別路線で戦う
コダック
スキャンの派生業務を
拡充へ 一方、プリンタメーカーとは一線を画すコダックでは、金融機関などを中心とするユーザー企業が保有するドキュメントをスキャンして電子化するサービスなどの「コダックBPOサービス」を、三井倉庫との協業で、7年ほど前から提供している。同サービスは、同社の高機能スキャンをメイン機として、新たな資産や設備、人的投資の負担をかけずにデータ入力やバックオフィスのビジネス・プロセスを「アウトソーシング」する。
プリンタメーカーでいえば、「オフサイト」の領域にあたる。金融機関のクレジットやカードの新規申込書をスキャンして電子化管理するほか、郵送業務までを丸ごと請け負うものだ。スキャン領域から派生し、最近では、「コールセンター業務」までを扱う。ユーザー企業などが本業に注力できるように、コア業務のほか、付随業務や季節変動性のある業務までを担うのだ。元々はマイクロフィルムの保管・管理などを行うサービスから派生したもので、プリンタメーカーの領域と異なると思われていたが、最近では「富士ゼロックスと競合するケースが増えた」と、谷島一哉・BPO営業本部BPO営業部長は危機感を抱いている。
コダックが最近手がけた「BPOサービス」としては、化学品商社大手の長瀬産業の事例がある。
同社に保存されている1万件以上の契約書を電子化し、管理をアウトソーシングで請け負っている。「コダックiセンター」と呼ぶスキャン作業所でスキャンしてデータベース化し、検索を容易にしたほか、三井倉庫の倉庫で紙契約書を保管する。
長瀬産業の社員は、Webサービスで契約書を全国どこからでも検索できる体制を敷いている。谷島部長は「ITに関係しない人間が行う作業も含め、業種や作業対象を増やしていく」という。2011年以降は、紙印刷需要の低迷に喘ぐ印刷業者とも手を組み、サービス内容を拡充する計画だ。
その他メーカーと
販売会社の動き
検討を開始した
シングル機メーカー 「マネージド・サービス」のもつポテンシャルは、コピーメーカーに限らずシングルファンクションプリンタを販売のメイン機に据えるメーカーでも高まっている。
LED(発光ダイオード)プリンタを市場に投入するOKIデータは、「世界や国内でも、案件ベースでは似た仕組みが提供されている」(杉本晴重・社長CEO)と、「MPS」を視野に入れたソリューション展開を模索中だ。
エプソン販売は「将来は、集中管理型の提供方法を視野に入れる」(宮西徳郎・マーケティングセンタープロダクトマーケティング部部長)と、現在はプリンタとMFPを分散配置し、コスト削減や環境配慮などを訴求する展開をしているが、「マネージド・サービス」に対する研究を始めているようだ。基幹系システムを含めたプリンタ環境を提案するNECも「これから検討するが、クラウド時代ですべてのITインフラがサービス化の道を歩む」(岡田靖彦・ディスプレイ・ドキュメント事業部長)と、「MPS」などの検討開始を示唆している。
一方、メーカー側だけでなく、プリンタやMFPを販売するSIerでは、「マネージド・サービス」の普及で機器販売が打撃を受けると懸念しつつ、自社でプリンタ関連のアウトソーシングを開始する傾向にある。
大塚商会は3年前から、プリント枚数診断サービス「MIB(Management Information Base)アナライザ」や「複合機・プリンタ活用アドバイザリーサービス」と呼ぶ適正な出力環境の構築・運用・管理を無償のコンサルティングを提供している。「大規模案件で、他社の『マネージド・サービス』と競合するケースがあり、重要な大手顧客に対して、これを提供している」(天野亮・大手プロモーション課長)という。しかし、「この傾向がそれほど顕在化しているとは思えない」(同)と、いますぐにMFP販売を減少させる大きな要因になるとは考えていない。
ただし、富士ゼロックス、キヤノンMJ、リコーの大手3社は、「マネージド・サービス」の直系販社への展開を検討している。これが将来的に地場の大手事務機ディーラーに波及する可能性は否定できない。現在のオフィスプリンタ・MFPは、機器購入に伴うリース料のほかに、一般的には「コピーチャージ(パフォーマンスチャージ)」と呼ばれている出力枚数に応じた料金が加算されている。従来は、ユーザー企業がプリンタ機器をいったん導入すれば、プリントを出力し続ける限り「ストックビジネス」として、メーカーは売り上げが計上できていた。しかし、「マネージド・サービス」が拡大すれば、現在主力収益源のこのコピーチャージ・ビジネスでさえ、変更を余儀なくされる可能性がありそうだ。