(Unmanaged API)”化すると予測する調査レポートもある。管理できていないAPIはセキュリティーホールになりやすく、またAPIがクリティカルな存在になればなるほどダウンしたときの影響は大きくなり、それが野良APIであれば原因究明や復旧により多くの時間とコストがかかることになる。API、そしてAPIをベースにしたサービスをコアビジネスとして展開する企業であれば、必然的にAPIを管理する「APIマネジメント」のあり方を模索する必要があるだろう。
もっとも、日本では多くの企業がDXを掲げ、システムやサービスのデジタル化/自動化を加速しようとしているにもかかわらず、APIを自社ビジネスの重要なコンポーネントとして認識して投資を戦略的に行い、APIマネジメントを通して業務プロセスの自動化や顧客体験の向上といった具体的な成果を上げている企業はごく一部に限られる。
日本企業は、APIマネジメントにこれからどう向き合うべきなのか。APIマネジメントプラットフォーム大手、米コングの共同創業者であるマルコ・パラディーノ最高技術責任者(CTO)が24年3月に来日したのに合わせ、APIマネジメントがもたらすメリットおよび日本市場の可能性について話を聞いた。同社は23年11月、世界のSaaS企業の日本市場進出を支援するJapan Cloudと提携して日本法人を設立し、日本市場でのシェア拡大を目指している。
(取材・文/五味明子、編集/日高 彰)

DX推進で不可欠となる「APIの管理」
「すべてのチームは今後、サービスインターフェースを通じてデータや機能を公開せよ。そのインターフェースは外部の開発者に公開できるように設計されていなければならない。例外は一切認めない」――これは2002年、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)創業者のジェフ・ベゾス氏が全従業員に向けて送信したメールからの引用だ。通称「The Bezos Mandate(ベゾスの通達)」とも呼ばれるこの文書に上がっている“サービスインターフェース”とは、現在でいうところのAPI(Application Programming Interface)を意味している。今から22年も前にAPIの重要性を見抜いていたベゾス氏の慧眼には驚くほかないが、その後の同社の事業拡大を見れば、APIを介したデータアクセスの徹底が成功を後押ししたことに疑いはない。
一方で、企業が利用するAPIが増えるにつれ、すべてのAPIを管理することが困難になってきているのもまた事実だ。25年までに企業で利用されるAPIの50%以上が、管理できない“野良API(Unmanaged API)”化すると予測する調査レポートもある。管理できていないAPIはセキュリティーホールになりやすく、またAPIがクリティカルな存在になればなるほどダウンしたときの影響は大きくなり、それが野良APIであれば原因究明や復旧により多くの時間とコストがかかることになる。API、そしてAPIをベースにしたサービスをコアビジネスとして展開する企業であれば、必然的にAPIを管理する「APIマネジメント」のあり方を模索する必要があるだろう。
もっとも、日本では多くの企業がDXを掲げ、システムやサービスのデジタル化/自動化を加速しようとしているにもかかわらず、APIを自社ビジネスの重要なコンポーネントとして認識して投資を戦略的に行い、APIマネジメントを通して業務プロセスの自動化や顧客体験の向上といった具体的な成果を上げている企業はごく一部に限られる。
日本企業は、APIマネジメントにこれからどう向き合うべきなのか。APIマネジメントプラットフォーム大手、米コングの共同創業者であるマルコ・パラディーノ最高技術責任者(CTO)が24年3月に来日したのに合わせ、APIマネジメントがもたらすメリットおよび日本市場の可能性について話を聞いた。同社は23年11月、世界のSaaS企業の日本市場進出を支援するJapan Cloudと提携して日本法人を設立し、日本市場でのシェア拡大を目指している。

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