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Oracle OpenWorld Asia 2019 レポート クラウドを通じて業務にAIの価値を届ける
2019/04/26 07:30
週刊BCN 2019年04月22日vol.1773掲載
AIを透過的に搭載する
オラクルのSaaS
「Oracle OpenWorld」は毎年秋に米サンフランシスコで開催されているが、それをフォローする形で各地域版のイベントが開かれており、今年は1月の欧州(ロンドン)、2月の中東(ドバイ)に続き、3月のアジアの3地域を巡業した。シンガポールがOpenWorldの開催地となるのは初という。今回、特に説明に多くの時間が割かれていたのが、基幹業務アプリケーションのSaaS化だ。米オラクルでアプリケーション製品開発のトップを務めるスティーブ・ミランダ エグゼクティブバイスプレジデントは、会期中に日本のメディアからのグループインタビューに初めて応じ、「少なくともオラクルが提供しているアプリケーションに関しては、人々のほとんどが想像しているよりも早い時期に、100%がSaaS化されると考えている」と発言。ERP、SCM、CRM、人事といった業務アプリケーションを、顧客企業ごとに細かくカスタマイズして提供するビジネスモデルは、早晩立ちゆかなくなるとの見方を示す。
その理由を、ミランダ氏は「SaaSのほうが、アプリケーションの改善や、効果の検証を素早く行えるからだ。かつてのオンプレミスの基幹システムがアップグレードされるのは、5年に一度程度だった。それに対してわれわれのSaaSでは、年に4回新たなフィーチャーを提供している」と説明する。個社ごとにオンプレミスで展開されるシステムでは、市場の急速な変化に対応するのは不可能であり、現代のビジネス環境においては、SaaSでなければ顧客企業を成功に導くことはできないという主張だ。
では、SaaSだから提供できる、企業の競争優位性につながるフィーチャーとは何か。ミランダ氏は「最も重要な点は、われわれはクラウドを通じて提供するアプリケーションに、AIや機械学習といった技術を“浸透”させていることだ」と述べる。企業はアプリケーションと別個にあるAIエンジンを使いこなすことを強いられるのではなく、オラクルのSaaSアプリケーションを利用するだけで、AIの存在を意識することなく自然に業務改革が図れるという意味だ。
例えば、経費精算に関して、レシートをクラウドにアップロードすると、支払い内容や社員の役割をAIが自動的に認識する機能を提供している。単純に金額の多寡で承認ルールを定めるよりも、きめ細かく不正を監視できると同時に、明らかに正当な支出に関しては上級役職者の決済を省くことで、管理職の業務負荷の軽減や承認のスピードアップが行える。そのほかにも人事では、自社に最も適した採用候補者を絞り込む、調達ではサプライヤーと交渉する際の目標条件を提示する、CRMでは、何曜日の何時にどんな手段で顧客にアプローチするのが効果的かを推奨する、といった例が挙げられた。
自律型DBが1周年
あの名物経営者も登壇
2日目の基調講演に登壇した、オラクルEMEA(欧州・中東・アフリカ)で技術・システム担当シニアバイスプレジデントを務めるアンドリュー・サザーランド氏は、自律型DBを提供するクラウドサービス「Autonomous Database」の提供を開始してからちょうど1年を迎えたことに触れ、同サービスはDB管理者の業務負荷を大幅に軽減し、DBの管理コストを「80%削減できる」ものとアピールした。Autonomousに関して今回オラクルが特に繰り返し強調したのが、同社の最新クラウドサービス群が提供する価値のコアとしても位置付けられているセキュリティーだ。従来のDBでは、セキュリティーパッチの適用にあたりDBを停止する必要があるため、業務部門との煩雑な調整が必要で、場合によってはパッチの適用が遅れるケースもある。Autonomousではクラウド側で自動的に最新のパッチが適用され、運用を止める必要がない。これに機械学習ベースの脅威検知機能を加えることで、未知の脅威に対してもほぼ完璧なセキュリティー体制を敷くことができるとしている。
また、今回のOpen Worldではアジア太平洋地域の多くのオラクルユーザー企業がステージに招かれたが、一番のビッグネームだったのが、マレーシアの格安航空会社・エアアジアのトニー・フェルナンデス グループCEOだ。経営破綻状態だった同社を、東南アジア最大の航空会社に育て上げたフェルナンデスCEOは、ASEAN地域で最も成功したベンチャー経営者として知られる。同CEOはかつてオラクルのことを、従来型航空会社と同じようなレガシーなベンダーとみていたというが、現在はクラウド市場に挑む挑戦者として評価。エアアジアグループの財務会計の一元化のため、オラクルの「ERP Cloud」を導入したことを明らかにし、企業の成長のためには部門間のシステム統合、オペレーションの自動化、意思決定におけるデータの活用が不可欠だと訴えた。
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