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東芝デジタルソリューションズ、デジタルツインで描くグローバル企業への成長戦略
2019/12/19 09:00
週刊BCN 2019年12月16日vol.1805掲載
東芝グループが目指すグローバル市場では近年、GAFAやBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)といった企業がデータ活用で大きく成長している。しかし、イベントの基調講演に登壇したTDSLの錦織社長は「データの利活用を巡る競争はまだまだ“第一幕”に過ぎない」と強調する。「GAFAやBATHなどはプラットフォームを介して得たコンシューマーデータを活用しているが、今後の競争は産業用データが中心となっていくだろう」と分析する。現実世界(Physical)のさまざまなデータをセンサーによって自動で収集してデジタルツインを創出。これらをAIで解析し、再度現実世界へフィードバックすることで社会課題の解決や産業改革へとつなげていく構想だ。
東芝グループは約140年の歴史の中でモノ作りに取り組んできたノウハウを持つほか、50年以上にわたりAI研究を続けてきたという。「まさにフィジカルとサイバーを兼ね備えているといえ、一つの会社で総合的な価値を提供できる企業は多くない」と強調する。今後は、これまで東芝グループが事業を展開してきた各事業ドメインに対してIoTとAIを活用したデジタルツインのソリューションを提供していく。
東芝Nextプランにおいて、19年度は最初の1年目。TDSLの錦織社長は「徐々にではあるが具体的な事例が出始めた」と手応えを語る。直近では三井物産との提携によって実現した鉄道会社や発電会社、自動車部品工場とのグローバルプロジェクトがスタートしたことを発表している。各案件には東芝グループ各社が参画しており、総合力が生きているという。
同イベントの展示ブースでは単純な製品紹介だけでなく、パートナーを交えた取り組みや最新の事例が公開された。以下、その一部を紹介する。
モダン化と可視化を進める工場DXソリューション
東芝グループが提案するデジタルツインの手法を端的に反映しているソリューションが製造向けPLMソリューション「Meisterシリーズ」だ。工場内の設備や基幹システムからデータを収集し工場内の状況を詳細に可視化する。あたかもデジタル空間上に工場を写像することでシミュレーションやAIによる解析を行い、工場内の各種改善に役立てることができる。具体的なユースケースとしては設備の故障予知や、返品クレームの原因究明、製造リードタイムの改善など多岐にわたるという。導入には製造ラインの各工程で着工完工のデータが取れていることが前提となる。システム化が十分でない場合、東芝グループの研究所である東芝生産技術センターから専門部隊を派遣し、工場全体のシステム化から検討していくことも可能。その場合、実際にMeisterが稼働した後の活用方法までを含めてユーザーとともに検討し、工場全体のモダン化を実現する。
また、12月にはMeisterシリーズのクラウド版の販売を開始。クラウド化することで、工場内だけでなくサプライヤー全体の見える化を実現し、サプライチェーンを横断した品質改善が可能になるという。
現時点で同ソリューションの導入企業はグループ内や自動車メーカーなど13社で、今後は電子部品メーカーなどを中心に幅広い分野に対して製品を訴求していく考えだ。
IoTエコシステムでビジネス創出を支援
硬派なソリューションの展示が並ぶ中、毛色の違う雰囲気を出していたのが「ifLinkオープンコミュニティ」のブースだ。ifLinkは東芝デジタルソリューションズが提供するIoTプラットフォームで、スマートフォンをゲートウェイとして利用する。「既定の温度から外れたら、空調を作動する」「心拍数に変化があったら、アラートを通知する」といった形で、if(~したら)とthen(~する)のルールをスマホに設定することでIoTソリューションを実現する。東芝デジタルソリューションでは同サービスをオープン化し、センサーやデバイスメーカーなどとの連携を強めている。11月5日にはサービスにかかわるメーカーやユーザーによるコミュニティー、ifLinkオープンコミュニティを設立。幅広いIoTサービスを共創していく方針だ。設立時点ではアルプスアルパインや京セラ、KDDI、ソフトバンクなど9社が会員として名を連ねており、会員数は徐々に増加しているという。
現在は定期的にユーザーを交えたワークショップを開催している。エンドユーザー目線のニーズを抽出しつつ、具体的なサービスのプロトタイピングを進めている。今後は20年春を目標に個人会員を募り、個人単位からifLinkをトライアルできるようにしていく予定だ。
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