Special Feature
新型コロナ禍ですべてが変わったPC市場の現在と未来
2021/07/29 09:00
週刊BCN 2021年07月26日vol.1884掲載

「想定外」。2020年から現在に至るPC市場をめぐる環境を一言でまとめるとこう表現できるだろう。当初見込まれていたWindows 7の更新需要による反動は、新型コロナウイルス感染拡大がもたらした新たな需要でかき消され、PCの使い方そのものが大きく変わりつつある。一方、世界的な半導体不足が供給体制に与える影響は色濃く影を落とし、市場全体には不透明さも漂う。週刊BCNはこの秋、創刊40周年を迎える。40周年記念特集の第1弾では、本紙が長年見つめてきたITビジネスの「1丁目1番地」とも言えるPC市場について、現在と未来を占う。
(取材・文/藤岡 堯 編集/日高 彰)
話は19年にさかのぼる。この年は「Windows 7」の延長サポート終了前の買い替えや消費増税前の駆け込み需要が発生し、PC市場は過去最大規模となる出荷数を記録。20年はその反動減が見込まれていた。しかし、ふたを開ければ、結果はそれとは真逆となった。MM総研の調査によると20年の国内PC出荷台数は1591万台(前年比1.3%増)で、1995年の調査開始以来最高だった19年を上回り、過去最高を更新した。
topic1 GIGAスクールとテレワークが牽引した20年度
台数増に寄与も価格競争は厳しく予想に反する台数増の要因は、コロナ禍による市場の激変だ。小中学校において児童生徒1人あたり1台ずつのPCを整備する文部科学省の「GIGAスクール構想」はコロナ禍を受け、当初計画より前倒しで展開され、教育用の端末が大きく伸びた。加えて、外出自粛を受けたテレワークの急速な拡大も追い風となった。GIGAスクールとテレワーク、性格の異なる二つの需要に対し、メーカー各社はさまざまな戦略を繰り広げた。
レノボ・ジャパンは20年、国内PC市場でトップに立った。好調の背景はGIGAスクール市場での飛躍にある。同社の安田稔・執行役員副社長は「GIGAスクールの貢献は大きかった。ゲームチェンジのきっかけになった」と強調する。
国内生産をはじめとする供給面での改善の積み重ねが奏功したほか、パートナーとの協業によるソリューション提供が後押しとなったとし、「(文教市場向けの)管理ツールやコンテンツを持っているパートナーは教育委員会へのパイプも太い。戦略がうまくはまった」(安田副社長)と胸を張る。
一方で、政府が端末1台当たりの補助上限を4万5000円に定めたことが結果的に価格競争を加速させた面もある。
あるメーカーは「(GIGAスクールは)価格競争に陥った部分があり、体力を削るビジネスになってしまった」と指摘し、別の関係者からは、利幅が小さいことから地場のパートナーにしわ寄せが及んだとの声も漏れる。
各メーカーにとっては明暗が分かれる結果となったが、PC市場全体にとっては子どもたちに広くPCがいきわたったことを評価する向きは多い。日本HPでパーソナルシステムズ事業統括を務める九嶋俊一・専務執行役員は「(GIGAスクール向け製品のスペックは)予算の中で“better than nothing”というものだが、読み書きレベルのようなものであり、登竜門としてはいい。デジタル後進国の日本において、限られた予算の中で正しい選択だったのではないか」と話す。デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部ビジネス・ディベロップメント事業部の飯塚祐一氏も「ITの民主化の基礎に取り組んだことは素晴らしい。現在のPC市場のように成熟していくためには、継続的な製品の供給が重要」とし、文教市場の成長に期待を寄せつつ、学校のIT化を一過性のもので終わらせず、持続可能なビジネスとなるよう中長期的な視野をもって取り組む必要性を強調する。
21年度は高校向けGIGAスクールも控えるが、高校向けの補助は低所得者層の購入に限られることから、各メーカーとも小中学校向けほどのインパクトはないとの見方だ。ただ、生徒が個人所有の端末を持ち込むBYOD(Bring Your Own Device)や、教育委員会や学校側が機種を推奨し、個人で購入するBYAD(Bring Your Assigned Device)の動向に注目するメーカーは多い。DynabookはBYODをターゲットにしたWeb販売の仕組みを強化していく考えを示す。同社の荻野孝広・国内マーケティング&ソリューション本部副本部長は「学校からも要望を受けている。高校向けのGIGAスクールをしっかり取り込んでいく」と力を込める。
企業が性能不足に気付き始めた
GIGAスクールと並んで市場をけん引したのがテレワーク需要だ。テレワークの広がりを受け、ノートPCを中心にニーズが高まった。とりわけモバイルノートへの関心は高く、電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、20年度(20年4月~21年3月)の国内出荷台数は前年のおよそ3.4倍、出荷金額で6割増となった。これはGIGAスクールの影響も当然大きいが、廉価なエントリー機種が中心であるにもかかわらず、金額が6割増となったところをみると、ある程度は高価格帯も伸びたと推測できる。持ち運ぶための軽さはもちろん、オンラインでビデオ会議をしながら業務ソフトを動かすなど、テレワークを円滑に行うにはある程度スペックの高さが求められるため、高機能モバイルを選ぶ動きがみられた。
ここで存在感を示すのが、高機能モバイルを主戦場とするパナソニックとVAIOだ。パナソニックコネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部で東アジア営業を統括する三宅貴彰氏は「PCの使い方が(コロナ前の)3年前からがらっと変わった。高機能モバイルを一つのポジションとしているわれわれには追い風となっている」と手応えを示す。VAIOで法人営業本部の本部長を務める宮本琢也・執行役員も「会社のデスクにあるエントリークラスのA4ノートを持ち帰らせて、カメラを買わせて、オンライン会議をしてとなると、(使用までのプロセスが煩雑で)使い物にならないのがわかった1年だったと思う。この機にしっかりとしたデバイスを購入したい顧客が増えているようだ」と分析する。
また、内蔵カメラはもちろん、マイクやスピーカーなど、これまではあまり着目されていなかった機能もチェックされているという。加えて、画面サイズではこれまでモバイルノートの主流だった12~13インチに加えて、14インチの機種が新たな商機を生むとにらむメーカーが多い。コロナ収束後にはオフィス勤務とリモートワークの使い分けが進むとみられ、持ち帰りしやすく、ある程度大きい画面で作業ができる点にニーズがあるとする。
2社以外のメーカーでもテレワークを機にPCの使い方が大きく変わったとみるメーカーは多い。日本HPの九嶋専務は「数年前には『PCがいらなくなる』と言われていたが、コロナを経験したことで、PCが必要不可欠となった。PCがより深く使われるようになっている」と話す。
市場全体で見ると、徐々に高機能・高付加価値製品の販売が増えるとの予想も広がっている。パナソニックの三宅氏は「これまで遠くにいたものが交わってきたと感じられる」と述べ、高価格帯市場に他メーカーも興味を示していることを示唆した。
調達側の反応も変わってきている。実際、企業の調達部門が示す要件定義において、求められるスペックが上がってきたとするメーカーもあった。さらに、これまではカタログスペックやコスト面のみで選定するケースも少なくなかったが、実際にメーカー担当者からの説明や、実機の試用を要望する顧客が増えているそうだ。「説明して、費用対効果を考えてもらえれば、課題を抱えている顧客には評価してもらえる」(VAIOの宮本執行役員)。丁寧に説明を重ねることで、高価格帯の製品でも導入につなげられる。そんな実感がメーカー側にも広がっているようだ。
コロナ禍は運用や保守、廃棄に至るまでのライフサイクルマネジメント(LCM)、キッティング支援など関連するソリューションへのニーズも広げた。リモートワークの増加で、顧客企業のIT部門や情報システム部門の負荷が高まる中、故障対応やトラブルへのサポート体制も付加価値となってくるだろう。
topic2 半導体不足でブレーキも市場ニーズは底堅く
自動車メーカーと取り合いにGIGAスクール構想とテレワーク、二つの需要で沸いたPC市場だが、足元を見ると、21年4、5月の国内出荷台数、出荷金額はいずれも前年同月を下回った(JEITA「2021年度パーソナルコンピュータ国内出荷実績」による)。GIGAスクール需要が一段落した反動もあるが、メーカー各社は世界的な半導体不足による供給の遅れが減速要因とみる。
「半導体の生産ラインを自動車メーカーなどと取り合っている。グローバルの半導体需要にサプライチェーンが間に合っていない。今まで想像しなかったところまで、ボトルネックが広がっている」。レノボ・ジャパンの安田副社長は危機感を募らせる。
CPUや液晶ディスプレイは慢性的に不足している状況が続いているが、ここに至って深刻化しているのは、オーディオチップやWi-Fiモジュール、バッテリーコントローラーなど、幅広い分野で使用される汎用的な部材だといい、その影響は周辺機器にも及ぶ。「あらゆるものが連鎖し、PCは納入できても、ケーブルが足りない、マウスが足りないとなる」(デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部クライアント製品本部 三井唯史・フィールドマーケティング本部長)。顧客によってはすべての製品を同時に受け取りたいケースもあり、出荷の伸び悩みにつながっている。
調達面では、「サプライヤーと一緒になんとか部材を確保し、需要を満たせるよう頑張っている」(日本HPの九嶋専務執行役員)と言うように、グローバルに生産拠点を持つ大規模メーカーが強みを発揮する一方で、小規模メーカーも健闘している。パナソニックの三宅氏は「キーパーツの部分は戦略的に調達しており、パーツメーカーともコミュニケーションをとっている。楽な状況ではないが(供給は)継続できている」と強調する。VAIOの宮本執行役員も「しっかりした製販体制があり、(顧客の希望する)納期で応えられる。今は他のメーカーよりアドバンテージがある」と自信を見せる。大規模メーカーは調達力に優れるものの、生産量も多く、余波を受けやすい。生産ボリュームが少ないメーカーだからこそ小回りが利く面もあるようだ。
半導体不足の展望に関しては、各社とも「楽観できない」「いつまで続くかわからない」と口をそろえる。ひっ迫によるコスト上昇への懸念も根強く、長期にわたって市場の足を引っ張り続けるおそれも否定できない。
テレワーク需要、継続の兆し
眼前には半導体不足という問題が横たわるものの、中期的な市場動向について各社は「デマンド自体は落ちていない」「ニーズが減っている感覚はない」など、底堅く推移するとの認識で一致している。
テレワーク需要は一巡したとの声もあるが、「テレワークというキーワードでできることはまだまだある」(パナソニックの三宅氏)と語るように、各メーカーは根強いニーズが残ると考えている。テレワークの体制を整えきれていない企業も少なくないほか、テレワークを実際に導入して初めて、性能不足などの課題が浮き彫りとなり、さらに体制を充実したい顧客も出てくるとみられ、しばらく市場は動きがあるとの判断だ。
また、デル・テクノロジーズの三井本部長は、今年度に入って企業のPC投資に関する「検討期間が延びた」と感じているという。急いでテレワーク環境を整備する段階は昨年度で終わり、アフターコロナやハイブリッドワークを見据えて、あるべきワークスタイルとそれに適したPCを慎重に見極めたいという企業の姿勢が見え隠れする。前述の半導体不足とあいまってこの夏の法人向けPC市場は低調に推移するおそれがあるが、メーカーや販売店にとっては、じっくりと高付加価値製品の魅力を伝えられる好機でもある。
IDC Japanが5月に発表したレポートによると、20年における国内のテレワーク導入企業は19年の62万社から161万社に拡大し、実施率は42.6%(19年は16.3%)になったと推計する。コロナ収束後は、一時的にテレワークは縮小すると予測するものの、テレワークの活用によって、従業員が望む多様な働き方に対応したり、経費削減につなげたりとメリットを実感した企業も多く、23年以降はテレワーク実施企業が再び増加すると予測しており、商機は十分とみることもできる。
さらに、テレワークや外出自粛によってPCとの接触機会が拡大した結果、スマートフォンやタブレット端末では十分にこなせない作業があることに気づく消費者も多く、メーカーからは「PCが復権した」(Dynabookの荻野副本部長)という声も聞こえる。これまでPCは各家庭に1台というのが一般的だったが、今後は「スマホのように“一人1台”となる可能性もある。市場そのものは大きくなっていく」(日本HPの九嶋専務執行役員)との期待も膨らむ。
Windows 11の発表を受け、Windows 10のサポート終了が25年10月に決まった。Windows 7から10へのマイグレーション時と同様にある程度のリプレース需要も見込まれ、中期的には堅調なニーズが継続するとの予感も漂っている。

「想定外」。2020年から現在に至るPC市場をめぐる環境を一言でまとめるとこう表現できるだろう。当初見込まれていたWindows 7の更新需要による反動は、新型コロナウイルス感染拡大がもたらした新たな需要でかき消され、PCの使い方そのものが大きく変わりつつある。一方、世界的な半導体不足が供給体制に与える影響は色濃く影を落とし、市場全体には不透明さも漂う。週刊BCNはこの秋、創刊40周年を迎える。40周年記念特集の第1弾では、本紙が長年見つめてきたITビジネスの「1丁目1番地」とも言えるPC市場について、現在と未来を占う。
(取材・文/藤岡 堯 編集/日高 彰)
話は19年にさかのぼる。この年は「Windows 7」の延長サポート終了前の買い替えや消費増税前の駆け込み需要が発生し、PC市場は過去最大規模となる出荷数を記録。20年はその反動減が見込まれていた。しかし、ふたを開ければ、結果はそれとは真逆となった。MM総研の調査によると20年の国内PC出荷台数は1591万台(前年比1.3%増)で、1995年の調査開始以来最高だった19年を上回り、過去最高を更新した。
topic1 GIGAスクールとテレワークが牽引した20年度
台数増に寄与も価格競争は厳しく予想に反する台数増の要因は、コロナ禍による市場の激変だ。小中学校において児童生徒1人あたり1台ずつのPCを整備する文部科学省の「GIGAスクール構想」はコロナ禍を受け、当初計画より前倒しで展開され、教育用の端末が大きく伸びた。加えて、外出自粛を受けたテレワークの急速な拡大も追い風となった。GIGAスクールとテレワーク、性格の異なる二つの需要に対し、メーカー各社はさまざまな戦略を繰り広げた。
レノボ・ジャパンは20年、国内PC市場でトップに立った。好調の背景はGIGAスクール市場での飛躍にある。同社の安田稔・執行役員副社長は「GIGAスクールの貢献は大きかった。ゲームチェンジのきっかけになった」と強調する。
国内生産をはじめとする供給面での改善の積み重ねが奏功したほか、パートナーとの協業によるソリューション提供が後押しとなったとし、「(文教市場向けの)管理ツールやコンテンツを持っているパートナーは教育委員会へのパイプも太い。戦略がうまくはまった」(安田副社長)と胸を張る。
一方で、政府が端末1台当たりの補助上限を4万5000円に定めたことが結果的に価格競争を加速させた面もある。
あるメーカーは「(GIGAスクールは)価格競争に陥った部分があり、体力を削るビジネスになってしまった」と指摘し、別の関係者からは、利幅が小さいことから地場のパートナーにしわ寄せが及んだとの声も漏れる。
各メーカーにとっては明暗が分かれる結果となったが、PC市場全体にとっては子どもたちに広くPCがいきわたったことを評価する向きは多い。日本HPでパーソナルシステムズ事業統括を務める九嶋俊一・専務執行役員は「(GIGAスクール向け製品のスペックは)予算の中で“better than nothing”というものだが、読み書きレベルのようなものであり、登竜門としてはいい。デジタル後進国の日本において、限られた予算の中で正しい選択だったのではないか」と話す。デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部ビジネス・ディベロップメント事業部の飯塚祐一氏も「ITの民主化の基礎に取り組んだことは素晴らしい。現在のPC市場のように成熟していくためには、継続的な製品の供給が重要」とし、文教市場の成長に期待を寄せつつ、学校のIT化を一過性のもので終わらせず、持続可能なビジネスとなるよう中長期的な視野をもって取り組む必要性を強調する。
21年度は高校向けGIGAスクールも控えるが、高校向けの補助は低所得者層の購入に限られることから、各メーカーとも小中学校向けほどのインパクトはないとの見方だ。ただ、生徒が個人所有の端末を持ち込むBYOD(Bring Your Own Device)や、教育委員会や学校側が機種を推奨し、個人で購入するBYAD(Bring Your Assigned Device)の動向に注目するメーカーは多い。DynabookはBYODをターゲットにしたWeb販売の仕組みを強化していく考えを示す。同社の荻野孝広・国内マーケティング&ソリューション本部副本部長は「学校からも要望を受けている。高校向けのGIGAスクールをしっかり取り込んでいく」と力を込める。
企業が性能不足に気付き始めた
GIGAスクールと並んで市場をけん引したのがテレワーク需要だ。テレワークの広がりを受け、ノートPCを中心にニーズが高まった。とりわけモバイルノートへの関心は高く、電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、20年度(20年4月~21年3月)の国内出荷台数は前年のおよそ3.4倍、出荷金額で6割増となった。これはGIGAスクールの影響も当然大きいが、廉価なエントリー機種が中心であるにもかかわらず、金額が6割増となったところをみると、ある程度は高価格帯も伸びたと推測できる。持ち運ぶための軽さはもちろん、オンラインでビデオ会議をしながら業務ソフトを動かすなど、テレワークを円滑に行うにはある程度スペックの高さが求められるため、高機能モバイルを選ぶ動きがみられた。
ここで存在感を示すのが、高機能モバイルを主戦場とするパナソニックとVAIOだ。パナソニックコネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部で東アジア営業を統括する三宅貴彰氏は「PCの使い方が(コロナ前の)3年前からがらっと変わった。高機能モバイルを一つのポジションとしているわれわれには追い風となっている」と手応えを示す。VAIOで法人営業本部の本部長を務める宮本琢也・執行役員も「会社のデスクにあるエントリークラスのA4ノートを持ち帰らせて、カメラを買わせて、オンライン会議をしてとなると、(使用までのプロセスが煩雑で)使い物にならないのがわかった1年だったと思う。この機にしっかりとしたデバイスを購入したい顧客が増えているようだ」と分析する。
また、内蔵カメラはもちろん、マイクやスピーカーなど、これまではあまり着目されていなかった機能もチェックされているという。加えて、画面サイズではこれまでモバイルノートの主流だった12~13インチに加えて、14インチの機種が新たな商機を生むとにらむメーカーが多い。コロナ収束後にはオフィス勤務とリモートワークの使い分けが進むとみられ、持ち帰りしやすく、ある程度大きい画面で作業ができる点にニーズがあるとする。
2社以外のメーカーでもテレワークを機にPCの使い方が大きく変わったとみるメーカーは多い。日本HPの九嶋専務は「数年前には『PCがいらなくなる』と言われていたが、コロナを経験したことで、PCが必要不可欠となった。PCがより深く使われるようになっている」と話す。
市場全体で見ると、徐々に高機能・高付加価値製品の販売が増えるとの予想も広がっている。パナソニックの三宅氏は「これまで遠くにいたものが交わってきたと感じられる」と述べ、高価格帯市場に他メーカーも興味を示していることを示唆した。
調達側の反応も変わってきている。実際、企業の調達部門が示す要件定義において、求められるスペックが上がってきたとするメーカーもあった。さらに、これまではカタログスペックやコスト面のみで選定するケースも少なくなかったが、実際にメーカー担当者からの説明や、実機の試用を要望する顧客が増えているそうだ。「説明して、費用対効果を考えてもらえれば、課題を抱えている顧客には評価してもらえる」(VAIOの宮本執行役員)。丁寧に説明を重ねることで、高価格帯の製品でも導入につなげられる。そんな実感がメーカー側にも広がっているようだ。
コロナ禍は運用や保守、廃棄に至るまでのライフサイクルマネジメント(LCM)、キッティング支援など関連するソリューションへのニーズも広げた。リモートワークの増加で、顧客企業のIT部門や情報システム部門の負荷が高まる中、故障対応やトラブルへのサポート体制も付加価値となってくるだろう。
この記事の続き >>
- 半導体不足でブレーキも市場ニーズは底堅く テレワーク需要、継続の兆し
- 新たな活用シーンやサービスに商機を見出す 立ち上がるエッジ端末市場 LCMサービスが新たな収益源に
- グーグルの動向、鍵握る 高まるグーグルのPC市場での存在感
- 需要と供給、両面で激変 転換期迎えるPC市場
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料) ログイン会員特典
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。 - 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…
