Special Feature

中小企業のDXを全国へ広げる SaaSベンダーの地銀パートナー獲得策

2023/10/23 09:00

週刊BCN 2023年10月23日vol.1989掲載

 業務支援ソリューションを提供しているSaaSベンダー各社が、全国各地の地方銀行との協業に力を入れている。人口減少や少子高齢化といった問題は地方でより深刻化しており、地方の中小企業のDX推進が急務となる中、地場の企業の経営課題を知り尽くした地方銀行は有力なパートナーとなり得る。地方銀行を通じたソリューションの提供によって、各社はどのようなビジネス展開を狙っているのか。
(取材・文/大向琴音  編集/日高 彰)
 

freee
意識の変化がビジネスを後押しICTコンサルの知見を提供

 SaaSベンダーとしては比較的早い2015年から地方銀行との提携を開始したのがfreeeだ。北國銀行(金沢市)との協業から始まり、現在では50行と連携している。特にここ1年で、地方銀行を通じた地元企業の支援では大きな成果が上がってきているという。
 
freee 川西 諭 部長

 その背景として、freee金融アライアンス事業部の川西諭・部長は「人口減少や少子高齢化が進む中、地域活性化の一端を地方銀行で担わなければならないという意識が強くなってきた。(地方銀行が)顧客の経営課題を解決するためには、生産性向上の面で価値を提供しないといけない。そうしない限り自分たちが持つ市場自体が活性化しないと気づいた」と説明。地方銀行の事業基盤である地域の活力を維持・向上させるために、銀行自らが旗振り役となって地場の企業の生産性を改善していく必要性が高まったとの見方だ。

 具体的な取り組みとしては、地方銀行が企業に対して「ICTのコンサルティング」としてfreeeの製品を含むITツールの導入・活用支援を行っている。バックオフィスの業務効率化を支援する各種機能をパッケージソフトとして提供している製品の性質上、導入企業は自社の業務を製品にあわせることが必要になる。そのため、業務プロセスの再設計などにおいて、導入を支援するコンサルティングサービスの需要が存在する。地方銀行は元々、企業の経営課題を認識してコンサルティングしてきた経験があるため、freeeからはICT領域のコンサルティングに必要な知見を提供することで、十分な支援ができるとの見方だ。

 また、企業の業務フローの組み替えや、導入に際して行った業務フローの可視化など、ITツールの導入・活用支援のための知見は、freee以外の製品を提案する際にも生かすことができる。川西部長は「極端に言えば、ナレッジを活用してもらうことで顧客貢献ができて、中小企業の皆さんが適切に業務改善ができるなら、選ぶ製品がfreeeでなくても構わない」としつつ、あくまで「freeeの製品の力は信じている」と力を込める。
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