その他

東京大学・鳥海研究室で聞く 日本におけるAI社会実装の現在地

2022/09/15 09:00

週刊BCN 2022年09月12日vol.1938掲載

 内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局は今年4月に「AI戦略2022の概要」を発表し、「社会実装の充実」を注力すべき項目として明記した。では、具体的に社会実装に向けてどのような取り組みが求められるのか。多数のAIベンチャーを輩出する東京大学の鳥海研究室でアカデミックとビジネスの両面から日本のAI研究が直面している状況について話を聞いた。
(取材・文/大蔵大輔)
 
左からoneroots 西口真央 代表取締役社長/CEO、
東京大学 大学院工学系研究科システム創成学専攻 鳥海不二夫教授、
Lightblue Technology 園田亜斗夢 代表取締役社長

勝てる馬にしか賭けない

 日本は先進諸国と比較してAIの利活用で遅れを指摘されがちだ。一例ではあるが、米Oracle(オラクル)の「職場におけるAI調査」によると、職場でAIを活用しているとの回答は日本が対象11カ国中で最下位。社会実装を加速しなければならないという切迫感はAI戦略2022の概要の文中からも感じられる。
 
鳥海不二夫 教授
東京大学 大学院工学系研究科システム創成学専攻。
計算社会科学に基づく社会システムの設計と人工知能技術の社会応用などの研究に取り組んでいる。
研究室から多数のスタートアップを輩出している。

 しかし、研究においても同じ状況というわけではない。鳥海教授は「米中が異様に進んでいるだけで、世界全体からすると日本の研究は遅れていない。そもそも米中は投資している金額が圧倒的なので、差があるのは当然だ」と語る。

 問題視するのは研究の質ではなく環境だ。日本のAI研究は成果が期待できる分野に的を絞る「選択と集中」の戦略をとっており、その結果、研究の裾野が広がらないという状況が生まれている。

 鳥海教授は「競馬なら『勝てる馬にしか賭けない』という状態。米中はどの馬が勝つか分からないからいろいろな馬に投資しているのに、日本は賭ける馬を絞っている。どの分野が強いのか、どの分野に投資を注力すべきか、という議論はあまり意味を持たない。面白い研究をやっている人がいるから、そこに投資してみようというくらいのスタンスでなければイノベーションが生まれるのは難しいのではないか」と懸念する。
この記事の続き >>
  • ソリューションありきのAI活用
  • 経営者自身がAI人材に

続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。

(登録無料:所要時間1分程度)

新規会員登録はこちら(登録無料)

会員特典

詳しく見る
  1. 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
  2. メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
  3. イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
    SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
  4. 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!
  • 1