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富士通 「Wide Learning」で金融機関のAI活用のハードルを下げる AIスコアリングプラットフォームサービスをリリース
2020/09/17 18:41
週刊BCN 2020年09月28日vol.1843掲載
EnsemBizは富士通研究所が独自に開発した説明可能なAI技術である「Wide Learning」を採用したサービスで、高精度な予測結果を提供するとともに、予測結果を基にした効果的なアクションプランまでをサジェストする。営業活動やマーケティング活動、審査業務の効率化、不正請求や詐欺の検知といったリスク対策への活用を想定している。従来、人間が担っていて、個人ごとの経験やスキルによって判断にバラつきが出ていた業務のクオリティを底上げするというコンセプトだ。同社金融システム事業本部デジタルビジネス事業部の朱偉・マネージャーは、「施策の立案や意思決定を強力にサポートし、金融機関におけるAIの実用化の課題を解決できる」と説明する。
金融業界でも、与信審査など、さまざまな評価や判断にAIを活用しようという検討は進んでいるが、本格運用の段階に進んでいるケースはまだまだ少ない。朱マネージャーは「そこには三つの理由がある」と指摘する。「まず、ディープラーニングでは予測結果の根拠がブラックボックスになり、説明できないことがハードルになっている。サービスに高い信頼性が求められる金融機関では、この部分がなかなか受け入れられない。十分な学習データを準備したり、加工したりするのが難しいことも大きな阻害要因となっている。また、IT人材の不足も重要な課題だ」
データを網羅的に組み合わせて分析するWide Learningにより、EnsemBizは少ないデータでも高精度な予測を実現。さらに、予測結果に強い影響を与えたデータの組み合わせを根拠としてわかりやすく提示し、「人が理解でき、納得性の高い結果を得ることができる」という。例えば、見込客へのマーケティングでは、顧客属性や過去のコンタクト履歴などのデータの全ての組み合わせを分析して、商品を買うか買わないかに影響を与えた要素を抽出する。これにより、見込客への効率的な営業を可能にするとともに、潜在的な優良顧客の特徴の発見にもつながる。
また、「従来はAIの予測結果をデータサイエンティストが分析して、次に取るべきアクションをサジェストするのが一般的な流れだった」(朱マネージャー)が、EnsemBizはこの役割も代替し、AIが自動で複数のアクションプランを提示する。データの事前処理もGUI操作で簡単にでき、BIツールの「Tableau」と連携することで予測結果の効果的なレポーティングも支援。IT人材の不足に対するソリューションとしても機能する。朱マネージャーは「専門知識がなくても手軽に利用できる点は大きなポイントだ」と強調する。
提供形態はオンプレミス型のパッケージとSaaS型の2種類を用意している。パッケージの販売価格は基本ライセンスとWide Learningエンジン、Tableau連携機能を含めて月額120万円から。
同事業部の奥田琢馬・シニアディレクターは、「スピード感をもって金融業界の課題を解決し、デジタル変革を支援していくのがFinplexブランドの役割。EnsemBizのリリースもそうした取り組みの一環であり、(Wide Learningのような)研究所で生まれた先進技術をいち早くサービスに実装して世の中に提供していくのも使命だと考えている」と、同社におけるEnsemBizの位置付けを説明している。(本多和幸)
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