Special Feature

建設DXで課題を解決へ 大きなポテンシャルに注目

2023/06/05 09:00

週刊BCN 2023年06月05日vol.1971掲載

 さまざまな業界でDXが加速している。建設業界も例外ではなく、業界が抱える多くの課題を解決するためには、多様なデジタル技術を積極的に活用していくしかないとの声が高まっている。アナログな業務が根強い業界であるだけに、越えなければならないハードルは高いが、ITベンダーは、大きなポテンシャルを秘めた市場に注目している。建設DXに関する最新動向と各社の取り組みを紹介する。
(取材・文/袖山俊夫  編集/齋藤秀平)
 

アクセンチュア
一気に広がる可能性に期待

 建設業界では、就業者数が減少傾向にある。加えて、ほかの産業に比べて高齢化が加速している。一方で、今後の市場規模は横ばい推移するとみられている。こうした動向を踏まえ、アクセンチュアビジネスコンサルティング本部ストラテジーグループの福田隆之・マネジング・ディレクターは「より少ない人数でやりくりしていくためには、生産性を上げなければならない。また、他産業からの流入を容易にするためにも、業務の標準化やデジタル化によって仕事の難易度を下げていくことが不可欠になる」との見方を示す。
 
アクセンチュア 福田隆之 マネジング・ディレクター

 その上で「ほかの業界と比べて建設業界はDXの取り組みが遅れているが、見方を変えればチャンスがあるといえる」とし、「最大の利害関係者であり、顧客でもある政府が、DXに向けて動き始めた。そこに向き合っている業界として、自分たちの問題として捉えないといけなくなっている」と説明する。

 DXの必要性は業界内でも認識されつつあるが、業界特有の慣習を変えるのは簡単ではないようだ。福田マネジング・ディレクターは「DXを進めていくとなると、規格化とデータドリブンに向き合わざるを得ない。それは、長く建設業界で一般的とされてきた経営管理や組織文化の変革に挑むことにつながる」と指摘する。

 では、建設DXを成功させるために、各企業はどのような取り組みを進めればいいのか。福田マネジング・ディレクターは「建設業は一品生産ゆえに、データ分析を行う価値がないと思われがちだ。しかし、可能な限りで規格化し、データに基づいて標準形からのズレをあぶり出し、改善につなげることが成功のポイントになる」と話す。

 現在、業界内では大手を中心にDXを目指す動きが広がっているという。福田マネジング・ディレクターは、先進事例の一つとして、同社が提供するデジタル活用プラットフォーム「SynOps」を導入し、業務の自動化・標準化やデータの可視化を図っている準大手ゼネコンのインフロニア・ホールディングス(HD)のIT・DX戦略を示す。

 インフロニアHDの取り組みについて、福田マネジング・ディレクターは「生産情報データを収集・分析し、現場にフィードバックしていくために、プロセスの標準化・共通化を掲げ、本気で現場を変えていこうとしている」と解説する。

 さらに「最終的な達成目標は、一人当たりの売上高の向上と発注原価の適正化、一般管理費の削減の3点。POCレベルにとどまらず、リスクを取ってでも現実のオペレーションに踏み込んでいる点で他社と大きく異なる」と強調。「一定の時間はかかるだろうが、インフロニアHDの取り組みで成果を見せられれば、建設DXが一気に広がる可能性があり、ITベンダーにとっては大きなビジネスチャンスに成り得る」と期待を寄せている。
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