Special Feature
AI時代を見据えたクラウドの現在地 第3回 大手ディストリビューターのSaaSビジネス ニーズの取り込みに積極姿勢
2024/02/12 09:00
週刊BCN 2024年02月12日vol.2002掲載
(取材・文/齋藤秀平、岩田晃久、藤岡 堯)
ダイワボウ情報システム
自動継続型のビジネスモデルで収益基盤の安定化につなげる
ダイワボウ情報システム(DIS)は、2016年に立ち上げたサブスクリプション管理ポータル「iKAZUCHI(雷)」でSaaSを取り扱っている。ビジネスを展開する上で重要視しているのは、自動継続型のビジネスモデルを浸透させること。販売推進本部クラウド・アプリケーション販売推進部の塚本小都・副部長(クラウドグループマネージャーとサブスクリプション推進グループマネージャーを兼任)は「契約が自動的に継続すれば、販売店にとってはエンドユーザーと長期的なお付き合いができるようになり、収益基盤の安定化につながる」と話す。iKAZUCHI(雷)では現在、SaaSを中心に128ベンダーの241サービスをそろえている。販売店から見た場合、選択できるサービスの数は一つの差別化ポイントになる。他社も管理ポータルの仕組みを提供する中、塚本副部長は「サービスの数は圧倒的に多いと自負している」と自信を示す。新たにサービスを加える際は、やみくもに数を追い求めるのではなく、市場のニーズを優先。DISが強みとする全国の販売網や、付き合いがあるベンダーからの声などを反映しているという。
SaaSビジネスでは、1回の売り上げがハードウェアやソフトウェアを販売する場合よりも少なくなるため、手間やコストをできるだけ削減することが求められる。契約内容に応じて、販売店が定期的にエンドユーザーと注文書や請求書をやりとりするのは大きな負担になる。これを解決する目的で、iKAZUCHI(雷)は、販売店からの注文を受けた後、請求書を能動的に発行する仕組みを用意している。エンドユーザーから解約の申請がなければ、販売店は何もしなくてもいいため、塚本副部長は「長期的に見れば販売店の業務負担の軽減になる」と説明する。この仕組みは全ベンダーのサービスに対応しており、iKAZUCHI(雷)のもう一つの特徴になっている。
iKAZUCHI(雷)の立ち上げ以降、DISのサブスクリプションビジネスは「毎年、確実に成長している」(塚本副部長)。23年度上期(23年4月1日~9月30日)のiKAZUCHI(雷)を通じた販売店への販売総額は前年同期比42.9%増の137億4300万円と好調に推移しており、本年度内に260億円の達成を目指している。直近では、AI関連のサービスに対する販売店の注目が高まっており、新たな価値が提供できる領域として市場の拡大につながることも期待している。
とはいえ、現時点では「会社全体の売り上げから考えると、ビジネスの規模はまだ小さい」と塚本副部長。「ハードウェアなどを販売する従来型の販売モデルはまだたくさんあり、自動継続型のビジネスモデルは市場全体に浸透しきっていない」と指摘し、「iKAZUCHI(雷)をキーワードに、ベンダーや販売店の意識を徐々に変えていきたい」と力を込める。
今後の戦略については「これからは複数のサービスを使うのが当たり前になり、いくつかのサービスを組み合わせたり、補完し合うサービスを契約したりするようになるだろう」と前置きした上で、「エンドユーザーの成長プロセスや環境の変化に沿ったサービスのパッケージ化や、ハードウェアとの複合提案などを意識する」と強調する。サービス面の拡充に加え、iKAZUCHI(雷)では、DISと販売店、エンドユーザーの関係強化につながる機能の拡張を検討していくという。
SaaSの市場はまだ発展途上との見方がある。企業の規模のほか、都市部とそれ以外の地域といった点で活用に温度差があるのも否めない。塚本副部長は「中堅・中小企業にとっても、クラウドが生かせるところはたくさんあるので、必要性に関するメッセージはもっと強化していかなければならない」と語る。さらに「われわれにとっても、販売店にとっても、SaaSビジネスは収益の基盤の安定化につなげられる。そのためには販売モデルを次世代型にしていく必要があり、この部分をしっかりとリードしていきたい」と意気込む。
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