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多様化する海外M&A 規模か、利益か、連合体か NTTデータ、NEC、NRI、TISにみる海外ビジネス
2018/02/01 09:00
週刊BCN 2018年01月29日vol.1712掲載
NTTデータは、直近10年余りの時間を費やして海外M&Aを積極的に展開。2018年度(19年3月期)には連結売上高2兆円超の目標のうち、約半分を海外で売り上げる段階まで拡大させてきた。ある国でまとまった規模の案件を受注しようとしたら、「売上規模で少なくとも上位10位以内、できれば5位以内に入らなければならない」というのが、岩本敏男社長の持論だ。実際、欧州のいくつかの国では上位グループに食い込み始めており、地場の有力企業や団体からの優良案件の受注に結びついている。
デメリットがあるとすれば、規模のメリットは出せても、利益面で苦戦気味であること。今年度(18年3月期)の北米セグメント、ならびにEMEA(欧州・中東・アフリカ地域)・中南米セグメントの営業利益はそれぞれ20億円の見込み。M&Aに伴うのれん代の償却が重くのしかかっているためだ。
一方で、NECはM&A当初から一定の利益水準が見込める「ビジネスプラットフォーム」に期待を寄せる。新野隆社長兼CEOは、「ビジネスプラットフォームにより営業利益率5%以上が見込める」として、この1月末までに約713億円で英ノースゲート・パブリックサービス(NPS、年商約250億円)をグループに迎え入れる。NPSは、警察業務や税徴収・社会保障給付、公営住宅管理などの領域で、横展開可能なビジネスプラットフォームを有している。NECは海外ビジネスでかねてから行政や公共施設などの公共安全(パブリックセーフティ)事業に力を入れており、同領域向けのビジネスプラットフォーム構築で相乗効果を見込めるとしてM&Aに踏み切った。
NECでは、個別SIを主体とする海外SI会社をM&Aしたときの営業利益率を2~3%、パッケージソフト会社は同20~30%と見積もる。パッケージソフト会社は一般に利益率は高いが、売上規模は大きくない。そこで、売上規模がそこそこ見込めて、利益率も個別SIよりは高い水準が見込めるビジネスプラットフォームを重視する。
NRIの此本臣吾社長は「ただ売り上げを伸ばすためだけの海外M&Aはしない」と語り、その手段の一つとしてビジネスプラットフォームづくりに力を入れる。直近ではオーストラリアのSIer2社、単純合算ベースで年商400億円規模をグループに迎え入れている。国内で証券業向け業界標準ビジネスプラットフォームなどを構築してきたNRIのノウハウを海外ビジネスにも生かす。
また、TISはタイとインドネシアの地場SIerに一部出資する方式で、ASEANビジネスに参入している。出資先の年商の合算規模は約400億円規模と大きく、「協業による収益の拡大に応じて、より連携を深めていく」(桑野徹社長)と、将来的な“連合体”の形成に意欲を示す。
海外ビジネスにM&Aや提携は不可欠だが、短期的にはどうしても利益の押し下げ要因になる。各手法のメリット/デメリットを把握し、リスクをいかにコントロールしていくかがポイントだといえそうだ。
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