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日本IBM AI活用支援組織 「IBM AIセンター」を立ち上げ 人材を結集し、AIビジネスのスピード向上へ
2020/02/20 09:00
週刊BCN 2020年02月17日vol.1813掲載
150種類のメニューを用意
全社的なAI活用を支援
AIセンターは、顧客企業それぞれに適した形での全社的なAI活用を支援するための組織として、2019年12月に発足。今年2月から本格的に活動を開始した。具体的には、データ活用戦略やロードマップの策定から、AIシステムの構築、データの整備、データ基盤・分析環境の構築、デジタル人材やデータを活用する企業文化の育成まで幅広く手掛ける。製品・ソリューション、コンサルティングサービスなど、約150種類の提案メニューを用意している。
AIセンターの体制として、コンサルタント、データサイエンティスト、AI製品・ソリューションスペシャリスト、AI開発者など、日本IBM社内の各部門から人材を集める。トップには、IBM基礎研究所でコンピューターアルゴリズムの研究者として約10年間、サービス部門でデータサイエンティストとして約10年間、従事してきた経歴を持つ、日本IBMの山田敦・技術理事 データ・サイエンティスト・プロフェッションリーダーが就任。全体の規模としては「3ケタに及ぶくらいの人数」になると説明する。アカウント営業チームとともに、顧客のAI活用推進を支援していく。
日本独自の取り組みで
ビジネススピードを上げる
日本IBMは昨年5月に就任した山口明夫社長の新体制の下、クラウドとAIを注力領域と位置付け推進してきた。その一環として、クラウド事業では昨年10月に、世界に先駆ける形で新たな社内組織「IBM Services Cloud Center(ISCC)」を発足。コンサルティングとインフラの部隊を統合している。今回のAIセンターの発足も、日本独自の取り組みとしてスタートした。その狙いには、顧客の要望への対応と、日本IBM自身のビジネスのスピードアップがある。伊藤昇・常務執行役員クラウド&コグニティブ・ソフトウエア事業本部長は「日本のお客様は、グローバルと比べると、ソリューションとしてワンストップで提供してもらいたいという要望が多い」と指摘。加えて、同社においてデータ活用支援にかかわる人材が社内複数部門に分かれていたことによる連携の速度が課題で、「スピードを加速していく必要があった」と言う。AIセンターの発足によって、「各専門領域の人が集まり、短期間にベストなソリューションが提供できる体制を整えた」と、山田技術理事は胸を張る。社内での連携速度を上げることで、顧客に対してスピーディに具体的な提案へつなげられるようにする考えだ。
ISCCとAIセンターのそれぞれの役割は「基本的には同じ」(同社広報)。AIビジネスにもクラウドが絡むことが考えられるが、そうした際は両組織が連携して動くことになるという。なお、ISCCの人材は同組織の専属になるが、AIセンターの人材はもともと属していた部門と兼任で従事するとしている。
IBMはデータプラットフォームの「Cloud Pak for Data」やAI技術の「Watson」などのAI関連製品を持つが、同社製品・技術の利用が必須になるわけではないという。顧客の状況を把握した上で、必要に応じてIBMの製品を提案することはあるが、顧客企業がすでに利用しているプラットフォームや、オープンソースの製品・技術を活用することなども想定している。
AIセンター設立による日本IBMのAIビジネスは、まずは既存顧客をターゲットとして展開する方針。伊藤常務は、市場環境として、部署や業務単位でのAI活用ではなく、「企業全体の中でどうやってAIを活用して企業の成長に寄与していくのかというチャレンジのフェーズに入ってきている」と説明。ただし、全社的なAI活用によるデータドリブンな経営やビジネスのスピードアップに向けては「多くの企業が道半ば」であるいい、「IBMではAIをどう活用して企業変革していくのかというところを、会社全体で支援していきたい」と意気込む。
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