仕事が趣味で、1日24時間、不眠不休で仕事に没頭することがある。藤本陽介は、20代前半に、実力主義を貫く行動が評価され、ユニクロの若手店長に抜てきされた。数年にわたって計8店舗でスタッフを率いて、ていねいな顧客対応をすることで、販売を伸ばした。その後、企画に携わり、ヒット商品を生み出した。29歳の年収は「1000万円近かった」。あと一歩で絵に描いたような成功者になるというとき、藤本は思い切って会社に辞表を出した。
東京・大手町の高層ビル群から少し離れた内神田にある、プライム・ストラテジーのこぢんまりしたオフィス。環境は変わったが、目を輝かせて全力で仕事に取り組む藤本の姿勢は、何も変わっていない。藤本は現在、オープンソースのソフトウェア「WordPress」を使ってウェブ制作を手がける同社の最高執行責任者を務め、会社全般の運用を担当する。事業の拡大に向けた人員体制を整えるほか、月に約2週間、インドネシアへ出張してパートナーを獲得するなど、現地市場を開拓するための基盤を築いている。
「なぜユニクロを辞めたのか、みんな知りたがるけど……(笑)。ベンチャー企業に入って、ゼロから大きなビジネスをつくり上げたかった」。猛勉強してプログラミングのスキルを身につけ、可能性を感じたプライム・ストラテジーにアルバイトとして入社。この夏は活動拠点をジャカルタに移し、現地に密着して経済成長とともにウェブ制作の需要が急増しているインドネシアの事業を設立する。「忙しすぎて結婚できないのが最近の悩み」と苦笑する。目標は会社を上場させること。そのために、元ユニクロ店長は今日も寝ずに働く。(文中敬称略)
プロフィール
藤本 陽介
藤本 陽介(ふじもと ようすけ)
1979年生まれの山梨県出身。2002年、大学卒業後、ファーストリテイリングに入社し、衣料品を販売する「ユニクロ」で店舗運営や商品企画に携わる。その後、数社を経て、12年にプライム・ストラテジーへ入社。今夏、インドネシア・ジャカルタに移住することを予定しており、現地でインドネシア事業の拡大に取り組む。