2013年に設立したベンチャー、データアーティストは、マーケティング関連のコンサルティングとソフトウェア開発をビジネスの柱に据えている。デジタル化によって、企業では社内外で取得するデータ量が増大している。一方、データの蓄積と分析コストは大幅に下がりつつあって、データにもとづいたマーケティングの活用が求められている。データアーティストはこのようなニーズに対応している。山本覚自身も、データサイエンティストとして顧客の大手企業の要望に応えている。ソフトウェア開発も堅調で導入企業が増えている。成長の原動力は、「論理化されたものを画一的にシステムで処理し、人が人にしかできないことに集中できるツール」。泥臭い、理屈で説明できない、人の「ひらめき」こそマーケティングでは重要と判断して事業を手がけてきた。
学歴を含めて、「完全な理系」と自己分析している。ただ、技術経営を学んだ際に「データサイエンスを中心とした企業がつくりたい」という気持ちが芽生えた。そこでまず、SEOサービスを提供するアイオイクスにプロダクトマネージャーとして参画。その後、アイオニクスのDLPO(データドリブンダイナミックランディングページ最適化)事業を移管する目的で設立された、データアーティストのトップに就いた。起業の夢がかなったわけだが、「今は当社のビジネスがグローバルでも通用するか試したい」と準備を進めている。
社名は、「データ(データサイエンス)」「アーティスト(ひらめき)」という相反する言葉を組み合わせた。学生時代、データサイエンスの虜になる一方で「バンド(ヴォーカル)に明け暮れていた」。この頃から、真逆のものが新しい世界をつくり出すと考えていたのだろう。(文中敬称略)
プロフィール
山本 覚
山本 覚(やまもと さとる)
1982年、埼玉県さいたま市生まれ。慶應義塾大学応用化学科卒業、慶應義塾大学大学院理工学系研究科分子化学専攻修士課程退学。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻卒業、東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻退学。11年、アイオイクスにプロダクトマネージャーとして参画。13年6月、データアーティストを設立、代表取締役社長に就任。現在に至る。