Special Feature

DX支援が加速する北海道のIT市場 業界の課題を捉え、デジタル化を面的に推進

2023/08/31 09:00

週刊BCN 2023年08月28日vol.1982掲載

 北海道内では、少子高齢化や過疎化といった要因から、幅広い産業でノウハウの継承や業務効率化、生産性向上が課題となっている。このためDXの機運は高まっており、専門組織が連携し、道内企業のDXを支援する「北海道DX推進協働体」が立ち上がった。また、これまで道内のITビジネス市場で盛んだった受託開発から脱却し、自社ソリューションの提供や、特にDXが遅れる中小企業を対象にしたコンサルティングを提供する動きも活発化している。
(取材・文/大畑直悠)
 

北海道科学技術総合振興センター
道内企業の競争力を上げる

 道内では、デジタル活用が遅れる中小企業を対象に、DXによる競争力の向上を目的とした支援コミュニティの北海道DX推進協働体が2022年6月に立ち上がった。北海道経済産業局と北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)、北海道IT推進協会が運営ワーキンググループを担い、IT系の業界団体や地銀、経済団体など24の支援機関が連携して道内企業のDXを伴走支援する。事務局の役割を務めるノーステック財団の黒澤辰憲・ビジネスソリューション支援部副部長は、設立の経緯を「ノーステック財団では、道内の食品製造業に対するDXセミナーやロボットの導入といった支援を提供してきたが、コロナ禍を機に食品製造業以外でもDXの必要性に迫られる企業が増え、ITの専門家も交えた組織を立ち上げた」と説明する。
 
ノーステック財団 黒澤辰憲 副部長

 同協働体では、参画する支援機関からデジタル技術や経営などの専門家を集めた支援チームを編成し、支援先企業の課題を明確にした上で、その企業が提供する価値の向上を目指したDX戦略を策定する。また、必要に応じてITベンダーとのマッチングも行う。黒澤副部長は支援の狙いを「DXを進める上で、何から着手すればいいか分からないという企業は多い。専門家との対話やアドバイス、伴走型支援を提供することで、企業が自社のDX推進に向けて自走できるようにすることがゴールだ」と話す。

 22年度は13社に支援を実施。例えば、国産のワインを製造・販売する企業に対して、属人化した在庫管理業務の変革を提案したほか、データの収集・活用のためにIoT機器やモバイルデバイスの導入を進め、製造管理の効率化を後押しした。

 黒澤副部長は「釧路では、われわれと似た取り組みがスタートし、23年5月に釧路地域DX推進協が立ち上がった。もともとDXの取り組みが進んでいたこともあるが、DX支援の枠組みづくりや人材育成の動きが活発化している。当協働体の取り組みを機に、こうした動きをつくり出せたのは大きな成果だ」と手応えを示す。その上で「北海道は広く、DXを行き渡らせるためには、同じような支援スキームが道内の各地で提供されることが理想だ。DXに取り組む上では、自分たちと近しいIT企業とのつながりをつくる必要があるだろう。当協働体が支援する企業を増やすことも重要だが、われわれがモデルケースとなって、DX支援の動きそのものを拡大させる」と訴える。

 23年度も引き続き同様の支援を実施している。黒澤副部長は「自社と同じ業種のDX事例を作り出せれば、DXに踏み出せていない企業を後押しできるだろう。道内企業のDX事例を積み上げていきたい」と意気込む。加えて、サイバーセキュリティの伴走型支援も開始。中小企業へのサイバーリスクの啓発に力を入れ、企業規模に見合ったセキュリティ製品の導入やポリシーの構築を支援する考えだ。

 黒澤副部長は「北海道の産業が稼げる仕組みをつくる上で、ITの力は欠かせない。特に、北海道が強みとする食品製造において競争力を維持するために、データ活用などで生産性の安定やより付加価値の高い商品の開発力を得ていきたい」との姿勢だ。
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