日本コンピュータシステム販売店協会（JCSSA）は1月28日、毎年恒例の「2019年度新春セミナー・賀詞交換会」を開催した。Windows 7のサポート終了まで1年を切り、今年はPCの買い替え需要増が確実視されているが、国内大手電機メーカーは、既にIT事業の軸足を製品販売からサービスへと移している。販売店にとっても、製品からサービスへのシフトは共通の課題。これが事業変革に乗り出す最後のチャンスかもしれない。（日高 彰）

次期会長の林氏「クラウド販売に危機感」

各社ともサポート終了を意識

　JCSSAの新春セミナーでは、協会の賛助会員に名を連ねる主要PC・サーバーメーカー各社が、その年の製品・販売戦略についてプレゼンテーションするのが恒例となっている。しかし、国内大手3社の富士通、NEC、日立製作所は、ハードウェア販売を既にIT事業のコア領域とはみなしておらず、各社ともSIなどサービスによる成長戦略に舵を切っている。昨年のセミナーでは、富士通が量子コンピューティング技術応用製品の「デジタルアニーラ」、日立がIoTソリューション「Lumada」による製造現場の革新を紹介するなど、IT製品の販売というJCSSA会員企業のビジネスからは、やや距離を感じさせる内容の発表も多かった。事業変革を進めるメーカーが、これまで主にハードウェアを取り扱ってきた販売店と、どのように新たな関係を築いていくか模索中であることが浮き彫りとなっていた。
 
　今年は、2020年1月14日に訪れるWindows 7とWindows Server 2008のサポート終了まで1年を切ったことから、ほとんどのメーカーがPCやサーバーの買い替え特需を意識した内容としていた。それでも、製品自体の紹介に多くの時間を割いたのは、登壇した9社のうちDynabookとVAIOだけで、多くは働き方改革やビジネスのデジタル変革が主題。富士通は、社内16万人を対象に実践した働き方改革で、出張経費の2割削減や、従業員の職場に対する満足度向上といった効果を得られたことをアピール。NECは、同社製サーバーを用いた顔認証アプライアンス製品で多くの事例が生まれていることを紹介。日立は運用管理製品「JP1」を利用した業務内容の可視化ソリューションを披露したほか、ハードウェア販売が好調な日本HP、レノボ・ジャパンも、セキュリティー運用や「as a Service」型での製品提供など、IT担当者を運用業務から解放するサービスを訴求していた。

OSも“サブスク”での提供へ

　日本マイクロソフトのプレゼンテーション内容は、販売店に対してトレンドの変化をより直接的に訴えかけるものだった。同社でパートナービジネスを統括する金古毅執行役員は、Windows 7のサポート終了に関して「デバイスの買い替え訴求はもちろんだが、われわれとしては『Microsoft 365』を推進していく」とコメント。売り切り型ライセンスの提供から、Windows OSとOfficeをセットにしたサブスクリプションサービスへ、重点を移していく方針を明確化した。サーバーOSでは新製品のWindows Server 2019を発売したが、サポート切れ環境の移行先としてはあくまでAzureをメインに推進する。
 
　セミナー後に行われた賀詞交換会では、開会の挨拶に立った大塚裕司会長（大塚商会社長）が、6月に開催される総会をもって、林宗治副会長（ソフトクリエイトホールディングス社長）に会長職を譲ることを発表した。大塚会長は「会長に就任して13年になる。任期途中ではあるが、世代交代をしたいと考えている」と話し、このタイミングで若返り人事を行いたかったとコメント。林副会長は、「具体的な方針は6月の総会後に話したい」としながらも「これからの日本のクラウド販売はどうなるのか、非常に危機感を持っている。ここでうまく立ち回らないと、ひょっとしたら10年後は仕事がなくなっているかもしれない」と述べ、今クラウドビジネスにシフトできるかどうかが、販売店の生き残りを左右すると強調した。

　特需期が過ぎれば、必ず反動減の波が押し寄せる。また、消費増税、東京五輪後の景気後退など、複数の不安要素がある。サポート終了というイベントを、サービス売り上げ拡大の契機としてどれだけ活用できるかが問われる。