Special Feature
AI時代を見据えたクラウドの現在地 第1回 激化する競争を勝ち抜くのは誰か 大手ベンダーの成長戦略を探る
2024/01/29 09:00
週刊BCN 2024年01月29日vol.2000掲載
(取材・文/大畑直悠、齋藤秀平、大向琴音、藤岡堯)
日本マイクロソフト
日本独自のパートナー支援策で生成AIのユースケースを拡大
2022年11月に登場し、生成AIブームの火付け役となったのは米OpenAI(オープンエーアイ)の「ChatGPT」だった。米Microsoft(マイクロソフト)は、そのOpenAIの大規模言語モデル(LLM)を、自社のパブリッククラウド「Azure」の一つの機能にした、「Azure OpenAI Service」を提供している。日本マイクロソフトは1月から、Azure OpenAI Serviceを活用したパートナーによる事業の創出を後押しする日本独自の取り組みとして、「生成AI事業化支援プログラム」を開始した。パートナーが生成AIに関する技術を身につけるところから、AIを用いた事業の案件化や、拡販までを日本マイクロソフトが支援する内容で、23年10月に参加パートナーを募集し、約150社を採択した。24年10月までを第1期と区切って活動し、パートナーとともに生成AIのユースケース創出を図り、Azureのビジネス機会拡大を目指す。中期的な目標としては、向こう3年間でAI活用事例を500件創出することを掲げている。
23年秋ごろ、国内でAzure OpenAI Serviceを活用している企業の数は600社程度と発表されていたが、日本マイクロソフトによると、直近では2300社以上に拡大しているといい、生成AIに対する企業の関心は急速に高まっている。ただ、生成AIの使われ方は、チャットボットや社内のヘルプデスク、アイデアの取りまとめなどのいわゆる“壁打ち要員”としての利用にとどまっているのが現状だという。
同社業務執行役員の木村靖・パートナー事業本部副事業部長エンタープライズパートナー統括本部長は「“壁打ち”としての使い方だけではあっという間に生成AIブームは終わってしまうだろう。重要なのは、顧客のビジネスそのものにいかに生成AIを組み込み、生産性の向上やBPR(業務プロセスの再構築)のような業務改革に関わるようなユースケースを生み出すことだ。プログラムの目的もここにある」と説明した。
木村業務執行役員によると、ユーザー企業からの生成AI活用に関する期待は非常に高い一方で、マイクロソフトのパートナーが必ずしもそのニーズに答え切れていない現状があるという。これまでAzureビジネスにおいてリフト&シフトを主戦場にしていたパートナーにとっては、生成AI関連では顧客の業務改善や、データの活用、セキュリティ、ガバナンスなどに関して新たな知見が必要になる。そのため既存の経験やスキルと結びつかないケースがあることを踏まえ、今回のプログラムでは技術と事業開発の両面でパートナーの生成AIビジネスを支援する。
参画企業に対しては、ミートアップの場を用意し、マイクロソフト製品の取り扱いで長年の実績がある既存のSIパートナーと、AIやクラウドに強いスタートアップやISVパートナーとのマッチングの機会を創出する。また、業種・業界に特化したパートナーを顧客に推奨する仕組みも用意する。
木村業務執行役員は「クラウドビジネスにおいて、IaaS・PaaSの領域では米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)に後れをとってきたことは否めない。また、ITインフラの領域だけでは、競合のクラウドサービスと大きく差別化することは難しく、これまでAzureに触れたことのないパートナーが新たに当社を選ぶ理由は希薄だったのが正直なところだ。その状況下で、Azureが生成AIで一歩先を走ることで、当社のクラウドを担いでもらうきっかけになる。Azure OpenAI Serviceはゲームチェンジャーになる」と力を込めた。
また、「Microsoft 365」を使用する業務を生成AIを用いて効率化する「Copilot for Microsoft 365」については、1月16日に中小企業向けプランの提供を開始した。パートナービジネスについては、現状では限られた数社とともにユースケースづくりを進めているが、データ活用の支援なども含めた顧客支援の知見を蓄積し、今後パートナー戦略を拡大させる考えだ。
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