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働き方改革ITビジネス 働き方、ITでこれだけ変えられる
2017/11/02 09:00
週刊BCN 2017年10月30日vol.1700掲載
「24時間戦えますか」「企業戦士」「亭主元気で留守がいい」――。1980年代、バブル経済に沸いていた頃の広告キャッチフレーズで使われた言葉だ。男女雇用機会均等法が施行されてしばらくたっても、なお昼夜問わずオフィスに張りつき、男性中心で、長時間労働が社会に受け入れられていた。しかし、バブル崩壊から四半世紀が経過。就業人口が急速に減少し、今後、増加の見通しが立たないなかで、経済成長時代の古い働き方を現代的に改めるムーブメントが「働き方改革」である。(安藤章司)
人手不足、深刻な経営課題に
「働き方改革」を切り口にしたITビジネスに追い風が吹いている。業務の自動化や効率化、情報共有、テレワーク、セキュリティなど、関連するIT商材への引き合いが増加。主要SIerやITベンダーは、風をとらえるべく働き方改革の提案に力を入れる。オフィスに縛られない働き方を実現するクラウド/SaaSを活用したITインフラの整備や、AI(人工知能)を活用した生産性の向上への引き合いが目立つ。働き方改革に向けてSIer/ITベンダーがどのようなビジネスを推し進めているのか。日立ソリューションズ
伊藤直子
担当部長
内閣府の調査によれば、2015年の就業者数6376万人が、もしこのままの勢いで減り続ければ2030年には5561万人になると予測。関西経済圏に匹敵する約800万人が消失する怖ろしい事態になりかねない。同じ調査で、女性や高齢者の活用、ダイバーシティ(多様な人材活用)を進展させることができたならば、200万人の減少で抑えられるとも分析している(図参照)。
結婚した女性の離職原因の多くを占めるのは、長時間にわたってオフィスに張りついたり、全国どこへでも転勤させられるような働き方にある。成長時代は、寿退社した専業主婦に「家事、介護、育児(KKI)」をすべて任せることで、夫は仕事に専念するのが一般的だった。しかし、就業人口が減少することから、ダイバーシティや男性のKKIへの積極的な参加などを受け入れていかなければ、人手不足の課題がより一層深刻化してしまう状況にある。
ポイントは「場所、時間、働き方」
では、働き方改革ITビジネスは具体的にはどういったものが挙げられるだろうか。富士通エフサスの武野正浩常務理事は、「IT活用のポイントは場所、時間、働き方の三つだと指摘している。富士通エフサス
武野正浩
常務理事
二つめの時間については、自動化や効率化に役立つAIが最も有効に作用する。野村総合研究所(NRI)の試算によれば、今後10から20年で日本の労働人口の約49%が就いている職業が、AIやロボットなどに代替可能だと推計。世界的な潮流としてAIやロボットへの代替は進行する。むしろ就業者数が減っていく日本では、AIを活用した自動化を推し進めるチャンスとみる向きもある。チャットボットやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を端末(エッジ)側に置き、AIでバッグエンドを自動化するニーズがますます大きくなる。IT商材のほぼすべてが働き方改革ITビジネスに応用できるといっても過言ではない。
三つめの働き方は、企業の意識改革をどこまで促せるかにかかっている。例えば、残業時間をなくすことに傾倒しすぎると、仕事が終わらず喫茶店や自宅でのサービス残業を強いることにつながりかねない。時短と生産性向上はセットで取り組む基本を押さえていく必要がある。富士通エフサスでは、「場所、時間、働き方」を切り口にした働き方改革ITビジネスの直近の売り上げ約200億円を、2020年度には400億円への倍増を目指す。
SIerやITベンダーは、ユーザー企業が抱える働き方改革の課題をしっかりと分析する能力がこれまで以上に重要になる。体系だった商材やサービスを整備することが、働き方改革ITビジネスの持続的な成長につながる。
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