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野村総合研究所のイノベーション・プログラム、650人余りの起業家を支援 金融機関を軸に地域産業を創り出す

2023/03/16 09:00

週刊BCN 2023年03月13日vol.1960掲載

 野村総合研究所(NRI)は、地域産業の創出を促す「イノベーション・プログラム」を通じて、過去8年間に起業家650人余りを支援し、約140件の新規事業構想、25の新会社の立ち上げに関与してきた。イノベーション・プログラムの狙いは「ゼロからイチを創り出す起業家」の発掘にある。事業にはヒト・モノ・カネが必要になるが、モノについては地域ならでは観光や農林水産の資源があり、カネについても地銀や信金がある。絶対的に不足しているのは「起業するヒトだ」と、同プログラムを立ち上げた齊藤義明・未来創発センター2030年研究室長は話す。NRIが取り組む地域の産業振興をレポートする。
(取材・文/安藤章司)
 

「ゼロからイチ」を創出

 NRIが地域産業を創り出す際に「ゼロからイチを創り出す人材」を重視するのは、ヒト・モノ・カネの中で、“ヒト”である起業家が圧倒的に少ないからだ。すでにある事業を大きく育てたり、他の地域の成功モデルを横展開したり、市場のニーズを的確に捉えたりする経営者は存在しても、そうした人材だけで「新しい産業を生み出すには力不足ということがNRIの『2030年研究室』の研究によって明らかになった」と、12年に同研究室を立ち上げた齊藤室長は話す。
 
齊藤義明 室長

 2030年研究室は、地域産業の革新者となるイノベーター(起業家)を見つけ出し、ネットワーク化することから始めた。地域に点在する100人のイノベーターを調査し、イノベーションのパターンや障壁となっている部分を調べたところ、「ゼロからイチを創り出す」というイノベーター支援の枠組みが十分に機能していないことが明らかになった。

 市場規模が限られている地域では、市場のニーズよりも起業家のやりたいこと、情熱を注ぎやすい対象、願望の実現といった動機づけのほうが、「ゼロからイチを創り出すような起業に結びつきやすい」と齊藤室長は指摘。だが、そうした「起業家個人の願望には、金融機関や経営コンサルタント、投資家は手を差し伸べにくいのが実情」だという。NRI自身もSIerとしてユーザー企業のさまざまな課題を解決しているが、市場ニーズよりも情熱を優先する起業家への支援は、「SIerが得意とするような課題解決型のアプローチにそぐわない」と齊藤室長は指摘する。

 そこで、15年にスタートした「イノベーション・プログラム」では、地場の銀行や信金、自治体、商工会などを巻き込みつつ、地域の起業家同士を結びつけてチームをつくり、熱量を最大限に引き出して事業化までこぎ着ける支援を重点的に行うことにした。
 

 アイデアソンや起業コンテストを開催する地域は比較的多く見られたが、この方式では「大都市部を除いて2回目以降、応募する人がいなくなるケースが散見された」(齊藤室長)という。人材が非常に限られた地域で継続的に起業家を集め続けるには、起業家を発掘して、情熱をくみ取り、事業化へと結びつけていく支援が欠かせない。投資してすぐに回収できないとしても、中長期的に見れば地域産業を支える人材層を厚くし、産業の集積度を高める効果が期待できると、全国を行脚して説得して回った。
この記事の続き >>
  • 地元金融機関との関係を重視
  • 地域資源を活用した起業が相次ぐ

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