新型コロナウイルスにより世界中で加速したDX
2021年末から政府が毎月のように開催する有識者会議でも最も強調されているのが、リスキリングの推進だ。17年ごろから政府が推進してきた「リカレント教育(=学び直し)」が、一度キャリアを中断して教育機関などに通い直すことを前提としていたのに対し、リスキリングでは職業で価値創出し続けるために必要なスキルを、働きながら学び続ける、という点が強調される。リスキリングで今“身につけるべき必要なスキル”とは何か。ここ数年で特に多くのビジネスパーソンたちが危機感を覚えたのが、デジタル技術の乏しさだろう。リスキリングは、「DX時代の人材戦略」といわれることも多く、その背景には企業だけでなく、行政や教育機関など、さまざまな場面で加速したDXがある。
もともと日本はICTに対する投資が弱いと指摘されてきた。日本生産性本部によると、20年における日本の労働生産性は主要先進国(G7)中最下位で、統計をさかのぼることができる70年代以降、その位置から抜け出せていない。
この労働生産性とは、従業員1人当たりの国内総生産、もしくは就業時間1時間当たりの国内総生産を示す。とりわけ90年代以降の労働生産性の悪化は著しく、バブル崩壊後の経済低迷によって、本来投資を急ぐべきであったIT技術への投資をする余力もないまま、20年代へと突入してしまった。
その間、IT技術を武器としたGAFAMなどのアメリカ勢やアリババやテンセントなどの中国勢が政界経済に大きな影響を与える一方で、日本では同等の大企業が生まれていない。
そんな中、その重大な“遅れ”について、現実的な危機感をもたらしたのが20年以降に流行した新型コロナだろう。
行政手続きがいまだにFAXで行われている、あるいはリモートワークを推奨し、労働管理のSssSを導入しながらも領収書の原本を提出するために出社しなければならないなど、誰もが国や企業の「非効率性」「非生産性」を痛感する事態となった。
コロナによって、いよいよDXと向き合わなければならなくなったとき、「デジタル人材の確保」が国をあげての急務となったのだ。
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