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ジャシーCEO「成長の速度もAWSこそがトップ」 追い上げムード演出のマイクロソフトやオラクルの“口撃”をけん制――AWS
2018/12/01 10:00
今回はクラウドのマーケットの現状についても触れ、競合ベンダーに比べていかにAWSのビジネスが順調に成長しているかについて、かなりの時間を割いてコメントした。ジャシーCEOは冒頭、AWSのビジネスの状況をアップデートし、有力スタートアップから老舗の大企業、公共機関まで、「あらゆる業界でAWSを非常に意味のあるかたちで使ってもらっている」と、業界やビジネスの携帯を問わず、多くのユーザーがクラウドシフトやデジタルトランスフォーメーションの基盤としてAWSを活用していることを強調した。
さらに、パートナーエコシステムも順調に拡大し、しかもアクティブであることをアピール。「業界を代表するSIerやコンサルティングファーム、ISV、SaaSプロバイダーがAWSと協業している。特にISVは、そのほとんどが(クラウド製品の提供にあたって)一つのテクノロジープラットフォームにしか対応しないだろう。そうなると、クラウド市場の圧倒的なリーダーであるAWSがファーストチョイスになる」と力を込めた。
クラウド市場は「AWSとMicrosoft Azureの2強」という構図で語られることが多くなった。米マイクロソフトは、クラウド事業の成長率でAWSを上回っているというメッセージを頻繁に発信している。また、それ以外の大手ITベンダーも、例えば歯に衣着せぬ発言で有名な米オラクルのラリー・エリソン会長兼CTOなどは、AWSを痛烈に批判しつつ、自社のクラウドサービスがいかにAWSよりも優れているかをことあるごとにアピールしている。一方でAWSはこれまで競合に対してほとんどコメントせず、見ている世界が違うとでも言わんばかりにトップベンダーとしての余裕を見せつけてきた印象がある。しかしジャシーCEOは、AWSに向けられるこうした“騒がしさ”について若干の不快感を覚えていたようだ。
「最新の数字を見せよう。18年第3四半期の決算時で、通期売上高の予想は約270億ドル、そして年間成長率は46%の見込みだ」とした上で、ジャシーCEOは今年8月に米調査会社のガートナーが発表した2017年のパブリッククラウドIaaS市場調査結果に言及。このレポートでは、AWSの売上高が122億2100万ドルでシェア51.8%、マイクロソフトは31億3000万ドルで13.3%、以下、アリババが10億9100万ドルで4.6%、グーグルが7億8000万ドルで3.3%、IBMが4億5700万ドルで1.9%、その他ベンダーが25%という結果だった。「AWSのシェアは2位の4倍で、引き続き大きなリーダーシップポジションを確保している。2位以下の4社を合わせたシェアと比べても倍以上だ。“その他”に含まれてこんな風にしかシェアを表現できないベンダーだってたくさんある」と、スライド中でこれらのシェアを表現した円グラフの“その他ベンダー”中に(オラクルのコーポレートカラーである)赤色で微小なシェアを表すとともにオラクルのエリソン会長をイメージしたと思われる顔写真を登場させ(画像参照)、同社を皮肉った。
一方、ガートナーの調査結果ではAWSが売上高、シェアとも圧倒的だが、年間成長率はAWSが25.0%、マイクロソフト98.2%、アリババ62.7%、グーグル56.0%、IBMが53.9%となっており、AWSを追うマイクロソフトが抜きんでている。実はシェアの推移も、AWSが16年の53.7%から51.8%に低下したのに比べて、マイクロソフトは8.7%から13.3%に増加している。しかしジャシーCEOは、よく考えてくれと言わんばかりに、「成長率について話す時は、あくまでも相対的な数字であることに注意する必要がある。今期の通期決算予想も、成長率46%というのはあくまでも売上高という絶対的な数字があってのもの。さまざまなレポートが出ていて、第2位のクラウドプロバイダと比較して低いという指摘もあるが、AWSのほうがベースとなる売上高がずっと大きく、売上高そのものの増加額はAWSが2倍以上になるはず。絶対的な収益の額という意味では、AWSはどこよりも早く成長している」と熱弁。AWSの成長が他のベンダーに比べて鈍化しているのは間違いだと強く訴えた。
ガートナーのIaaS市場調査結果に照らしても、16年から17年にかけての売上高の増加額はAWSが24億4600万ドル、マイクロソフトが15億5100万ドルであり、AWSのほうが約9億ドル多い。マイクロソフトがIaaS単独でAWSに勝ちたいとどの程度真剣に考えているかはともかくとして、この数値で逆転できなければ、マイクロソフトがAWSに追いつくことは永遠にないわけだ。ジャシーCEOは「事実はきちんと説明すべきタイミングだ」と考え、この部分を説明したようだ。
なお、AWS re:Invent 2018については週刊BCNで詳報する。(本多和幸)
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