Special Feature
デジタル化著しいフィジカルセキュリティ市場 IT商材としてのビジネスチャンス広がる
2023/07/24 09:00
週刊BCN 2023年07月24日vol.1978掲載
防犯カメラや入退室管理といったフィジカル(物理)セキュリティ製品は、施工業者が導入し、閉ざされた社内ネットワーク上で運用されるケースがこれまで大半で、サイバーセキュリティ製品と比較すると、IT商材としての性格は薄かった。しかし、近年はこのフィジカルセキュリティ領域でもデジタル化が進み、クラウドを活用した防犯カメラの普及、認証技術の高度化、デバイスを一元管理できるツールの登場などにより、ITの観点からのビジネスチャンスも拡大している。特徴的なフィジカルセキュリティソリューションを提供する3社の取り組みを紹介する。
(取材・文/岩田晃久)
ネットワンパートナーズ
ネットワンパートナーズは、カナダGenetec(ジェネテック)の統合セキュリティプラットフォーム「Genetec Security Center」を軸に、フィジカルセキュリティ事業を強化している。背景には、防犯カメラなどのデバイスがインターネットにつながるようになり、場所を問わず監視・運用できる環境の構築が求められるようになっていることがあり、このニーズをつかんで顧客の拡大を目指す。
ネットワンパートナーズ 篠田圭太郎氏
ビジネス開発部第1チームの篠田圭太郎氏は、国内のフィジカルセキュリティ市場について、「防犯カメラなどは、閉ざされたネットワークで運用される“レガシーシステム”が活躍してきたが、最近は、遠隔やクラウドで運用・管理できるオープンなシステムへの移行が始まっており、市場も拡大傾向にある。ただ、インターネットにつながることで、フィジカルセキュリティシステムが攻撃されるケースもあることから、それらのシステムでも従来対策していなかったサイバーセキュリティの強化など、求められるポイントが増えている」と解説する。
フィジカルセキュリティがオープンなシステムに移行することで、どのような対策が必要となるのだろうか。ビジネス開発部第3チームの村野由季氏は「▽PCやカメラの脆弱性を検知する▽デバイスを可視化しアクセス権限などをコントロールする▽ネットワークの境界防御や、マルウェアに感染した際に内部拡散を防止する──といった対策を施す必要がある」とアドバイスする。
ネットワンパートナーズ 村野由季氏
そのためにカギとなるのが、前出のGenetec Security Centerだ。防犯カメラの映像データを保存して運用・管理する「VMS(Video Management Software)」と呼ばれる製品で、カメラの映像以外にもドアリーダーや物体感知など、さまざまなデバイスのデータに対応できる点を特徴とする。入退室管理、ナンバープレート認識といった機能も搭載する。最近は、映像解析アプリケーションと連携して使用するケースも増えているという。従来、防犯カメラなどのフィジカルセキュリティ製品は複数の機器がそれぞれ個別のシステムとして導入されており、管理が複雑化していたが、Genetec Security Centerに集約することで、運用負荷の軽減や対応の迅速化が図れるとしている。
データ保護機能も充実しており、カメラとサーバーの間といった各種通信と、保存するデータは暗号化される。不特定多数の人が映る映像にはモザイクをかけるといったプライバシーマスキングも可能。ほかの認証システムとの連携や特権機能により、データの閲覧制限といった設定も行える。
現在は、製造業や社会インフラ領域での利用が拡大傾向にあるとした。多拠点を有する製造業では、1拠点からスタートし、徐々に導入を広げていく傾向が強いという。
パートナーがGenetec Security Centerを販売するには、ジェネテックが提案するトレーニングを受け、認定資格を所得する必要がある。「防犯カメラの単価が下がってきているため、『提案商材を増やしたい』『フィジカルセキュリティ市場の拡大を見込み、新たなビジネスとして開始したい』といったパートナーが増えている」(篠田氏)ことから、資格の取得が増加しているとした。ネットワンパートナーズでは、勉強会の開催や、パートナーと共同で提案先の業界や内容に応じた戦略を策定するなどの支援を行っている。篠田氏は「これまで防犯カメラを導入してきたのは主に工事事業者だったが、最近は、画像解析や設備連携といったソリューションとしての提案を求めるお客様が増えているため、SIerがメインプレイヤーになっていくのではないか」と展望する。
NEC
NECは50年以上、生体認証技術の研究開発に取り組んでおり、豊富な実績と高い技術力を誇る。現在は生体認証ブランド「Bio-IDiom(バイオイディオム)」の下にさまざまなソリューションをそろえ、顧客の環境や課題に沿って柔軟に提案することで納入を拡大している。
認証システムを導入する場合、パスワードや暗証番号を用いる「知識認証」、物理的な鍵やカード、証明書を用いる「所有物認証」が利用されるケースが多い。ただ、知識認証では、パスワードを忘れる、他人に推測されるといった可能性があり、所有物認証でも、紛失、盗難、貸借のリスクが潜んでいる。生体認証は、その唯一性によってなりすましが困難で、紛失のリスクがないことから、近年さまざまな場面での利用が進んでいる。
NEC 師岡宏典 ディレクター
同社は、1971年に指紋技術の研究を、89年に2D顔照合の研究を開始。現在は、顔、虹彩、指紋・掌紋、指静脈、声、耳音響といった幅広い生体認証製品を展開しており、米調査会社Frost&Sullivan(フロスト&サリバン)のレポートにおいて、生体認証市場の「Market Leader」に選ばれるなどグローバルで高い評価を得ている。また、米国立標準技術研究所(NIST)のベンチマークテストでは、顔、虹彩、指紋の三つが1位を獲得している。生体認証・映像分析統括部の師岡宏典・ディレクターは「長年、認証に取り組んでおり、さまざまなノウハウが蓄積されている。例えば、顔認証で得た技術をほかの認証に生かすことで、高い精度を実現できている。こういった点が当社の特徴だ」と述べる。
顔認証は、同社を代表する技術として認知されている。非接触で認証できることや、マスクを着用した状態でも顔を判別できるため、新型コロナ禍以降は、利便性や衛生面の観点から利用が拡大しているという。現在、「顔と虹彩」のように複数の認証技術を組み合わせて高精度な認証を可能にする「マルチモーダル生体認証」の実用化も進んでいる。
Bio-IDiomの核となるのが、顔認証専用デバイスの「NEC顔認証エッジデバイス」、複数のカメラやデバイスからの映像を集約して認証を行う「NEC AI Accelerator」、顔認証と虹彩認証を搭載する「顔・虹彩マルチモーダル生体認証」の三つのエッジデバイスだ。特に、顔・虹彩マルチモーダル生体認証は、重要なデータを保有する施設などでの需要が高いという。
生体認証のデータは個人情報に当たるため、管理も重要となり、それに対応できずに諦めるケースも少なくない。同社は個人情報への対応を含めたトータルでの提案ができる点も強みだとしている。
顧客のニーズについて師岡ディレクターは「生体認証を活用したいというお客様は年々、増えている。その中で、さまざまな認証技術を提供し、お客様の環境や課題に沿った提案ができることが支持されている」と話す。続けて「最近は、フィジカルセキュリティとそのほかのシステムを連携させたい、一部だけセキュリティを強化したいといったニーズが増えており、APIで容易に連携できるなど柔軟性を求めるお客様が多い」と傾向を語る。
今後については「セキュリティを高めると利便性が下がるといった面があるため、セキュリティを担保しながら利便性が損なわれないソリューションを提供していきたい。そして、サイバーとフィジカルの双方を提供できる当社だからこそできる総合的な提案をして、お客様の課題解決に寄り添っていく」と力を込める。Verkada Japan
防犯カメラをはじめとしたフィジカルセキュリティ製品を展開する米Verkada(ヴェルカダ)は、4月に日本法人のVerkada Japanを設立した。法人設立に合わせ、ダイワボウ情報システムとディストリビューター契約を結び、新規顧客の獲得を目指している。
ヴェルカダは2016年に設立。グローバルで1万5700以上の組織で製品が利用されるなど、近年、急成長を遂げている。現在は、防犯カメラ、ドアベースの入退室管理、空気質センサー、アラーム、インターホン、訪問者管理、メールルーム管理の七つの製品を展開。これらのハードウェアには10年保証が提供されており、野外に設置した製品にも適用される。
Verkada Japan 山移雄悟 カントリーマネージャー
運用・管理は、すべてクラウド上の管理コンソールで行う。各製品は、大がかりな工事を行わなくても設置でき、シリアル番号を管理コンソールに入力するだけで、すぐに利用できる。山移雄悟・カントリーマネージャーは「当社の特徴はハイブリッドクラウドでフィジカルセキュリティを提供できることと、複数の製品があるためプラットフォームとして展開できる点だ」と強調する。
複数の製品を組み合わせた利用を容易にしていることで、例えば、カメラと空気質センサーを組み合わせると、センサーが反応した際、カメラ映像を確認しながら、どういった事象が起きているのかを把握し、迅速な対応が図れるという。実際、欧米では、製品を組み合わせた利用が進んでおり、「国内のお客様からもプラットフォームとして評価、期待する声が多い」(山移カントリーマネージャー)という。
サイバーセキュリティでは問題が起きた際、セキュリティアナリストやエンジニアといった専門家が対応をするが、フィジカルセキュリティの場合、問題が発生している場所の近くにいる人が対応しなければならないケースがある。その際、ヴェルカダの製品では、カメラの映像をスマートフォンでシェアする機能を活用することで、映像を受け取った人がすぐに状況を把握し、対処できるようになる。
データベースなどと連携できるAPI機能「Helix」も特徴の一つとしている。小売業では、POSデータと連携させ、高額な商品を購入した人や売り上げが好調なときの店舗の状況をカメラ映像で確認し、そこで得た情報を次の施策に生かすといったマーケティングの面でも利用されているという。
国内では、21年11月から高千穂交易が販売してきたが、国内ビジネスのさらなる拡大を目指し、ダイワボウ情報システムと手を組んだ。山移カントリーマネージャーは「ダイワボウ情報システムのパートナーを通じて全国のお客様に当社の製品を届けていく。導入が容易でクロスセルもしやすいため、パートナーにとってもメリットの大きい商材になる」と語った。Verkada Japanでも、SE向けのトレーニングを提供するなどして、フィジカルセキュリティ商材の販売実績がないパートナーの参入を支援する。
今後は、製造業や小売業をターゲットに拡販し、徐々に業種を広げていく予定だ。山移カントリーマネージャーは「国内のフィジカルセキュリティはIT化が遅れている。ITの力を活用してモダナイズを実現したい」と意気込む。
(取材・文/岩田晃久)

ネットワンパートナーズ
統合基盤で多種多様な機器を一元管理
ネットワンパートナーズは、カナダGenetec(ジェネテック)の統合セキュリティプラットフォーム「Genetec Security Center」を軸に、フィジカルセキュリティ事業を強化している。背景には、防犯カメラなどのデバイスがインターネットにつながるようになり、場所を問わず監視・運用できる環境の構築が求められるようになっていることがあり、このニーズをつかんで顧客の拡大を目指す。
ビジネス開発部第1チームの篠田圭太郎氏は、国内のフィジカルセキュリティ市場について、「防犯カメラなどは、閉ざされたネットワークで運用される“レガシーシステム”が活躍してきたが、最近は、遠隔やクラウドで運用・管理できるオープンなシステムへの移行が始まっており、市場も拡大傾向にある。ただ、インターネットにつながることで、フィジカルセキュリティシステムが攻撃されるケースもあることから、それらのシステムでも従来対策していなかったサイバーセキュリティの強化など、求められるポイントが増えている」と解説する。
フィジカルセキュリティがオープンなシステムに移行することで、どのような対策が必要となるのだろうか。ビジネス開発部第3チームの村野由季氏は「▽PCやカメラの脆弱性を検知する▽デバイスを可視化しアクセス権限などをコントロールする▽ネットワークの境界防御や、マルウェアに感染した際に内部拡散を防止する──といった対策を施す必要がある」とアドバイスする。
そのためにカギとなるのが、前出のGenetec Security Centerだ。防犯カメラの映像データを保存して運用・管理する「VMS(Video Management Software)」と呼ばれる製品で、カメラの映像以外にもドアリーダーや物体感知など、さまざまなデバイスのデータに対応できる点を特徴とする。入退室管理、ナンバープレート認識といった機能も搭載する。最近は、映像解析アプリケーションと連携して使用するケースも増えているという。従来、防犯カメラなどのフィジカルセキュリティ製品は複数の機器がそれぞれ個別のシステムとして導入されており、管理が複雑化していたが、Genetec Security Centerに集約することで、運用負荷の軽減や対応の迅速化が図れるとしている。
データ保護機能も充実しており、カメラとサーバーの間といった各種通信と、保存するデータは暗号化される。不特定多数の人が映る映像にはモザイクをかけるといったプライバシーマスキングも可能。ほかの認証システムとの連携や特権機能により、データの閲覧制限といった設定も行える。
現在は、製造業や社会インフラ領域での利用が拡大傾向にあるとした。多拠点を有する製造業では、1拠点からスタートし、徐々に導入を広げていく傾向が強いという。
パートナーがGenetec Security Centerを販売するには、ジェネテックが提案するトレーニングを受け、認定資格を所得する必要がある。「防犯カメラの単価が下がってきているため、『提案商材を増やしたい』『フィジカルセキュリティ市場の拡大を見込み、新たなビジネスとして開始したい』といったパートナーが増えている」(篠田氏)ことから、資格の取得が増加しているとした。ネットワンパートナーズでは、勉強会の開催や、パートナーと共同で提案先の業界や内容に応じた戦略を策定するなどの支援を行っている。篠田氏は「これまで防犯カメラを導入してきたのは主に工事事業者だったが、最近は、画像解析や設備連携といったソリューションとしての提案を求めるお客様が増えているため、SIerがメインプレイヤーになっていくのではないか」と展望する。
NEC
複数の生体情報を 組み合わせた認証技術
NECは50年以上、生体認証技術の研究開発に取り組んでおり、豊富な実績と高い技術力を誇る。現在は生体認証ブランド「Bio-IDiom(バイオイディオム)」の下にさまざまなソリューションをそろえ、顧客の環境や課題に沿って柔軟に提案することで納入を拡大している。認証システムを導入する場合、パスワードや暗証番号を用いる「知識認証」、物理的な鍵やカード、証明書を用いる「所有物認証」が利用されるケースが多い。ただ、知識認証では、パスワードを忘れる、他人に推測されるといった可能性があり、所有物認証でも、紛失、盗難、貸借のリスクが潜んでいる。生体認証は、その唯一性によってなりすましが困難で、紛失のリスクがないことから、近年さまざまな場面での利用が進んでいる。
同社は、1971年に指紋技術の研究を、89年に2D顔照合の研究を開始。現在は、顔、虹彩、指紋・掌紋、指静脈、声、耳音響といった幅広い生体認証製品を展開しており、米調査会社Frost&Sullivan(フロスト&サリバン)のレポートにおいて、生体認証市場の「Market Leader」に選ばれるなどグローバルで高い評価を得ている。また、米国立標準技術研究所(NIST)のベンチマークテストでは、顔、虹彩、指紋の三つが1位を獲得している。生体認証・映像分析統括部の師岡宏典・ディレクターは「長年、認証に取り組んでおり、さまざまなノウハウが蓄積されている。例えば、顔認証で得た技術をほかの認証に生かすことで、高い精度を実現できている。こういった点が当社の特徴だ」と述べる。
顔認証は、同社を代表する技術として認知されている。非接触で認証できることや、マスクを着用した状態でも顔を判別できるため、新型コロナ禍以降は、利便性や衛生面の観点から利用が拡大しているという。現在、「顔と虹彩」のように複数の認証技術を組み合わせて高精度な認証を可能にする「マルチモーダル生体認証」の実用化も進んでいる。
Bio-IDiomの核となるのが、顔認証専用デバイスの「NEC顔認証エッジデバイス」、複数のカメラやデバイスからの映像を集約して認証を行う「NEC AI Accelerator」、顔認証と虹彩認証を搭載する「顔・虹彩マルチモーダル生体認証」の三つのエッジデバイスだ。特に、顔・虹彩マルチモーダル生体認証は、重要なデータを保有する施設などでの需要が高いという。
生体認証のデータは個人情報に当たるため、管理も重要となり、それに対応できずに諦めるケースも少なくない。同社は個人情報への対応を含めたトータルでの提案ができる点も強みだとしている。
顧客のニーズについて師岡ディレクターは「生体認証を活用したいというお客様は年々、増えている。その中で、さまざまな認証技術を提供し、お客様の環境や課題に沿った提案ができることが支持されている」と話す。続けて「最近は、フィジカルセキュリティとそのほかのシステムを連携させたい、一部だけセキュリティを強化したいといったニーズが増えており、APIで容易に連携できるなど柔軟性を求めるお客様が多い」と傾向を語る。
今後については「セキュリティを高めると利便性が下がるといった面があるため、セキュリティを担保しながら利便性が損なわれないソリューションを提供していきたい。そして、サイバーとフィジカルの双方を提供できる当社だからこそできる総合的な提案をして、お客様の課題解決に寄り添っていく」と力を込める。
Verkada Japan
国内ディストリビューター契約で拡販へ
防犯カメラをはじめとしたフィジカルセキュリティ製品を展開する米Verkada(ヴェルカダ)は、4月に日本法人のVerkada Japanを設立した。法人設立に合わせ、ダイワボウ情報システムとディストリビューター契約を結び、新規顧客の獲得を目指している。ヴェルカダは2016年に設立。グローバルで1万5700以上の組織で製品が利用されるなど、近年、急成長を遂げている。現在は、防犯カメラ、ドアベースの入退室管理、空気質センサー、アラーム、インターホン、訪問者管理、メールルーム管理の七つの製品を展開。これらのハードウェアには10年保証が提供されており、野外に設置した製品にも適用される。
運用・管理は、すべてクラウド上の管理コンソールで行う。各製品は、大がかりな工事を行わなくても設置でき、シリアル番号を管理コンソールに入力するだけで、すぐに利用できる。山移雄悟・カントリーマネージャーは「当社の特徴はハイブリッドクラウドでフィジカルセキュリティを提供できることと、複数の製品があるためプラットフォームとして展開できる点だ」と強調する。
複数の製品を組み合わせた利用を容易にしていることで、例えば、カメラと空気質センサーを組み合わせると、センサーが反応した際、カメラ映像を確認しながら、どういった事象が起きているのかを把握し、迅速な対応が図れるという。実際、欧米では、製品を組み合わせた利用が進んでおり、「国内のお客様からもプラットフォームとして評価、期待する声が多い」(山移カントリーマネージャー)という。
サイバーセキュリティでは問題が起きた際、セキュリティアナリストやエンジニアといった専門家が対応をするが、フィジカルセキュリティの場合、問題が発生している場所の近くにいる人が対応しなければならないケースがある。その際、ヴェルカダの製品では、カメラの映像をスマートフォンでシェアする機能を活用することで、映像を受け取った人がすぐに状況を把握し、対処できるようになる。
データベースなどと連携できるAPI機能「Helix」も特徴の一つとしている。小売業では、POSデータと連携させ、高額な商品を購入した人や売り上げが好調なときの店舗の状況をカメラ映像で確認し、そこで得た情報を次の施策に生かすといったマーケティングの面でも利用されているという。
国内では、21年11月から高千穂交易が販売してきたが、国内ビジネスのさらなる拡大を目指し、ダイワボウ情報システムと手を組んだ。山移カントリーマネージャーは「ダイワボウ情報システムのパートナーを通じて全国のお客様に当社の製品を届けていく。導入が容易でクロスセルもしやすいため、パートナーにとってもメリットの大きい商材になる」と語った。Verkada Japanでも、SE向けのトレーニングを提供するなどして、フィジカルセキュリティ商材の販売実績がないパートナーの参入を支援する。
今後は、製造業や小売業をターゲットに拡販し、徐々に業種を広げていく予定だ。山移カントリーマネージャーは「国内のフィジカルセキュリティはIT化が遅れている。ITの力を活用してモダナイズを実現したい」と意気込む。
防犯カメラや入退室管理といったフィジカル(物理)セキュリティ製品は、施工業者が導入し、閉ざされた社内ネットワーク上で運用されるケースがこれまで大半で、サイバーセキュリティ製品と比較すると、IT商材としての性格は薄かった。しかし、近年はこのフィジカルセキュリティ領域でもデジタル化が進み、クラウドを活用した防犯カメラの普及、認証技術の高度化、デバイスを一元管理できるツールの登場などにより、ITの観点からのビジネスチャンスも拡大している。特徴的なフィジカルセキュリティソリューションを提供する3社の取り組みを紹介する。
(取材・文/岩田晃久)
ネットワンパートナーズ
ネットワンパートナーズは、カナダGenetec(ジェネテック)の統合セキュリティプラットフォーム「Genetec Security Center」を軸に、フィジカルセキュリティ事業を強化している。背景には、防犯カメラなどのデバイスがインターネットにつながるようになり、場所を問わず監視・運用できる環境の構築が求められるようになっていることがあり、このニーズをつかんで顧客の拡大を目指す。
ネットワンパートナーズ 篠田圭太郎氏
ビジネス開発部第1チームの篠田圭太郎氏は、国内のフィジカルセキュリティ市場について、「防犯カメラなどは、閉ざされたネットワークで運用される“レガシーシステム”が活躍してきたが、最近は、遠隔やクラウドで運用・管理できるオープンなシステムへの移行が始まっており、市場も拡大傾向にある。ただ、インターネットにつながることで、フィジカルセキュリティシステムが攻撃されるケースもあることから、それらのシステムでも従来対策していなかったサイバーセキュリティの強化など、求められるポイントが増えている」と解説する。
フィジカルセキュリティがオープンなシステムに移行することで、どのような対策が必要となるのだろうか。ビジネス開発部第3チームの村野由季氏は「▽PCやカメラの脆弱性を検知する▽デバイスを可視化しアクセス権限などをコントロールする▽ネットワークの境界防御や、マルウェアに感染した際に内部拡散を防止する──といった対策を施す必要がある」とアドバイスする。
ネットワンパートナーズ 村野由季氏
そのためにカギとなるのが、前出のGenetec Security Centerだ。防犯カメラの映像データを保存して運用・管理する「VMS(Video Management Software)」と呼ばれる製品で、カメラの映像以外にもドアリーダーや物体感知など、さまざまなデバイスのデータに対応できる点を特徴とする。入退室管理、ナンバープレート認識といった機能も搭載する。最近は、映像解析アプリケーションと連携して使用するケースも増えているという。従来、防犯カメラなどのフィジカルセキュリティ製品は複数の機器がそれぞれ個別のシステムとして導入されており、管理が複雑化していたが、Genetec Security Centerに集約することで、運用負荷の軽減や対応の迅速化が図れるとしている。
データ保護機能も充実しており、カメラとサーバーの間といった各種通信と、保存するデータは暗号化される。不特定多数の人が映る映像にはモザイクをかけるといったプライバシーマスキングも可能。ほかの認証システムとの連携や特権機能により、データの閲覧制限といった設定も行える。
現在は、製造業や社会インフラ領域での利用が拡大傾向にあるとした。多拠点を有する製造業では、1拠点からスタートし、徐々に導入を広げていく傾向が強いという。
パートナーがGenetec Security Centerを販売するには、ジェネテックが提案するトレーニングを受け、認定資格を所得する必要がある。「防犯カメラの単価が下がってきているため、『提案商材を増やしたい』『フィジカルセキュリティ市場の拡大を見込み、新たなビジネスとして開始したい』といったパートナーが増えている」(篠田氏)ことから、資格の取得が増加しているとした。ネットワンパートナーズでは、勉強会の開催や、パートナーと共同で提案先の業界や内容に応じた戦略を策定するなどの支援を行っている。篠田氏は「これまで防犯カメラを導入してきたのは主に工事事業者だったが、最近は、画像解析や設備連携といったソリューションとしての提案を求めるお客様が増えているため、SIerがメインプレイヤーになっていくのではないか」と展望する。
(取材・文/岩田晃久)

ネットワンパートナーズ
統合基盤で多種多様な機器を一元管理
ネットワンパートナーズは、カナダGenetec(ジェネテック)の統合セキュリティプラットフォーム「Genetec Security Center」を軸に、フィジカルセキュリティ事業を強化している。背景には、防犯カメラなどのデバイスがインターネットにつながるようになり、場所を問わず監視・運用できる環境の構築が求められるようになっていることがあり、このニーズをつかんで顧客の拡大を目指す。
ビジネス開発部第1チームの篠田圭太郎氏は、国内のフィジカルセキュリティ市場について、「防犯カメラなどは、閉ざされたネットワークで運用される“レガシーシステム”が活躍してきたが、最近は、遠隔やクラウドで運用・管理できるオープンなシステムへの移行が始まっており、市場も拡大傾向にある。ただ、インターネットにつながることで、フィジカルセキュリティシステムが攻撃されるケースもあることから、それらのシステムでも従来対策していなかったサイバーセキュリティの強化など、求められるポイントが増えている」と解説する。
フィジカルセキュリティがオープンなシステムに移行することで、どのような対策が必要となるのだろうか。ビジネス開発部第3チームの村野由季氏は「▽PCやカメラの脆弱性を検知する▽デバイスを可視化しアクセス権限などをコントロールする▽ネットワークの境界防御や、マルウェアに感染した際に内部拡散を防止する──といった対策を施す必要がある」とアドバイスする。
そのためにカギとなるのが、前出のGenetec Security Centerだ。防犯カメラの映像データを保存して運用・管理する「VMS(Video Management Software)」と呼ばれる製品で、カメラの映像以外にもドアリーダーや物体感知など、さまざまなデバイスのデータに対応できる点を特徴とする。入退室管理、ナンバープレート認識といった機能も搭載する。最近は、映像解析アプリケーションと連携して使用するケースも増えているという。従来、防犯カメラなどのフィジカルセキュリティ製品は複数の機器がそれぞれ個別のシステムとして導入されており、管理が複雑化していたが、Genetec Security Centerに集約することで、運用負荷の軽減や対応の迅速化が図れるとしている。
データ保護機能も充実しており、カメラとサーバーの間といった各種通信と、保存するデータは暗号化される。不特定多数の人が映る映像にはモザイクをかけるといったプライバシーマスキングも可能。ほかの認証システムとの連携や特権機能により、データの閲覧制限といった設定も行える。
現在は、製造業や社会インフラ領域での利用が拡大傾向にあるとした。多拠点を有する製造業では、1拠点からスタートし、徐々に導入を広げていく傾向が強いという。
パートナーがGenetec Security Centerを販売するには、ジェネテックが提案するトレーニングを受け、認定資格を所得する必要がある。「防犯カメラの単価が下がってきているため、『提案商材を増やしたい』『フィジカルセキュリティ市場の拡大を見込み、新たなビジネスとして開始したい』といったパートナーが増えている」(篠田氏)ことから、資格の取得が増加しているとした。ネットワンパートナーズでは、勉強会の開催や、パートナーと共同で提案先の業界や内容に応じた戦略を策定するなどの支援を行っている。篠田氏は「これまで防犯カメラを導入してきたのは主に工事事業者だったが、最近は、画像解析や設備連携といったソリューションとしての提案を求めるお客様が増えているため、SIerがメインプレイヤーになっていくのではないか」と展望する。
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