ウェブの表現力をはるかに上回る次世代のユーザーインターフェース(UI)を構築している。
オフィス通販のアスクルが今年11月、アドビシステムズの次期リッチクライアント基盤「AIR」を国内で初めて採用すると発表。システム構築を担当しているのが隈元章次率いるサイトフォーディーだ。
ソニーを辞めて起業。以来、エンドユーザーとの直接取引を心がけてきた。顧客と直接向き合いたかったからだ。ウェブ制作会社にありがちな広告代理店の下請け仕事は一切受けなかった。黒子に徹し、自ら宣伝もせず、メディアへの露出もナシ。知名度は乏しい。というより、“誰も知らない会社”といったほうがいいほどだ。自分たちの立ち位置や、どう売り出せばいいのか、「はっきり分からなかった」という事情もある。
これまでブラウザの枠の中だけでUIを開発してきた。「そこにAIRが出てきて、これからは違うと思った」。文字と静止画像のHTMLに、動画再生のFlashをかぶせ、便利ツールのガジェットを付け加える。これらを統合するのがAIRの実行基盤だ。「これで自分たちの立ち位置が明確になってきた」と感じた。
UIはユーザーの感覚に依存するところが大きい。「プロトタイプを叩き台にして、段階的に要件定義へと落とし込んでいく手法が有効」であることも分かってきた。従来の要件定義ありきの仕事の進め方では、「顧客が本当に求めているUIにたどり着けない」と、既存の構築手法を大幅に見直した。
まだまだ小さなクリエーター集団に過ぎない。だが、「飛躍できる環境が整ってきた」とみている。若手を育て、UI変革の旗振り役を果たしていく考えだ。(文中敬称略)
プロフィール
隈元 章次
(くまもと しょうじ)■1976年、鹿児島県生まれ。98年、東京商船大学(現東京海洋大学)卒業。■大学在学中からソニーでウェブサイトの制作に携わる。■00年、スタジオサイトフォーディー(現サイトフォーディー)設立。