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事業縮小が続くNEC 新中計で踏みとどまるか
2018/02/15 09:00
週刊BCN 2018年02月12日vol.1714掲載
NEC(新野隆社長)が2020年度までの新しい中期経営計画を発表した。16年度~18年度までの中期経営計画を16年度に策定したものの、翌年に既存事業の落ち込みが予想以上に大きく、見直しを余儀なくされた。構造改革、成長事業への注力という当初の方向性は変わらないものの、一段のコスト削減に踏み出さなければ業績回復が見込めないと判断し、人員削減、工場統合という痛みを伴う改革をようやく決断した。光明を見出すことができるか。(山下彰子)
人員削減が肝の構造改革だが……
新野 隆
社長兼CEO
テレコムキャリア事業の縮小、国内生産体制の効率化のため、九つある工場の統廃合、小型蓄電事業からの撤退を決断した。そして国内8万人のグループ社員の約4%にあたる3000人の人員削減に着手する。従来、人を減らすのではなく、縮小事業から成長事業へ人をシフトさせることで対応する、と人員削減に否定的な考えをもっていた新野社長だが、「リソースシフトの実態はスキルがなかなか合わず、スピードが遅く対応しきれなかった。何よりも既存事業の下がるスピードが速かった。次の成長に向けて投資できる体力をつけておかないとますます取り残されてしまうという危機感があった」と語る。NECは、この人員削減を構造改革の肝と位置づける。20年度までの3か年で、構造改革、課題事業改革を合わせて収益構造改革で600億円の改善を見込んでいる。そのうちの300億円、半分を占めるのが人件費削減だ。まさにリストラ頼みの構造改革といえる。にも拘わらず、現時点では人員削減の具体策は出ておらず、間接部門、ハードウェア事業領域を中心に希望退職を募るが、実際は自然減となりそうだ。
セーフティ事業頼みの成長計画
事業成長の内訳では、セーフティ事業を含むグローバル事業で200億円増、国内事業で100億円増と、グローバル事業に大きな期待を寄せていることがわかる。ここで柱となるのが、同社が得意とする顔認証技術や画像解析技術を活用した入出国管理や国民IDなどのセーフティ事業。技術的な強みをもち、また高い利益率を期待できるからだ。グローバルの成長エンジンに位置づけ、17年度は約500億円だった売り上げを20年には2000億円に引き上げる計画だ。そのためには海外市場の販路整備が重要となる。販路拡大の第一歩が、1月に発表した英ノースゲート・パブリックサービスの買収だ。年商約250億円、英国の全警察、中央政府、95%の地方政府などを顧客として抱えている同社を取り込むことで、英国でNECの製品を販売できるようになる。この買収がうまく軌道に乗れば大きな弾みになるだろう。今後も海外M&Aを積極的に進め、セーフティ事業のグローバル展開を拡大していく計画だ。それができるかどうか、今回の買収が、グローバルでのセーフティ事業の成長を左右する大きなポイントになりそうだ。
一方、国内の事業成長について、AI、IoTを生かした成長、サービス型ビジネスの変革を打ち立て、収益を伸ばしていく。とはいえ、ハードウェアなどの既存事業は縮小させていくため、20年度の国内事業の売り上げは、18年3月期の見込み比でほぼ横ばいの2兆1100億円を想定している。
現在、国内市場は20年に向けたIT投資が活発になっている。それに合わせて、ITベンダー各社は上向きの経営計画を出している。そのなかで、NECのほぼ横ばいの計画は、ずいぶんと消極的にみえる。これは同社のセグメント構成比によるところが大きい。
18年1月末の同社のセグメント別売上収益構成比では、テレコムキャリア20%、システムプラットフォーム25%と今後縮小していく領域が約半分を占める。それに対して今後IT投資がさらに活発化し、伸びる領域であるエンタープライズは14%と少ない。ここの構成比を高められなければ、国内事業の成長に向けた道のりは一段と険しくなるだろう。こうした構造改革、成長軌道への回帰に取り組み、15年度に3兆円を下回った売上収益を20年度に3兆円に戻し、営業利益1500億円、営業利益率5%を目指す。
「営業利益を高めないとグローバルで戦えない。継続的に営業利益率5%を実現する体質への改革を図る」と意気込む新野社長。すでに国産の大手ベンダーは、営業利益率を重視する経営に舵を切っている。例えば、富士通は15年に営業利益率10%を目標に掲げ、現在のところ順調な歩みを進めている。NECはやっとスタートラインに立った。まずは、グローバル、国内のライバルたちに追いつくことができるだろうか。
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