Special Feature

実現近づく量子技術の産業化 日本は世界をリードできるか

2022/08/29 09:00

週刊BCN 2022年08月29日vol.1936掲載


 量子技術の産業化が実現に近づきつつある。内閣府は2022年4月、「量子未来社会ビジョン」を発表。量子技術を社会経済システム全体に取り込むことや、1000万人が量子技術を利用する環境を国内で実現する方針などを掲げた。一方で、国内主要コンピューターメーカーは、量子コンピューターの実用化に向けた取り組みを強化。量子技術の活用が現実的になってきた。日本が世界をリードするために、何が必要なのか。量子技術を取り巻く動きを追った。
(取材・文/大河原克行  編集/藤岡 堯)

環境変化に合わせたビジョン

 政府は20年1月に「量子技術イノベーション戦略」を発表している。量子に関する技術ロードマップや量子拠点整備などを打ち出し、量子技術の研究開発の道筋を示した。それから2年後の22年4月、内閣府は新たに「量子未来社会ビジョン」を公表した。

 量子コンピューターを支える基盤技術の大幅な進化や、量子産業における国際競争の激化のほか、ウクライナ情勢の影響で量子技術を経済安全保障上の機微技術と位置づけるなど、量子技術を取り巻く環境が目まぐるしく変化しており、それを捉えた内容にしたという。

 基本的な考え方として▽量子技術を社会経済システム全体に取り込み、従来型技術システムとの融合によって、日本の産業の成長機会の創出や社会課題の解決に取り組む▽最先端の量子技術の利活用促進▽量子技術を活用した新産業/スタートアップ企業の創出・活性化──を盛り込んだ。

 内閣府の量子技術イノベーション会議委員であり、量子戦略見直し検討ワーキンググループの主査を務める伊藤公平・慶應義塾長は、「量子技術イノベーション戦略を見直すために議論をスタートさせたが、結果としては、量子技術イノベーション戦略を維持しながら、新たに量子未来社会ビジョンを発表し、両輪で量子技術に力を入れることになった」と話す。

 さらに、伊藤塾長は「インターネットの普及がそうであったように、人口の10%が量子技術を利用すると、そこから爆発的に利用が広がる。これをベースに、Quantum Transformation(QX)が進み、50兆円規模の産業が創出されることになる」とも指摘する。
この記事の続き >>
  • 産業化へ民間も団結 22年5月に一般社団法人「量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)」が発足
  • 国内メーカーの開発意欲は高く
  • 量子コンピューターのおさらい
  • ロードマップを拡充 米IBM

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