20年近くネットワーク(NW)業界に携わっている。「昔は先輩が多かったが、今は年長者が数えるほどしかいない」と笑う。1990年に製品販売やインテグレーションを手がけるネットワークバリューコンポネンツ(NVC)を設立。この業界では知らない人がいないほどの“重鎮”となっている。
単に年を重ねたから重鎮になれるわけではない。ユーザーの視点で製品の目利きやインテグレーションをこなしてきたからこそ。常に先を見据えてきたことも特筆される。90年代前半の時点で、「ネットワークでデータだけでなく、音声や映像も流れるような世界を考えていた」。だからこそ、同社の扱う製品はユーザー企業から「最適な製品を揃えている」と評価され、迅速なサポートにも定評がある。「他社が扱っていないユニークな製品を提供しようとしているだけ」と淡々。
無名のネットワーク製品が同社の手にかかれば人気製品に変わってゆく。「NVCに扱ってもらえば、知名度が高まる」と、新興メーカーからの問い合わせが尽きない。
シスコシステムズが日本市場で確固たるポジションを獲得しようとしていた90年代、「シスコ販社が羨ましい」と感じたこともあった。しかし、「取扱い製品のブランド力はシスコ販社に負けるかもしれないが、インテグレーション力では絶対に負けない」。こうした意識が社内に根付いているからか、渡部をはじめとする全社員が、ここ一番という時に底力を発揮できる。
市場はスイッチのコモディティ化などで価格が下落している。決して良い状況とはいえないなか、営業利益が昨年度(07年12月期)に2倍以上、今年度に1.7倍程度を見込むなど順調な業績で推移している。
プロフィール
渡部 進
(わたなべ すすむ)■1949年1月19日、滋賀県出身。■72年、神戸大学経済学部卒業後、立石電機(現・オムロン)入社。生活用品や健康器具の販売促進や商品企画などを経験し、日本総合研究所に研究員として出向。その後、新規事業部企画室要員に就任。■86年に立石電機を退社し、米トーマス&ベッツ社の日本法人に入社。取締役営業本部長に就任する。■90年、ネットワークバリューコンポネンツを設立、現在に至る。