いつも「あと一歩」が届かなかった。高校ではインターハイの予選、大学では箱根駅伝の予選、実業団ではニューイヤー駅伝の予選。いつもぎりぎりのところで本戦を逃した。ちょっとしたコンプレックスになっているという。「陸上を好きだと思ったことがない」と語るのも、そのためか。

3年と決めていた実業団を辞め、溝口大地はエンジニアになるためにテラスカイに転職した。実業団時代に情報システム部に在籍していたことが、少なからず関係している。「情報システム部といっても、伝票の整理が仕事。エンジニアではなかった。ただ、ITに興味があって、システム開発をやりたいと思っていた」。いくら人手不足でも、未経験者の採用には勇気がいる。ましてや、ずっと陸上が生活の中心。常識的には採用を見送ってもおかしくはない。
「おもしろいから採ってやる。入社後は自分の力で何とかしなさい」。それがテラスカイの答えだった。もちろん、知らないことばかり。入社後の2年間はとにかく勉強の日々だったが、「職場は聞けば教えてくれる人ばかりで助かった」と、当時を振り返る。現在では、クラウド型グループウェアの開発チームに所属し、モバイル版の開発を一人で担当。iOSのネイティブアプリ開発では、社内の第一人者になるまで成長した。「技術力が身についていくのを実感できるところが楽しい」と、エンジニアライフを満喫している。
陸上は、いまも続けている。「何をやってもフィニッシュの感動を超えない」と、結局は陸上が好きなのだ。15年4月に念願だった陸上部を立ち上げた。「チーム一丸となって襷をつなぐ。そこに感動が生まれる駅伝が一番楽しい。そのためにも、走れるエンジニアを増やして、レベルの高いところでやりたい」。目標はニューイヤー駅伝。走るエンジニア、溝口。頑張れ。(文中敬称略)
プロフィール
溝口 大地
溝口大地(みぞぐち だいち)
1987年10月21日生まれ。高校から陸上を始め、國學院大学と実業団の陸上部で活躍。テラスカイに転職後、エンジニアとなる。現在は製品開発部mitocoチームに所属し、クラウド型グループウェア「mitoco」のモバイル版を開発している。15年4月に陸上部を立ち上げ、主将に就任。新春恒例のニューイヤー駅伝を目指す。フルマラソンの自己ベストタイムは、2時間26分29秒。