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大塚商会の大塚實名誉会長が死去、中小企業のOA化、IT化に大きな貢献
2019/09/27 07:30
週刊BCN 2019年09月23日vol.1793掲載
創業当初から中小企業をメインターゲットと位置付け、地域を面で捉えるドミナント戦略を展開。地域内の顧客には、たとえコピー用紙一冊であってもすぐに配達できる体制を業界に先駆けてつくった。また、複写機ユーザーが定期的に購入する消耗品を届ける際に、オフィスの様子をくまなく観察し、その時代時代に合った最新のOA商材を売り込んでいく手法で売り上げを伸ばした。
この“大塚商法”は、今でも脈々と受け継がれており、大企業に比べて遅れがちな中小企業のOA化、IT化に大きく貢献。大塚氏がつくったビジネスモデルを礎として、大塚商会は今年度(2019年12月期)連結売上高8400億円(前年度比10.5%増)を見込むまで成長している。
大塚氏は01年、代表取締役社長を大塚裕司氏に譲り、第一線を退いていた。
葬儀は近親者のみで済ませており、大塚商会は後日、社葬と「偲ぶ会」を開く予定だという。(安藤章司)
【追悼】大塚商会創業者・大塚實氏
素晴らしい結晶を残して旅立たれた――奥田喜久男――
大塚實さんの訃報を9月13日に聞いた。当日の朝も、数日前も、その週は自宅の神棚の下に飾ってある大塚さんの写真を見ながら、「予定稿はちゃんと準備できているのだろうか。確認したほうがいいかしら。いや待て、BCN編集長を信頼しよう」と逡巡の日々を過ごした。「もしかすると、旅立たれたのかもしれない」という不安が頭をもたげる。9月13日は金曜日。昼食を共にした友人を神保町までタクシーで送り、私もそこで降りて歩き始めた。この地域一帯は、書店あり、大好きな山の道具屋あり、喫茶店ありの街だ。ぼ~っと考え事をしながら裏路地を曲がる。「あゝ、三崎町だ。かつて大塚商会の本社があった場所だな」。記憶をたどれば、脇のドアを開けて社長室に入ると、社長のデスクが随分と遠くに見えたものだ。とにかく緊張したことと、取材を終えて退出しながらニンマリしたことを何となく思い出す。社長室に招かれたことがうれしかったのだ。
大塚商会は1980年代に取扱商品を大幅に拡充した。複写機の販売で培った営業体制を基盤にして、FAX、オフコン、パソコン、通信機器、ネットワークへと事業領域を広げ、時代の先端技術を組み合わせて顧客の成長を支えるビジネスに向けて歩み始めた。
当時のコンピューター販売は、メーカーが顧客企業に直販をする、もしくはメーカーから技術提供を受けて緊密な提携関係を結んだ代理店が販売する形式であった。客先仕様のソフト開発、24時間稼働しているハードの保守、日進月歩の技術進化への対応など、顧客企業を支えるための打ち手は無数と言っていいほど存在し、それらをどう選択して組み合わせれば真に顧客のためになるのかは簡単に答えが出ない問題だった。
ここからは私の自慢話めくので、話し半分として読み飛ばしていただきたい。どうも大塚実(見慣れた「実」の文字を使います)さんは難題を解くのがお好きなようだ。取材は私の質問から始まる。聞き終わると、大塚さんの逆質問が始まる。その時間のほうが長いのだ。時間切れになると、「来週のこの時間、空いてるよ」で再訪問が決まって、続きが始まる。話が進んでいくと、大塚さんの質問の元ネタに気がつく。私が週刊BCNに連載した「オフコン パソコン両翼理論」である。そうと分かればインタビューではなくなり、対等の議論の場となる。
コンピューターは社会の頭脳である。1980年代には人工知能、いわゆるAIのフラッグが業界に立った。何度かのブームとその衰退を経て、今や本格的な社会実装の段階に到達している。頭脳を持った機械を売る組織は難解である。技術進化のテンポがゆるやかで、それも連続性があるならば多くの人がついていけるのだが、コンピューターはそうではない。思考する頭脳構造の要素と組み合わせの数たるや、人智をはるかに超えている。コンピューターの進化が人間の可能性を広げ、さまざまなビジネスを生み出し、現代の巨人であるGAFAの誕生にも結びついた。まだ形も見えていない企業が、この先、世の中を変えていくだろう。
大塚商会もこうした時代の流れを形にした企業だ。その資産は親から子へ引き継がれ、創業者が「阿吽」を終えた頃に売上高1兆円を目前とする企業となった。私は思う。考えに考え続け、鍛え抜かれた組織体が「社会に認められ、仲間に評価され、家族に喜ばれる」企業になったことに大塚さんは心から感謝しておられると――。素晴らしい結晶を社会に残して旅立たれた。合掌。
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