低迷するスキャナ市場。だが、その厳しい環境でも伸びている製品がある。PFUの「ScanSnap S500」がそれだ。BCNランキングでは、売れ筋上位にランクイン。キヤノン、セイコーエプソンの2強がマイナス成長に甘んじるなか、PFUは前年比40%増で伸びている。そのけん引役がS500だ。このヒットの立役者が、スキャナと文字認識技術を追い続けて約20年の吉尾仁司氏。スキャンスナップには初代機から担当、S500にも吉尾氏の知恵が注ぎ込まれている。
大型の高額スキャナが主流だった1990年代後半、オフィスでも使える小型スキャナという新しいカテゴリの製品を提唱。スキャンスナップの前身である「Pragma」を98年に完成させた。ただ、単価の高い大型スキャナの売れ行きに悪影響が出る可能性を懸念する上層部の声が大きく、そのコンセプトは歓迎されなかった。
「『失敗したら責任を取れよ』と何度言われたことか。ただ、イメージ通りの製品を作れば必ず売れる自信があった」
紙の電子化が浸透し始めた。ただ、その普及速度は遅く、IT化の流れのなかで紙文書は蚊帳の外といった面も否めない。
「ITベンダーは、ずっと紙を無視し続けてきたと思うんです。『紙と電子の融合』を本気で提案しなきゃいけない。キーボード、マウスに次ぐ入力機器にスキャナを成長させたい。デスクの真ん中にスキャナを置いてもらいたいんです」
スキャナ一筋の職人(プロ)は、ヒット商品を生み出した今でも、やはり貪欲だ。
プロフィール
吉尾 仁司
(よしお ひとし)1962年、富山県生まれ。86年、東京理科大学電気工学科卒業後、ユーザック電子工業(現PFU)入社。一貫してスキャナと文字認識技術の研究開発業務に従事する。高価で大型のスキャナか一般消費者向けスキャナしかなかった市場にオフィスでも容易に利用できる“一般オフィス向けスキャナ”という新カテゴリを創造。98年にその第一弾製品である「Pragma(プラグマ)」を開発した。その後継として、01年7月、「ScanSnap(スキャンスナップ)」を開発。以来、すべての「ScanSnapシリーズ」開発に携わる。現在は販売推進を担当。業界団体活動にも精力的で、社団法人日本画像情報マネジメント協会の上級アドバイザー兼広報委員会委員長も務める。同団体の活動の一環として「e文書法」作成のアドバイスも行った。