Special Feature
ITインフラ事業成長のかぎは「AI」が握る 米VMwareがラスベガスで年次イベントを開催
2023/09/14 09:00
週刊BCN 2023年09月11日vol.1984掲載
(取材・文/大向琴音 編集/日高 彰)
なぜ生成AIが大きなチャンスを生むのか
米国時間8月22日の基調講演に登壇したラグー・ラグラムCEOは、VMware Explore 2023の大きなテーマは、「生成AI」と「マルチクラウド」の二つであるとした。近年ヴイエムウェアは、オンプレミスの仮想化環境、パブリッククラウド、そして工場や店舗などのエッジ環境といったあらゆるITインフラの上で、開発したアプリケーションを継続的に運用していくための基盤となるソフトウェアの提供に力を入れている。従来の仮想マシンに加えて、コンテナ化されたクラウドネイティブなアプリケーションの実行・管理をサポートする製品群「Tanzu」はその代表だ。この点では、今回のテーマの一つであるマルチクラウドは、同社が取り組んできた戦略を継続・強化するものと言える。
一方で、昨年の「ChatGPT」の登場以来、IT市場で最大の“バズワード”となっているのが、もう一つのテーマである生成AIだ。ITインフラの領域でビジネスを展開するヴイエムウェアと生成AIは、どのように関係するのか。
生成AIがIT市場にもたらすインパクトについてラグラムCEOは、「従来のAIは、ユースケースごとに異なるモデルが必要であった。しかし、生成AIは汎用性がある。情報のやり取りについても、プログラミング言語ではなく、自然言語を使ってやり取りができるので、エンタープライズの誰もが活用可能になる」と語った。AIのワークロードはGPUも含め、大きなITリソースを消費するとされる。それに加えて生成AIが登場したことで、今後はAI活用が進んでいなかった企業の間でもAIの導入が進むとラグラムCEOはみているようだった。
企業が生成AIを活用する際に大きな課題となるのが、データプライバシーだ。現在はChatGPTのようなサービスをそのまま試験的に導入している企業も見られるが、業務の効率化や競争力の向上といった効果を高めるためには、顧客との過去の対応履歴や、特定の業務で頻出する用語など、その企業だけが持つデータを利用してAIモデルをカスタマイズする必要がある。個人情報や企業秘密を用いるAIアプリケーションを安全に開発するためには、プライバシーやコンプライアンスの要件を企業が自ら制御できるプライベートな環境が必要となる。
また、AIアプリケーションは一度開発して終わりではなく、継続的にチューニングして精度を高めていくことや、新しく登場するAI技術との連携など、開発、運用、最適化をサイクルとして回していくことが求められる。オンプレミスで開発したAIを、パブリッククラウドやエッジなどの異なる環境で実行するといったニーズも必然的に発生する。
このため、ヴイエムウェアはAI開発で既に大きなエコシステムを築いている米NVIDIA(エヌビディア)との協業を強化する戦略をとる。今回のイベントでの最も大きな発表となったのが、ヴイエムウェアのクラウド基盤と、AIモデルの構築や運用を支援するエヌビディアのソフトウェア製品「NVIDIA AI Enterprise」を統合した「VMware Private AI Foundation with NVIDIA」だった。AIアプリケーションを実行する基盤だけでなく、エヌビディアと組んでAI開発から改善に至るまでの一連のライフサイクルを提供することで、生成AIで急騰するITインフラ需要を自社の成長につなげようとするのが、今回のヴイエムウェアの狙いだ。
VMware Private AI Foundation with NVIDIA向けのハードウェアとしては、米Dell Technologies(デル・テクノロジーズ)、米Hewlett Packard Enterprise(ヒューレットパッカードエンタープライズ、HPE)、中国Lenovo(レノボ)から対応製品が提供されることがアナウンスされている。また、エヌビディアとの協業に加えて、オープンソースの技術を利用してAIを開発・利用するためのアーキテクチャーとして、「VMware Private AI Reference Architecture for Open Source」も発表している。ヴイエムウェアは、ユーザー企業やパートナーが自社のクラウド基盤を構築するための製品として「VMware Cloud Foundation(VCF)」を用意しているが、VCFとオープンソースの技術、そしてパートナーの製品やサービスを組み合わせたAIソリューションを提供できる環境を整えようとしている。
- インフラ全体の最適化やエッジ管理を強化
- パートナーエコシステムを強調
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