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富士通 国産“量子コンピュータ”が いよいよサービス提供を開始 デジタル回路で動く「デジタルアニーラ」
2018/04/05 09:00
週刊BCN 2018年04月02日vol.1721掲載
量子コンピューティング技術は、イジングマシン方式と量子ゲート方式の大きく二つに分けることができる(図)。富士通のデジタルアニーラは、アニーリング方式のコンピュータである。
アニーリング方式が得意とする計算は、「組み合わせ最適化問題」で、その代表例が「巡回セールスマン問題」。多くの都市を巡回するための最短ルートを求める計算である。例えば、5都市を巡回するルートは120通りのパターンとなるが、30都市では1京×1京通りになり、スーパーコンピュータ「京」をもってしても実に8億年の計算時間が必要となる。これがデジタルアニーラでは1秒以内で計算できてしまう。
デジタルアニーラは、一部のユーザー企業に17年夏頃から試験提供しており、自社の金沢工場でも活用している。その一つが、倉庫部品のピックアップ手順の最適化。デジタルアニーラで倉庫に置いてある複数の部品の最短経路を算出。移動距離を約30%短縮したという。また、棚のレイアウト最適化にも取り組んでいて、部品の配置を変えたことにより、月間の移動距離を約45%短縮している。
一方、アニーリング方式はボルツマン機械学習の計算にも向いているとされる。「デジタルアニーラを管轄する部門は、AIの『Zinrai』とスーパーコンピュータの京という三つの技術を融合し、相乗効果を生み出すための取り組みを進めている。この三つを提供できるのは、世界で富士通しかない」と、東圭三・AIサービス事業本部本部長は富士通の強みを説明する。富士通は、デジタルアニーラをクラウドサービスとして、4月あるいは5月末までに提供を開始する。また、夏頃にはバージョンアップを予定しているほか、年内にはオンプレミス環境用としてハードウェアの提供を開始する予定である。
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