ABテストで何をするかという点では、“誰に”対して実施すべきかを考える必要があり、加えて次に“どこで”テストを実施すべきかを考えていかなければならない。今回は、その点について触れていく。
最小の労力で最大の成果を得られる場所を見つける
結論を伝えると、どこでテストをするかは「インパクトが大きく労力が少ない場所」から手を付けるべきである。
例えば、1万人が通る場所で1%のCVR改善を行う場合と100人が通る場所で50%のCVR改善を行うのでは、どちらのインパクトが大きいのか。Webサイトの改善というのは短期的な効果ではなく一度改善すれば中長期で効果を見込める。そのため、改善率は少なくとも人通りが多い場所を改善した方が中長期のリターンは大きくなる。
もちろんインパクトは単純にアクセス数だけで考えるのではなく、いくつかの指標から成り立つ。特に、「訪問数が多い」「CVに近い」「離脱率が高い」「通過ユーザーCVRが高い」という四つの指標を用いてスコアリングした上でインパクトの高いページを優先順位付けすることが望ましいといえる。
ECサイトでいえば以下のような表を用いて改善優先順位の高いページを洗い出している。
実際は優先順位をもとに対象ページを洗い出した上で、さらに実施予定のABテスト案に対して、「実施工数」を4段階で評価し、「インパクト×工数」で最も改善効率のいいページと施策から実施していく流れとなる。
ABテストは主観的に「やるべきテスト」よりも「やりたいテスト」を優先しがちだが、機械的に判断できる指標を用いることで時間の浪費を防ぐことができる。
ゴールに近いかどうか
優先順位付けと合わせて、特にWebサイト改善の初期段階では「ゴールに近いかどうか」を意識すると効果を出しやすい。Webサイトにおけるゴールというのは、ECであれば「購入」、2ステップで「問い合わせ」や「資料請求」にあたるもので、「ゴールに近いページ」というのが、カートや問い合わせフォームにあたるものである。
なぜゴールに近いと改善がしやすいのか。一番の理由は「改善難易度」が低いということだ。
例えば、ECサイトの場合、TOPページやLPは当然カートに比べると訪問数が多い。ところが、「指名で検索してくるユーザー」「広告を見てくるユーザー」など、ユーザーのパターンは複数存在し、仮説立てをすることもその検証をするためのテスト設計も難易度が高い。
カートや決済ページというのはどんな訪問者であれ、「買いたい」という意思が確定している状態である。こういったユーザーにはクーポンで背中を押してあげたり、送料などへの不安を取り除いてあげたりすれば購入につながりやすい。「買うかどうかも決まっていない」ユーザーよりも、「買いたいと思っているが迷っている」ユーザーを動かす方がはるかに簡単ということだ。
何を実施するかを考える前に「誰に」と「どこで」を整理しておけると、実施する施策の成功率は格段に高まることなる。
■執筆者プロフィール

鎌田洋介(カマタ ヨウスケ)
ギャプライズ CXO事業部カスタマーサクセスチームマネージャー
2009年、ギャプライズ入社。当初はプランナーとして、主にランディングページ構築の企画に携わる。その後は顧客体験分析ツールContentsquare(旧Clicktale)やABテストを活用し、グロースハックの仕組みをチーム内に根付かせるコンサルタントとして、多くのチームビルディングに携わる。