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複合機・PCの一括納入で競争力上がる――シャープ/東芝
2018/06/29 09:00
週刊BCN 2018年06月25日vol.1732掲載
PC販売では実績のあったシャープ販社
株式の譲渡にあたりシャープが東芝に支払う金額は40億円だが、東芝クライアントソリューションは2018年3月期末時点で63億円あまりの債務超過となっており、実質的な買収コストは約103億円。従業員のほか、PC製造拠点、販売チャネル、そしてPC製品について「東芝」「ダイナブック」のブランドをシャープが継承する。
シャープが属する鴻海グループは、受託生産事業でPCの主要部材を大量に調達している。このスケールを活用するとともに、コスト管理を徹底することで、赤字続きだった東芝PC事業の黒字転換を図る。鴻海はデスクトップPCやサーバーの生産では業界有数の規模を誇るが、ノートPCでは同じ台湾の広達(クアンタ)や仁宝(コンパル)にリードを許している。一方の東芝は長年ノートPCを主力としており、中国・杭州の拠点で自社生産を行っている。鴻海グループ傘下に東芝のPC事業を収めることで、規模とカテゴリの両面でPC生産能力を高めるねらいがあるようだ。
また、シャープの法人向けIT事業に関しては、事業買収直後から変化が現れることも考えられる。
シャープのメーカー販社であるシャープマーケティングジャパンの法人営業部門(旧・シャープビジネスソリューション)は、シャープ製の複合機・プリンタや液晶ディスプレイに組み合わせる商材として、日本HPおよび富士通のPCを販売してきた。とくにHP製品の販売には強く、デスクトップPCやワークステーションは自社のサービス網を通じて保守も提供できる体制を整えている。
東芝PC買収後の具体的な展開については未発表だが、シャープマーケティングジャパンが扱う法人向けPCに、ダイナブックが加わると考えるのが自然だろう。現状、東芝にはデスクトップPCのラインナップがほとんどないため、HP製品の販売も継続するはずだが、少なくとも複合機とノートPCの一括納入案件では、自社グループ内の製品に切り替えることで、顧客により魅力的な価格を提案できる可能性が広がる。これが、事業買収の効果として最も早く現れる部分と言えるだろう。
6月上旬に台湾で開催されたIT製品の見本市「COMPUTEX TAIPEI」では、マイクロソフトによる基調講演の中で、シャープが開発した「Windows Collaboration Display」が初披露された。カメラや各種センサを搭載したタッチ操作対応ディスプレイで、マイクロソフトのコラボレーション技術の利用に最適化されている。
いったんはPC市場から撤退し、製品開発ではマイクロソフトから縁遠くなっていたシャープが、業務用製品の分野で再び距離を詰めているこのタイミングで、かねてマイクロソフトと強固な関係にある東芝のPC部隊が合流する。近年、ダイナブックは「スタンダードノート」と呼ばれるような保守的な製品が中心のラインナップとなっていたが、今後はマイクロソフトが提供するクラウドの機能を積極的に使うための、新たな形態の端末開発に、否が応にも進んでいくものと考えられる。
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