Special Feature
働き続けられる会社になるために IT業界は人材定着にどう挑むか
2023/07/06 09:00
週刊BCN 2023年07月03日vol.1975掲載
(取材・文/堀 茜)
制度とともに管理職の意識改革を
人材不足はこの先、より深刻になっていくことがデータから裏付けられている。内閣府の推計によると、15歳から64歳までの生産年齢人口は、2065年に約4500万人となり、20年より約2900万人減少する見通し。構造的な少子高齢化の中で、あらゆる業界で人手不足がさらに問題となっていくことが予想される。働く人のキャリアとそれに関わる組織マネジメントを研究する青山学院大学経営学部の山本寛教授は、企業に求められる姿勢について「新卒採用が質・量ともに潤沢であればいいが、どこも採用はさらに厳しくなっていく。企業にとっては、今勤めている人に長く活躍してもらうことが重要」と指摘。「そのためには、従業員エンゲージメントをいかに高めるかが大切になる」と説明する。
企業の取り組みとして▼現状のどこに問題があるかを分析する▼改善策を立て実施する▼エンゲージメントが向上すると人材定着率も上がる──という循環を生み出すことが、業績の安定向上には欠かせないという。
さらに山本教授は「各企業が従業員の働きやすさを支援する施策を実施することは重要だが、もっと大切なのはそれを運用する上で、管理職の意識を変えることだ」と話す。
例えば、時短勤務が認められていたり、休暇制度があったりしても、その人がいないと仕事が回らない状況では安心して休むことができない。山本教授は「急に仕事を休まざるを得ないときに、休む人が肩身の狭い思いをしているのが実態。部署内のマルチタスクを進め、互いにサポートし支えあえるような職場の雰囲気づくりをしてほしい」と管理職のマネジメント力向上をかぎとして挙げる。
育児休業については、岸田文雄首相が3月、「男性の育児休業取得率を25年度に50%、30年度に85%まで引き上げることを目指す」と表明。男性の取得率向上に取り組む企業も増加している。男性の育休について山本教授は「育児休業の取得がキャリアにマイナスになるようでは取得は進まない」とみる。「一歩も二歩も踏み込んで、育休をよりプラスに捉えるような人事評価をしていくことは、従業員に大きなインパクトを与えるので、実施する企業が出てくることを期待したい」とみている。
IT業界は昔から、人材の流動性が比較的高いと言われている。ある意味、その高い流動性は企業にとっては優秀な人材を得るチャンスを広げ、労働者にとってはキャリアアップしやすい環境を生み出しているとも考えられる。しかし、近年の旺盛なIT需要に応え、ビジネスを成長させる観点から、人材をいかに定着させるかは、大きな経営課題となりつつある。各社はどのような対応を図っているのだろうか。
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