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応研 FinTechで市場の勢力図を塗り替えるか
2017/07/27 09:00
週刊BCN 2017年07月24日vol.1687掲載
応研(原田明治社長)は、FinTechの取り組みを強化している。5月には、第一弾サービスとして「大臣フィンテックサービス」をリリース。インターネット経由で金融機関の口座明細データやクレジットカードの利用明細データを取得し、仕訳データを自動で作成するという。同社が自動仕訳の肝と位置づけるAIは、自社開発した。FinTechのトレンドを競合他社に先駆けて自社ビジネスに取り込み、新たな成長を模索する。(本多和幸)
福岡本社開発部の中島 隆リーダー(右)と津留敬史主任
大臣フィンテックサービスは、保守サービス契約に加入しているユーザーに無償提供し、会計ソフトの大蔵大臣のほか、販売管理ソフトの販売大臣で利用できる。金融機関からの情報取得には、SBIビジネス・ソリューションズの口座管理サービス「MoneyLook」を採用し、インターネットバンキングサービスを提供している国内金融機関の99%以上をカバーするとともに、クレジットカードの利用明細取得にも対応したという。また、データ取得後の仕訳は、一旦登録すればそれ以降は自動化される。応研の独自調査では、大臣フィンテックサービスを導入後、業務負担を2か月で2分の1、6か月後には4分の1まで削減できる可能性があるという。
同サービスの開発を担当した福岡本社開発部の中島隆リーダーは、「銀行口座などのデータ取得から仕訳まで自動でしてくれるというのは、今までにないレベルでの業務効率化が可能になる。一度使ってもらえさえすれば、便利さを実感してもらえるはず」と力を込める。
一方で、類似の機能は、スモールビジネス向けのクラウド会計ソフトでは数年前からすでに実装され始めているのも事実。例えばfreeeは、昨年5月、クラウド会計ソフトの自動仕訳におけるAI活用で特許も取得している。こうした先行事例に対する応研の強みについて、同じく福岡本社開発部の津留敬史主任は、「最初の仕訳時に、明細を人の目で確認して科目登録し、まずはAIに学習させるようにしている。当社のお客様にとっては、仕訳の確実性が非常に大事なポイントであると判断して機能開発した。最初から完全な自動仕訳にしてしまうと、仕訳精度が低く、後々トラブルになるケースも見受けられる」と説明している。
自動仕訳に採用しているAIの開発は、既存の開発チームのメンバーが担当した。中島リーダーは、「AIには応研としてかなり前からフォーカスしてきた。大臣フィンテックサービスでようやく実際の製品に実装することができたが、もっとさまざまな用途で水平展開できるのではないかと考えている」と話し、同社の他の既存製品の機能向上に役立てていく可能性も示唆する。さらに、「今春の法改正により、銀行のAPI解放の流れができたが、金融機関と連携した新しいサービスも検討していて、実際にいくつかの金融機関と話を進めている。また、新しい技術として、AIだけでなくブロックチェーンにも注目しており、売り上げや仕入れの管理などに活用できるのではないかという検討もしている」(津留主任)という。スモールビジネス向けの新興クラウド会計ベンダーはともかく、応研が中堅中小企業向け業務ソフト市場でしのぎを削るオービックビジネスコンサルタントやピー・シー・エーに対しては、先行してFinTech的施策を本格的に打ち出したかたちになったといえそう。中島リーダーは、「その優位性を維持するためにも、どんどん新しいサービスを投入していきたい」と意欲をみせる。
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