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AIは「予見」に使うべき 孫社長、日本のAI活用遅れを指摘――ソフトバンクグループ
2019/08/02 07:30
週刊BCN 2019年07月29日vol.1786掲載
講演の中で孫社長は、「AIに『何か考えてくれ』と言っても、考えるとは何かという話になる。AIに何でもかんでもやらせるのは間違ったアプローチだと思う。現在のAIが人間よりも得意とするのは、今から5分後、1日後に何が起きるかのプリディクション(予見)だ」と述べ、今日のAIは万能ではないものの、需要予測やマーケティングの最適化といった領域では、競争優位性に直結する大きな力を発揮できると主張した。
機械学習によるデータ分析が新しいビジネスを生む実例として、孫社長はソフトバンク・ビジョン・ファンドが投資するベンチャー企業を紹介。80カ国に2万3000軒以上のホテルを経営するインドのホテルチェーン・オヨは、データの活用によって、取得不動産の選定や価格決定のプロセスを短縮。さらに、インテリアデザインの改善にも機械学習を導入することで、短期間での大量出店と稼働率の改善を継続できているとした。孫社長はオヨら投資先4社のトップをステージに招き、若い経営者がAI技術の活用によって既存の業界に破壊的な変化をもたらしていることを伝える一方、「日本には、世界でナンバーワンといわれるようなAI企業がなく、投資の機会がない」「日本はAI後進国になってしまった」と述べ、今のタイミングでAI産業が国内に育たなければ、米国やアジア諸国に追いつくことはできなくなるとの見方を示した。
また同日、AIの能力をビジネスにもたらすソリューションベンダーとして、セールスフォース・ドットコムの小出伸一社長、日本IBMの三澤智光専務が特別講演に登壇。セールスフォースの小出社長は、顧客管理システムにAIを統合することで、「過去のデータを学習し、顧客が次に何を買いたいと思っているか、満足しているか、解約の可能性はないかなど、未来を予測できる」とした。データ分析の専門知識がなくとも、営業やサービスの担当者が日々の業務の中でデータを活用できるのが同社のAIの特徴という。
日本IBMの三澤専務は、「データが整理して体系化されていないと、誤った判断を下すモデルができてしまう」「ミッションクリティカル領域では、AIに透明性と説明責任が求められる」と指摘し、同社ではAIエンジン自体に加え、ビジネスの中にAIを導入する際に必要となるツールやプロセスの提供にも注力していると説明した。(日高 彰)
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