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KDDI IoTで中国製造業を本格開拓
2017/08/03 09:00
週刊BCN 2017年07月31日vol.1688掲載
【常熟発】KDDI(田中孝司社長)は、IoTソリューションで中国の製造業を本格的に開拓する。中国現地法人の上海凱迪迪愛通信技術(KDDI上海、伊藤博総経理)を通じて、「常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンター」を運営する菱創智能科技(常熟)(菱創智能、範文勝総経理)と協業した。菱創智能は今後、常熟市をはじめとする江蘇省の製造業に対して、KDDIのIoTソリューションを優先的に提案する。これによって、KDDIは従来以上に効率的に製造業の顧客を獲得することができる。(上海支局 真鍋 武)
常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンター
「中国製造2025」を体現
常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンターは、中国製造業の高度化を目的として、企業や大学、研究機関が連携し、IoT、FA、工業ロボットなどの新技術の研究開発や商業化を推進する施設。常熟国家高新技術産業開発区に位置し、8700平方メートルの敷地面積に、常設展示スペースや200人規模のセミナールーム、産学連携による研究スペースを内包する。運営元の菱創智能は、常熟市政府と民間企業が共同設立した企業で、センターで得られた成果を製造業に広める役割を果たす。その対象範囲は、常熟市をはじめとする江蘇省全域を予定。7月11日に開催された開所式で、常熟市の王颺 市委書記は、「製造業の自動化、情報化、スマート化とグリーン化を全面的に向上させ、センターをシステムソリューションの『スーパーマーケット』につくりあげる」と意気込んだ。背景にあるのは、中国国務院が2015年5月に発表した「中国製造2025(中国製造業10か年計画)」だ。同計画では、IoTなどの次世代情報技術を活用した工場スマート化のモデル構築を推進する「製造業イノベーションセンター」の建設を5大重要プロジェクトの一つに指定している。これを受けて、各地方都市は政府主導で製造業イノベーションセンターの建設を進めており、常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンターもその一環となる。
地場企業の開拓が容易に
KDDI
曽雌博之
執行役員グローバル事業本部長
パートナーにも恩恵
恩恵を享受できるのはKDDIだけではない。同社は、遠隔作業支援システム「KDDI Vist@Finder」などの自社商材を有するが、中国国内で提供するIoTソリューションの大部分は、日本のパートナー企業の商材だ。実際、常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンター内の常設展示ブースで紹介しているのは、シムトップスの「MC-Web Controller」「ConMas i-Reporter」、ウイングアーク1stの「MotionBoard」、東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の「mcframe SIGNAL CHAIN」など。つまり、IoT関連ソリューションを有するパートナー企業にとっても、新たな商機獲得につながる。また、伊藤総経理は、「特定の製品に依存せず、幅広いソリューションを提案していく」と説明しており、今後も有力なIoT商材をもつパートナー企業を拡充していく方針だ。将来的には、製造業向けソリューションにとどまらず、医療、教育関連のソリューションも検討する。協業の成果は、菱創智能がどれほどの実行力をもって中国の製造業をイノベーションセンターに誘い込み、案件を創出できるかにかかっている。伊藤総経理によれば、「すでに複数の製造業の紹介を受け、実際の提案を始めている。なかには上場企業もある」という。「まずは、今回の協業を固める意味で、2ケタの実績をつくっていく」(同)ことが第一段階の目標だ。
また、将来的には、他の地方都市で開設される製造業イノベーションセンターへの横展開も視野に入れる。中国製造2025では、20年までに15か所程度の国家級製造業イノベーションセンターを整備し、25年には40か所程度に拡大することを目指している。常熟の取り組みが実を結び、先進的と評価されれば、他の地方政府から声がかかる可能性もある。
7月1日、中国の習近平国家主席は香港で、「蘇州達後無艇搭(蘇州を行き過ぎると乗り換えるボートがなくなる)」と話した。江蘇省にあるビジネスチャンスを逃すなという意味だ。中国第2位のGDPを誇る江蘇省は、製造業を含む第2次産業がその約半分を占める。製造業高度化に向けた大きな投資が見込まれる。
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