(取材・文/大蔵大輔)
勝てる馬にしか賭けない
日本は先進諸国と比較してAIの利活用で遅れを指摘されがちだ。一例ではあるが、米Oracle(オラクル)の「職場におけるAI調査」によると、職場でAIを活用しているとの回答は日本が対象11カ国中で最下位。社会実装を加速しなければならないという切迫感はAI戦略2022の概要の文中からも感じられる。しかし、研究においても同じ状況というわけではない。鳥海教授は「米中が異様に進んでいるだけで、世界全体からすると日本の研究は遅れていない。そもそも米中は投資している金額が圧倒的なので、差があるのは当然だ」と語る。
問題視するのは研究の質ではなく環境だ。日本のAI研究は成果が期待できる分野に的を絞る「選択と集中」の戦略をとっており、その結果、研究の裾野が広がらないという状況が生まれている。
鳥海教授は「競馬なら『勝てる馬にしか賭けない』という状態。米中はどの馬が勝つか分からないからいろいろな馬に投資しているのに、日本は賭ける馬を絞っている。どの分野が強いのか、どの分野に投資を注力すべきか、という議論はあまり意味を持たない。面白い研究をやっている人がいるから、そこに投資してみようというくらいのスタンスでなければイノベーションが生まれるのは難しいのではないか」と懸念する。
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