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<特別インタビュー Dell EMCのパートナービジネスはどうなる?>新パートナープログラムのローンチから3か月「パートナービジネスへの注力姿勢が鮮明になった」
2017/06/08 09:00
週刊BCN 2017年06月05日vol.1680掲載
パートナービジネスに1.5億ドルの追加投資
──旧デルと旧EMCのパートナープログラムが2月に統合された。EMCジャパン
渡部洋史・Dell EMCパートナー
事業本部執行役員
──どのようなパートナープログラムになったのか。
渡部 シンプル、プレディクタブル(予測可能)、プロフィッタブル(高い収益性)という3点がポイント。まず、旧デルと旧EMCのパートナープログラムをいいとこどりしたようなかたちで統合し、メンバーシップのランクや認定基準を統一し、シンプリファイした。また、リベート、MDF(市場開拓ファンド)を増やしたことでプロフィッタブルになったし、先んじて情報を早めに出し、パートナーに先を見据えたビジネスをしていただけるようにする仕組みを整えたのが、プレディクタブルなポイントだ。
パートナーメンバーシップのレベルは、「ゴールド」「プラチナム」「タイタニアム」というランクに新たに分けることにした。今期は、去年のビジネスの結果をもとに認定した旧デル、旧EMCのパートナープログラムのランクを、そのまま新プログラムで相当するランクにスライドさせるが、来年は、この新しいパートナープログラムの基準にもとづいて、パートナーをもう一度ポジショニングし直すことになる。
──日本のパートナーの反応はどうか。
渡部 総じて、パートナーからの評価は高く、私が聞いている範囲では、ネガティブな反応はない。というのも、パートナービジネスに対して、グローバルで1.5億ドルの追加投資をすることが決まっており、これを、リベートやMDFを充実させるために活用している。例えば、ベースのリベートだけでなく、新規顧客の開拓や、付加価値サービスの販売実績などに応じて、かなりアクセラレータが効くようになっている。
また、付加価値再販をするパートナーと、いわゆる数を捌くパートナーがいるが、どちらも重要なパートナーなので、ビジネスモデルに応じて認定パスを選べる仕組みも整えている。
──MDFについてはどんな特徴があるのか
渡部 旧EMC側の仕組みだが、売り上げの規模に応じたMDFのほかに、プロポーザル次第でフレキシブルに使ってもらえるMDFがあって、旧デルの製品にも適用できるようになる。ここは、先ほど申し上げた1.5億ドルの追加投資が効いてくるところ。また、MDFのタームもこれまでより長くして、MDFそのものの利便性を高めた。SIパートナーもそうだし、ディストリビュータ、その先のリセラーも含めて、ユーザーに対するマーケティング活動を加速していただけると考えている。
ディストリビュータに新たな商機
──Dell EMC World 2017期間中に開催されたグローバルパートナーサミットでは、ダイワボウ情報システム(DIS)がアジア太平洋地域の最優秀ディストリビュータとして表彰を受けた。渡部 DISはDell EMCのビジネスを非常に大きく成長させてくれて、インフラ関連もそうだが、クライアントソリューションの伸びがとくに大きく、アジア太平洋地域だけでなく、グローバルでみてもトップレベルの売上高を記録している。
──DISは旧デルのパートナーだったが、EMCとの統合により、彼らがビジネスチャンスを広げることは本当に可能か。
渡部 もちろんだ。旧EMC製品にもビジネスを広げてもらうことは、彼らにとって大きなチャンスになるはず。一般的に、ディストリビュータのビジネスは、どうしてもローマージンのビジネスになりがち。しかし、旧EMC製品にも、UnityやIsilon、HCIアプライアンスなど、ミッドレンジのユーザー向けの製品も充実してきている。こうした製品でハイマージンビジネスにチャレンジできるようになるというのは、DISに限らず、ディストリビュータのパートナーには期待していただいているところだと思っている。もともと旧EMC製品を担いでくれてきたネットワールドは、実際にそうしたモデルで業績を伸ばしていて、ディストリビュータのハイマージンビジネスはすでに成功事例がある。
──Dell EMC World 2017では、パートナー向けにどんなメッセージを発信したといえるのか。
渡部 デルテクノロジーズとして、パートナービジネスにとにかく注力していくということを感じてもらえたのではないか。私自身、本社幹部のそうした強い思いを感じた。マイケル・デル自身が、グローバルパートナーサミットに出席し、「チャネル戦略が自分自身の関心事だ」とはっきりいっている。
日本市場は、パートナーによる間接販売の割合が、旧EMCのビジネスはすでに70%以上、旧デルが50%くらい。これをトータルで70%にすることを目標にしている。まだまだ伸びしろはある。今回の新しいパートナープログラムをうまく生かしていかないといけない。
──インフラ製品やPCをサブスクリプションで利用できるような新しい提供モデルも発表された。これは日本ではどのように導入するのか。
渡部 日本のマーケットの特徴を熟慮しながら考えていこうと思っている。率直にいえば、現在の日本のパートナーのビジネスとコンフリクトしてしまう可能性も考えないといけない。
ただ、間違いなくいえるのは、Dell EMCはパートナービジネスを根幹に据えると決めているということ。パートナーにとってビジネスが成り立つのかという視点をもち、パートナーの声を広く聞いてやっていくという姿勢は変わらない。
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