楽天モバイル(山田善久社長)が、5GやIoTを活用した新規サービス創出を目指すパートナープログラムを発表した。3月末に5Gの商用サービスを開始した携帯電話3社が自社を中心とするエコシステムを構築する中、楽天は後発ならではの最新のネットワークと、大手ネットサービス事業者としてのノウハウを武器に、よりオープンなパートナーエコシステムを作り上げようとしている。(銭 君毅)
事業開発室 5Gビジネス推進室 奥津淳氏
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに続く第四の携帯キャリアとして、今月8日からサービスを開始した楽天モバイル。大手3社を追って、6月には第5世代移動通信システム(5G)のサービスもスタートする予定だ。
5Gは通信業界だけにとどまらず、幅広い産業のサービス基盤となることを期待されている。通信事業者各社は数年前から、さまざまな業種の企業とパートナーシップを結び、5Gを活用した新規サービスの創出に力を入れている。楽天モバイルも6月の5G開始に向けて、新たなパートナープログラム「楽天モバイルパートナープログラム」を3月12日に発表。5GやIoTを活用した新規ビジネスの“共創”を目指し、企業や自治体との関係を強化しようとしている。
プログラムでは、楽天と共同で新たなサービスの提案や運営を行う「プロジェクトデザインパートナー」と、楽天やプロジェクトデザインパートナーが提案した新サービスに対して技術などを提供する「プロジェクトサポートパートナー」という2種類の協業先を求めており、後者のプロジェクトサポートパートナーでは、既に「スポーツ」と「配送」という2つの具体的な分野で、技術やノウハウを持つ企業の募集が始まっている(今月30日まで)。スポーツは8K映像伝送など5Gの特徴を生かせること、配送はEコマース事業者である楽天自身が抱える課題の解決に直結するテーマであることから、第1弾のプロジェクトに選ばれた。
5Gでは、限られた通信帯域を用途によって仮想的に分割するネットワークスライシングや、楽天の網内にサーバーを設置し低遅延でのサービス提供を可能にするMEC(Multi-access Edge Computing)などが利用可能となる。パートナープログラムに加入したパートナーは、これら5G関連技術の導入支援を楽天から受けられるほか、実証実験用の環境なども提供される。事業開発室 5Gビジネス推進室の奥津淳氏は「5Gを前提とした世界初の完全仮想化モバイルネットワークを構築している当社では、比較的スピーディかつ低コストでスタンドアローン(=4Gに依存しない)の5Gを実現できると考えており、5Gならではの新しい技術を早期にパートナーに提供できる」と、後発だからこその優位性を語る。
また、Eコマースや決済、ポイントプログラムなど、楽天グループが運営する70以上のサービスと連携し、新サービスの創出をグループ全体で支援する。楽天グループがもつ顧客基盤やデータを活用することで、早期にビジネスを組み立て、エンドユーザーにリーチできる点を、強みとして打ち出していく。
奥津氏によると、プログラムに関心を示すパートナーからは「当社のサービスプラットフォームとしてのポテンシャルにご期待いただいている」といい、5G網に加えて、ビジネスモデルの検討・企画や、運営体制や法律面なども含めた継続的なビジネス展開など、楽天グループの経験・ノウハウにも注目が集まっている様子。楽天とパートナーがそれぞれもつ資産を組み合わせることで、新たなネットサービスの具現化を急ぐ。