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NTTデータの情報銀行ビジネス、数百億円の事業規模になる可能性 課題とノウハウを蓄積、実用化に手応え
2019/05/31 07:30
週刊BCN 2019年05月27日vol.1777掲載
実証実験では、氏名や住所、生年月日、性別などの個人情報データを情報銀行に登録してもらい、「引っ越し」を想定して個人情報のやりとりを行った。引っ越しの際は電気やガス、水道、電話、銀行など複数の会社に住所変更の届け出を行わなければならない。情報銀行を使うことで一括で変更する仕組みだ。
この取り組みを通じて見えてきた課題は、(1)企業が自分で個人情報データを囲い込むのではなく、情報銀行にデータを預けるインセンティブをどう設計するか、(2)個人が情報銀行から自分のデータを的確に引き出す(返却してもらう)ための技術的な確立、(3)個人が自分の個人情報を提供してまで利用したいと思うサービスの創出の三つ。
実証実験では住所変更の手続きというビジネスとは直接関係ない「引っ越し」を想定したが、ビジネスとして軌道に乗せるためには、利用企業が個人情報を活用して利益を生み出すサービスが欠かせない。
現状を見渡すと、マーケティングの精度を高めるために情報銀行と類似した役割を果たすPDS(パーソナルデータストア)を活用する動きが活発化している。この5月にも富士通と電通がPDSを活用して、個人主導でデータを活用するプラットフォームの実証実験をスタートすると発表している。ほかにも、流通小売業のポイントカードに代表されるような企業グループ単位での個人情報の蓄積が進む。
GAFAを実例として、個人情報データが莫大な価値を生むことが明らかになるにつれて、「個人情報を複数の企業で活用するプラットフォームへのニーズが高まっている」(江島正康・社会基盤ソリューション事業本部ソーシャルイノベーション事業部ソーシャルビジネス統括部第二営業担当課長)。データが価値を生むのであれば、そのデータを適切に扱い流通させるための仕組みが必要になる。
NTTデータでは、個人情報データの価値を「お金」に置き換えて、同社が長年にわたって手掛けてきたクレジットカードなどの決済総合プラットフォーム「CAFIS(キャフィス)」や、開発に参加してきた全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)と同等の位置付けになるのではないかと予想する。もし、そうであれば、「将来、数百億円規模のビジネスに発展する可能性がある」(花谷部長)と手応えを感じている。(安藤章司)
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