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ハイパーコンバージドインフラ プライベートクラウド用途が急拡大

2017/09/07 09:00

週刊BCN 2017年09月04日vol.1692掲載

各社大幅に販売数を伸ばす

パブリッククラウドの対抗軸として注目されるハイパーコンバージドインフラ。しかし、ハイパーコンバージドインフラは、プライベートクラウドとパブリッククラウドが、クルマの両輪のように連携するハイブリッド型のクラウド基盤としても期待されている。クラウド市場が堅調に拡大しているなかで、ハイパーコンバージドインフラも伸びていて、日商エレクトロニクスでは昨年度比で約2.5倍、東京エレクトロンデバイスでは約4倍の勢いで販売数が増えている。(安藤章司)

中堅・中小企業の
基幹/SoEにも相性よし

 国内で最も早い2012年にニュータニックスの代理販売を始めた日商エレクトロニクス。販売当初は仮想デスクトップ(VDI)用のサーバーとしての用途が販売数の8割を占めたが、「直近ではプライベートクラウド用途が6割くらいまで拡大してきた」(日商エレクトロニクスの榎本瑞樹・ITプラットフォーム事業本部副事業本部長)と話す。適用領域が広がったことで販売数の増加を後押し。昨年度(17年3月期)は前年度比で約2.5倍に増え、今年度もほぼ同じ勢いで推移している。
 

日商エレクトロニクスの榎本瑞樹・副事業本部長(右)と木村悦治課長

 最初にVDI用途で活用が進んだのは、仮想環境との親和性が高く、運用が容易なため。その後、ハイパーコンバージドインフラ製品が普及しはじめて、信用実績が積み上がってくるのにともない、「レガシーからプライベートクラウドへのマイグレーションに用途が拡大してきた」(日商エレクトロニクスの木村悦治・ITプラットフォーム事業本部営業推進部第二課長)と分析している。プライベートクラウドでは重要な業務システムを動かすケースも増えている。

 ハイパーコンバージドインフラ製品は、サーバーとストレージ用ネットワーク、ストレージの3層が一体化したアプライアンス型で提供される。サーバーリソースの追加は、ラックにハイパーコンバージドインフラ製品を物理的に追加していくだけで対応できる。運用の手軽さから「情報システム部門の人的リソースが限られる中堅・中小企業でも、今後、導入が進むことが期待されている」(木村課長)と、販売対象の幅が一段と広がるとみている。

 中堅・中小企業ユーザーに強いSIerのJBCCも、この点に着目。主要なハイパーコンバージドインフラ製品の検証センター「N.E.X.T.」(写真参照)を今年6月に新設。レガシーマイグレーション需要に加えて、「中堅・中小企業のSoE(価値創出型システム)ニーズもハイパーコンバージドイングラで捉えていきたい」(JBCCの吉松正三・取締役常務執行役員)と話している。
 

JBCCのハイパーコンバージド製品の検証センター「N.E.X.T.」。
手前に日本ヒューレット・パッカードの「SimpliVity(シンプリビティ)」とDell EMCの
「VxRail(ヴィエックスレール)」、奥に「Nutanix(ニュータニックス)」製品が見える

「適宜使い分ける」に
ユーザーニーズあり


左から東京エレクトロンデバイスの秋戸生樹氏、上善良直執行役員、岩田郁雄執行役員

 東京エレクトロンデバイス・パートナー第一営業部アカウントセールスの秋戸生樹氏は、「今年6月に米本国で開催したニュータニックスの年次イベントで参加者の多さに舌を巻いた」と話す。公式発表では昨年の2倍近い約4000人が訪れたという。同社は15年にニュータニックスの国内代理販売を始めたところ、販売数は17年3月期は前年度比で約2倍。今年度(18年3月期)は実に同4倍の勢いで推移している。

 VDIやプライベートクラウド用途がベースにあると同時に、「パブリッククラウドとの親和性の高さも評価ポイントの一つになっている」と、東京エレクトロンデバイスの上善良直執行役員は話す。プライベートクラウドとパブリッククラウドには所有と利用という相容れない概念がある。それゆえ、ユーザーのニーズは「両方とも適宜使い分けたい」にある。

 例えば、次のケース。新しいウェブシステムはトラフィックが急増減することが予想されるため、パブリッククラウドで運用。ところが意外にコストがかかる。そこで、トラフィックも落ち着いた頃にプライベートクラウドに移す。あるいは、その逆で急増減が激しくなってきたのでパブリッククラウドに引っ越しする。

 こうしたニーズに対応するため、プライベートクラウドとパブリッククラウドの間を仮想マシン(VM)が行き来できるようにするための基盤としてハイパーコンバージドインフラが活用されている。「プライベートクラウドとパブリッククラウドの垣根は低くなり、本当の意味でのハイブリッドクラウドが実現されつつある」と、東京エレクトロンデバイスの岩田郁雄執行役員は指摘している。

 ハイパーコンバージドインフラのベンダー自らが、パブリッククラウドとの親和性を高めるために取り組むケースや、サードパーティが参画するケースもある。東京エレクトロンデバイスが取り扱う米Rubrik(ルーブリック)の仮想化環境向けのバックアップ・アプライアンス製品では、仮想マシンを動作可能な状態でプライベードクラウドやパブリッククラウドの間を移し替えるクラウドデータモビリティ機能を強化している。

 プライベートクラウドとパブリッククラウドをクルマの両輪のように使うプラットフォームの役割をハイパーコンバージドインフラが担う。クラウドの普及とともに、ハイパーコンバージドインフラの役割が大きくなっていく。
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外部リンク

日商エレクトロニクス=http://www.nissho-ele.co.jp/index.html