伊藤忠商事の主要6部門のシステムの一つを構築・運用しているのが、コデックスというITベンチャーだ。知名度も実績も乏しい従業員9人の小さなソフト開発会社が、なぜ総合商社の基幹システムを担えるのか。それは、創業者であり社長の原本陽太が、商社の業務に精通しているからだ。
原本は、東京大学工学部を卒業して伊藤忠商事に入社。重油の取引業務をこなしながら、情報システムの企画立案に携わった。次いでインドのソフト開発会社に移籍して日本拠点を統括する。ここでERPを伊藤忠商事に導入したことが転機になる。「商社が求めるシステムをここで学んだ」。その後、コデックスを設立。OBとしての人脈もあるが、この案件で信頼を勝ち取り、それ以来、伊藤忠商事の重要システムの運用を担い続ける。
今夏、原本はある挑戦に打って出た。それが、中堅クラス商社向けのERPパッケージソフト「EX-TRADE」のリリースだ。「多くの中堅商社はどの業種にも適した汎用パッケージを使っている。だが、商社の要件に適合しないので、結果的に多額のお金をつぎこんでカスタマイズして利用している。われわれがもつ商社の業種知識とシステム開発ノウハウを利用したパッケージを提供すれば、チャンスがあるはず」。それがチャレンジの理由だった。
コデックスはこれまで、ほぼすべての売上高は伊藤忠商事からのものだった。だが、今後は違う。3年後には、売り上げを3倍に伸ばし、その3分の2を「EX-TRADE」関連で占める意気込みだ。大手商社を7年で辞め、「その後は流れに身を任せてきた(笑)」。だが、今は商社が使うERPの世界を変えることしか考えていない。(文中敬称略)
プロフィール
原本 陽太
(はらもと ようた)兵庫県生まれ。1993年3月、東京大学工学部船舶工学科卒業。同年4月、伊藤忠商事に入社。エネルギー部門で重油の取引業務に従事するとともに、情報システムの企画立案にも関わる。00年、ネットサービスのケアネットに移籍。01年、インドのソフト開発会社であるカルソフトに入社。03年、コデックス設立、代表取締役社長に就任。