Special Feature
「地方版IoT推進ラボ」が目指す地域の経済発展 産業集積や人材育成などで独自施策を展開
2022/10/17 09:00
週刊BCN 2022年10月17日vol.1942掲載
(取材・文/落合真彩 編集/齋藤秀平)
デジタルでコミュニティを形成
IoT推進ラボは2015年、日本企業のIoTやビッグデータ、AIの活用を促すことを狙いにスタートした。その流れに乗り、さらなるIoTやAIの利活用と、地域での新たな価値創造に向けたIoTプロジェクト創出のために生まれたのが「地方版IoT推進ラボ」である。経産省とIPAは、「地域性」「自治体の積極性と継続性」「多様性と一体感」の3点を選定基準とし、16年7月~今年3月まで、7回にわたって全国106地域を選定。選定を受けた地域は、ロゴマークの使用やIoT推進ラボ会員などへの広報が可能になるほか、プロジェクトの創出や推進に資するメンターの派遣を受けることができる。
助成金や補助金などの金銭的支援はないため、各地域には、金銭支援に頼らない事業設計が求められる。では、この取り組みは地域にとってどのようなメリットがあるのか。
地方版IoT推進ラボ誕生の背景について、経産省商務情報政策局情報技術利用促進課の大西啓仁・室長は「経産省では、担当者の異動スパンが短いこともあり、施策が短期・単発の実施になりがちだった。また、補助金ありきの施策では、補助金を目当てに自治体や企業が集まってきて、期間が終わると取り組み自体が消えてしまうという課題もあった」と指摘する。
その上で「本当の意味で現場の声を踏まえた施策をしようと考え直し、地方版IoT推進ラボは『継続性』に重きを置いた取り組みとした。当初は『補助金なしで自治体や企業が集まるわけがない』と笑われたが、いざ始めてみると、多くの自治体が手を挙げ、6年以上経過した今も続いている。経産省としては異例の取り組みとなっている」と話す。
金銭ではなく、「思い」や「志」に根差した取り組みともいえる地方版IoT推進ラボ。継続できている理由として、大西室長は「デジタルという横串で、地域が一体的なコミュニティを形成している点が一番の魅力」だと語る。
ただ、地域ごとに取り組み内容や温度感に濃淡がある点が課題だ。経産省は昨年から、テーマ別意見交換会を開催し、情報共有やラボ間交流の機会を設けている。
地域がラボの取り組みを進める上でのポイントとして、同課の紫芝聡・係長は、「キーパーソンの存在」を挙げ、大学教授やコンサルタント、金融機関の職員など、地域のステークホルダーと密に連携できる人物をいかに見つけられるかが大切だと強調する。
ITツールの活用については、地方の中小企業に対し大手SIerが入り込もうとすることが多いが、地域に信頼され定着するためには、キーパーソンを介して関係を構築することが先決となる。紫芝係長は「地域は、いきなり外部の方を受け入れることに抵抗を感じる傾向がある。まずは地域との関係を持った上で、企業を支援するプロセスを踏むことが重要。ラボは地元の企業や金融機関、キーパーソンが参画するコミュニティなので、地域との関係構築のために活用すると効果的だ」と助言する。
経産省は現在、地方版IoT推進ラボのアップデート版である「地域DX推進ラボ」の制度化に向けて検討を進めている。IoTからDXへ、より多様で幅広いプロジェクトを地域が行えるような仕組みを整備することが狙いだ。
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