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3Dデータ活用のいろはを指南 コネクテッドインダストリー本格化に備える――都築電気
2018/12/27 08:00
週刊BCN 2018年12月24日vol.1757掲載
設計者の一歩先の開発環境
開会の挨拶で、都築電気のIoTビジネス推進室室長の佐藤徹至氏は、「企業と企業、機械と機械、人と人がつながる世界を目指すConnected Industries戦略は、今年に入ってから本格的な実行段階に移っている。また、経済成長の駆動源として、デジタルものづくりの機運が高まっており、効率的なデータ活用によって技術革新、生産性向上、技能伝承が可能となる」と、ものづくりにおけるデジタル化の重要性を指摘した。その後、基調講演では富士通アドバンストテクノロジの電気系プラットフォームサービス部部長の薮本稔氏が登壇。「富士通グループにおける開発環境を整えることが、当社のミッション。そこで重要になるのが設計者の一歩先の開発環境を提供していくことだ。製品やサービスは年々進化しており、機能は拡大している。次第にものづくりは難しくなっていくだろう」と語った。続けて「5年後10年後を見据えたときに、そのままのルールや仕組みではどこかで破綻してしまう。設計者が何かを作ろうと考えたとき、最初から適切なルールや、仕組み、ツールを用意しておくことが、他社に負けない製品をスピーディーに作るうえでポイントになる」と強調した。
同社が提供している富士通グループの開発プラットフォーム「Flexible Technical Computing Platform(FTCP)」のキーワードは「つながっている」だという。ここでいう「つながっている」とは、設計において必要な情報が、できるだけ上流工程で正しい形で共有されていることを指す。適切な情報共有で「設計者は設計することだけに集中でき、短いスパンでものづくりが可能になる」とした。
機械・機構(メカニクス)系と電気・電子(エレクトロニクス)系の間できちんとした情報共有ができていないという状況は、設計・開発でよくみられる。「何かを作るときに初めて顔合わせするというような方法はよくない。製品の設計・開発という目的は一緒であることから、違う分野のデータを統合していくことが大切になる」と薮本氏。これを実現するため、同社では統合プラットフォームやCADツール、ナレッジ共有ソリューションを提供しており、「今後も日本のものづくりを支援していきたい。自分たちでできることがあればお手伝いしていく」と語った。
3Dデータ普及には文化が必要
続いて、都築電気のIoTビジネス推進室の河野祐二氏が登壇した。現在、活用が進んでいる3Dデータについて、以前とは違ったアプローチが必要になると指摘した上で「かつて、ドラフター(製図台)を使った手書きの設計から2Dのデジタル化に移行したときは、操作に対する多少の違和感はあったものの比較的スムーズに移行することができていた。しかし、ドラフターや2Dは主に設計で使われることが多かったが、3Dデータに関しては、それをもとにさまざまな応用ができるようになる。そのため、3Dデータを活用していくためには、従来の“図面文化”ではなく新たに“データ文化”を醸成していく必要がある」と語った。そして、スムーズに3Dデータ活用を進めるためには「これまでのツールとは違った特性を理解することで、3Dデータをどのように活用するかが見えてくる。3Dデータを主体にした文化を作るきっかけにもなる」と河野氏は語った。
講演の終わりに河野氏は、「3Dデータの活用範囲は非常に広いため、新たなビジネス創出や自社の強みの強化という点で非常に重要なツールになる。いち早くデータ文化を作り上げていくことが重要になるだろう」と改めて強調した。
3次元CADツールを紹介
都築電気の今回のセミナーではデータ活用の事例や各社の取り組みだけでなく、最新のツールについても紹介した。iCAD拡販部課長の長澤直樹氏は、同社が手掛ける3次元CADツール「iCAD SX」を紹介するとともに、その動作について実際にデモンストレーションを行った。同社の調査によると、機械設計でユーザーが重視する点は「容量が軽いことと、レスポンスが速いこと」が大部分を占めていたという。長澤氏は「ファイルを開くだけで10分かかる、修正しようとしても動かない、といった声をよく聞く。現場でのレスポンスに対するニーズは大きい」と語る。
iCAD SXは生産設備や機械装置の設計を得意とする3DCADで、設計時の計算量が少ないCSG方式を採用することで「軽くて、直観的な操作を、大規模な設計でも可能にした」という。
また、長澤氏は現在の3Dデータの活用状況について「設計は2次元で行い、最後の検証段階で3次元で行うユーザーが多い」と説明。「本来、機械設計の本質は、形状・構成・動きを徐々に確定させていくところにある。3次元も、検証の一部分だけでなく初期の段階からどんどん使ってほしい」と語った。
今後の開発に関して長澤氏は、「タッチパネル操作や遠隔地とのリアルタイム共有で開発を進めている。設計現場の目線や課題を意識して活動しており、ぜひiCAD SXを使って新しいビジネスのきっかけにしてほしい」と呼び掛けた。
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