Special Feature

注目集まる「FinOps」 クラウドコスト最適化へ新アプローチ

2024/03/14 09:00

週刊BCN 2024年03月11日vol.2005掲載

 クラウドの支出を最適化し、リソースの効率と価値の最大化を目指す「FinOps」に注目が集まっている。クラウドの利用が多様化し、必ずしもクラウドがコスト削減効果を発揮できるとは限らなくなった。「想定よりもコストが下がらない」「思わぬコストが発生した」といった話は定番になりつつあり、利用状況に変化がなくとも円安の影響でコストだけが大きく増えたとの声も聞こえてくる。そこでFinOpsによるクラウドコスト最適化のアプローチが生きてくる。ソリューションを展開する各社の取り組みからFinOpsの現状を追う。
(取材・文/谷川耕一  編集/藤岡 堯)
 


 FinOpsのベストプラクティスや教育、標準化を通じたクラウド財務管理の支援を目的として、2019年2月に設立されたのがFinOps Foundationだ。米Microsoft(マイクロソフト)、米Google(グーグル)、米Oracle(オラクル)、米Salesforce(セールスフォース)など主要クラウドベンダーが参画し、23年10月には米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)も加盟したことで話題となった。23年11月にはクラウド費用や使用量、課金データを標準化するための仕様となる「FinOps Open Cost and Use Supplement」(FOCUS)を発表したこともあり、欧米を中心にFinOpsへの関心は高まっている。

小さな課題解決を短いスパンで展開する
日立製作所

 一方で国内は「FinOpsに積極的に取り組んでいるところとそうでないところに差がある」と、日立製作所のマネージドサービス事業部クラウド&デジタルマネージドサービス部の松沢敏志・Hitachi Application Reliability Centers(HARC) シニアクラウドアーキテクトは指摘する。運用や予算管理などがオンプレミスと変わらない組織では「すでにクラウドの予算は確保しているので、安くなるような提案はしないでほしいとさえ言われることもある」そうだ。予算内で大きなトラブルもなく運用できているので、手間のかかるコスト削減提案は必要ないという理屈だ。
 
日立製作所 松沢敏志 HARCシニアクラウドアーキテクト

 しかし、コストがかさみ、問題が大きくなっているケースもある。「クラウドを使い続けると想定より安価にならない」「スモールスタートしたが事業部門などに裁量を持たせた結果、サービスが乱立し無駄が多くコストが高まった」といったように、課題は状況によりさまざまだ。現状を分析した上で短期、中長期な方針を決め、クラウド運用とコストの最適化に継続的に取り組む必要がある。

 日立が提供するHARCは、SRE(Site Reliability Engineering)の手法に基づき、クラウド利用の最適化を図るサービスだ。SRE手法を用いたクラウドアプリケーションの運用改革、インシデント対応の効率化でアジリティ、信頼性、安定性を向上。そして継続的なクラウドコストの管理と最適化を実現する。海外で実績のある手法、ノウハウを用い、顧客の既存環境やツールなどを生かしたかたちで継続的に最適化に取り組む。

 コスト面の課題解決では、クラウド利用の状況をアセスメントで明らかにし、有効な対策に優先順位を付けて実行する。クラウドのコスト削減手法はすでに確立されたものも多い。例えば▽割引率の高いリザーブドインスタンスを購入する▽開発環境などは利用しない夜間や休日にインスタンスを落とす▽サーバーレスなどで利用分だけの支払いにする─などだ。これらの対処をきめ細かく適用すれば、20%程度のコスト削減も珍しくない。

 HARCでは、まずは状況を可視化し、その結果を踏まえて、顧客に伴走するかたちで最適化を実施する。「効果のありそうな小さな課題解決を、短いスパンで繰り返し回すイメージ」と松沢HARCシニアクラウドアーキテクトは語る。それを続けると、アプリケーションやインフラの設計に立ち返り大規模に改善すべき課題も見えてくるだろう。その場合は、顧客と一緒に中長期的なロードマップを改めて描き取り組むこととなる。このHARCのアプローチは、FOCUSでも同様だという。
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