狩野夏希が入社したSIerの日本情報通信(NI+C)では、長々と新人研修をする制度を数年前に廃止している。最低限のビジネスマナーを身につけた後は、その時々、最も旬な技術を実地で学ぶ。狩野はIBMのクラウドベースのミドルウェア群「Bluemix(ブルーミックス)」を使って、「いきなりアプリケーションをつくる」ところからスタートした。
しかし、社内の先輩をみるとアプリの開発は、要件定義から設計、開発、運用のプロセスを踏んでいる。「私の学んでいるBluemixは、従来的な意味での要件定義もなければ設計もない。さらにはプログラミングもなしで、いきなりアプリがつくれてしまう」。このことに、不安を覚えた。
狩野家三代に伝わる家訓は「自分の行動に責任をもつ」ことだが、こんなことで責任をもてるのだろうか──と。
ある日、先輩に相談したところ「従来型のシステム開発はオレたちがやるから、おまえは“クラウド・ネイティブ世代”の強さを磨いてくれ」と励まされ、俄然、意欲が湧いてきた。昨年秋に開催されたBluemixのコンテストでは、新人同士でチームを組んで防犯アプリをつくり入賞を果たし、IBMの本家米国まで研修に行っている。
訪問した客先で「Bluemixってどうなの」という話になったとき、狩野が決まって答えるのが「私でも問題なくアプリをつくれるほど使いやすいですよ」。その妙な説得感は顧客からも好評だとか。クラウド・ネイティブ世代であることに物怖じせず、自分の任されたパートに責任をもつことが、狩野のやりがいにつながっている。(文中敬称略)
プロフィール
狩野 夏希
狩野 夏希(かの なつき)
1992年、群馬県生まれ。15年、フェリス女学院大学文学部卒業。同年、日本情報通信(NI+C)入社。IBM Bluemixを活用したシステム・ビジネスを担当。